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ファンシーの扉

オリジナルの王道恋愛ファンタジーを中心とした小説です。最後にはホッと出来る物語作りを目指しています。(R設定がある時は冒頭に記します。独自の判断でご注意ください) 尚、過去の作品については『◆ALL』をご覧頂きページの下の方にあります「Next」を押すと過去の作品まで全がご覧頂けます。作品のキーワード検索も『◆ALL』ページ左上よりご利用頂けます。

離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第29話

信じても良いですか?旦那様ッ

「もっ、もう……。すっ、凄くはっ、恥ずかしいですのに言わせないでくださいッ! まだ一度……少し触れた程度ですのにッ きゃっ」

そう告げると、妻は頬を真っ赤に染めて一人で悶絶すると顔を両手で覆い隠してしまった。

凄く言いにくい状況だが、これを訂正しない訳にも行かない。

「……それは……、間違いだ」

「……え? 」

ゆるりと顔を上げた妻の顔色は、今度はみるみるうちに青ざめていく。

「わっ、私ったら、なっ、何と言うはしたない間違いを……」

ぷるぷると身を震わせて、今にでも気を失うのではないかと危惧する程の状況だ。
このままでは流石に不味い。
妻を落ち着かせる言葉を何か告げなければと、心が急く。

「べっ、別にはしたなくは無い! 私だってお前のものにはいつも触れているし、淫靡だがそれは甘美で、私にはとても好ましく……、いや、何を言っているのだ? 私は……」

どう表現したら良いのか分からず、私自身も混乱してしまう状況だが、要は妻が言うような恥ずかしいものでは決して無いという事が言いたかったのだ。
混乱して言い終えると同時に、ため息交じりに髪をぐちゃぐちゃにかき乱してしまったが、私のそんな姿を見て、妻が何処か呆気にとられたような眼差して私を見つめると、小さくほほ笑んでくれた事に安堵した。

「あの……、何を仰っているのかは少し分かりかねますが、では……、はしたない事では無いのですね?」

「ああ、勿論」

言葉と同時に表情が少し和らいできているように感じられ様子から、上手く説明は出来なかったが、とりあえずは良かったと胸を撫ぜ下したのだったが、またも難題はやって来た。

「では……、何処で触れる事が正しいのですか?」

「あー、それはだなぁ……」

「だって他にその……、それ以外でそもそもどうやって……触れるなんて事が??」

妻はどうやら単純に、陰部に触れる行為だから、いんこうと思い違いをしたのだろうが……。

「手では無いのですよねえ……」

両の手のひらを開いたままじっとしばらく見つめた後、妻は視界に入る自らの身をぐるりと眺め小首を傾げた。

「ああ」

「……ですが、見渡す限り他に触れられる場所でなんて、何処にも……」

懸命に考えているようだが、初心な妻が気づける事とは到底思えない。
そもそも妻は今まで口づけ以外で私の躰に唇で触れたことすら一度も無い。
妻はまだ閨での作法の入り口をかじった程度の状況で、初歩的となる背や首に手をまわし添える程度の行為の他には、やっと最近私が蜜を舐め取ろうとする時の快感に戸惑いながらも、頭に手を添えて私の髪をかき乱しながら抗おうとする羞恥な姿を見せられる程度になったばかりなのだ。
だが、その恥じらいながらも快楽に溺れる仕草が、私の心を酷くかき乱し続けるのだ。
以前の……、ご婦人方を相手に奉仕を続けていた当初の私ならば、それらの行為も何処か物足りなく感じられるものであるのだろうが、妻が相手ならば何故か何もかもが新鮮に感じられて来るから不思議なものだ。
戸惑いながらも乱れ、たどたどしく私に触れようとしてくれる妻の姿は、いつも私の煩悩を酷くかき乱す。
他にこのような女は過去の何処にもいなかった。妻だけだ。妻だけが、私の平常心をかき乱すことが出来る女なのだ。
それは何故なのか?
愛ゆえの……、愛あればこその行いだと私は思っているのだが、そういう心意的私の状況を今妻に説明してみた所で、私の思いが妻に率直に伝わるとは到底思えない。
愛の言葉を囁いて、誤魔化していると言われかねない。だったらここは……。

「あるだろう? 他にも」

「……他にも?」

「ああ」

「……うーん……。全く思いつかないのだけれど……」

妻は可愛らしい眼差しで、再び小首を傾げながら考えあぐねていた。

「……私が閨でお前に触れるのは、いつも手で……、だけか?」

「えっ?」

「淫口と言うのはだなぁ……」

思わず言い淀んでしまうが、ここで言わない訳にはいかないッ。
心に決めた!

「何と言うべきか……、私がいつも蜜を湛えたお前の大切な部分に口づけてやっている……アレだ」

「!!?ッ……。だっ、旦那様ッ!? ぁ……私……」

突然の閨での暴露話に、妻は耳まで真っ赤に顔を染めると、口をパクパクさせている始末。
 
おそらく……、正しい答えを、やっと今、妻は導き出せたのだろう。

「許してくれるか?」

妻は恥じらいと驚きで、ぷるぷると身を震わせると首を小さく横に振った。

「……駄目か……。やっぱり……、そうだよなぁ。はあっ……」

初心な妻にはやはり受け入れがたい事実なのか?
私は、大きく息を吐き出した。

当然だ。立場が反対であったなら、おそらく私もとてもではないが許せはしない。
それが例え、妻に否が無いと分かっている行為であったとしても……。

「……言い訳にしかならないが、もう一度だけ言わせてくれ。あの女との間に、一切の感情は存在しなかった。あったのは反吐が出そうになる程の凌辱的行為と抗えない男の本能だけだった。無意識下において許してしまった淫口事の件についてはどうしようもない事だが、本来の……男女の交わりだけは一切持っていない。それだけは安心してくれていい。私の子を産むのは、今までも、そしてこれからもお前ただ一人だけだ、シルビア。お前との愛を守る為ならば、これからも私はこの腕の1本や2本、簡単にくれてやる!」

「っ…………」

熱を込めた私の誓いにも似た宣言に、妻の目元から一筋の涙がこぼれ落ちた。
奥歯を必死に噛みしめて、内なる心と戦っているのが手に取るように分かる……。
出来る事ならば、愛する妻にこのような思いだけはさせたくなかった。だが、起きてしまった事は、無かった以前には戻せない。

「シルビア……、お願いだ。何とか言ってくれないか?……」

「……そんなこと言われたら……、許さない訳には行かないじゃないですか……。許したくないのに……」

「シルビア!」

私は妻を引き寄せ掻き抱いた。
だが、妻は私の懐の中で、少しだけ抗うような態度を見せた。

「シルビア?」

「……頭では分かっているのです。どうしようもない状況であったと言う事は……。でも、このままでは感情がどうしても付いて行かないの……」

もどかしい……。
そんな状況なのだろうか?

「……それは……、分かる気がする……」

「ただ……、このまま見ず知らずの女の方に、旦那様を触れられたままでいるなんて言うのは絶対に嫌なのです! それだけは確かな感情なの……」

「ならば私はどうすれば良い? どうすればシルビアの心を晴らす事が出来るのだ?」

「……私に……、うっ、上書き……、させてくださいませんか?」

「……えっ?」

耳まで真っ赤に染めながら、羞恥に悶絶している妻の姿を見て、私は慌てふためいた。

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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第28話

信じても良いですか?旦那様ッ

書斎の片隅に置いてある仮眠用のソファーに腰を下ろしている妻は、私から茶を受け取ると良い香りねと言いながら、それを口元へと運んだ。

「すっきりして、美味しい……」

妻に注いだ茶は、先日医術師より妻用にと厳選してもらった試飲用の一つ。
なんでも赤い木の実から作られたノンカフェインのものらしく、それが今の妻には一番お勧めだと言われた。
鉄分やビタミン、食物繊維も多く取れスッキリと飲める事から、昔から妊婦に好まれて飲まれているものらしいが、最近では美容効果も認められ、秘かに若い女性にも人気がある品と聞き、妻に勧めるものならば毒見とは言わないが、どんなものか飲んでみようとここへも運ばせた訳なのだが、まさかそれを当人と一緒に試飲がてら飲むことになろうとは、全く想像していなかった。

「少し酸味があるか? だが、爽やかな感じだな」

「普段、飲んでいるものではないのですか?」

「いつもは頭脳の明確さを保つ為に、カフェインの入ったものばかりだったからな……。これはお前用に、医術師に頼んだものだ」

「……私の為に?」

妻は少し驚いたように瞳を見開き、私を見上げた。

「今の私の日常は、気付けばいつもお前の事ばかり考えてしまっているのが現状だ」

「えっ?」

カップを持つ妻の手が一瞬止まった。

「……確かに、結婚以前の私は、不誠実な男この上なかったと思う……。だが、今は何よりもお前と腹の子の事を大切に思っているし、職務の間も……、本来あってはならない事だが、時折お前が今どうしているのかが頭を過って離れないでいる」 

思いがけない告白だったのか、妻の両目が大きく見開かれた。

「今まで付き合ってきた相手で、職務に支障をきたす者など誰一人として居なかった。お前だけなんだ……」

「旦那様?」

妻の頬がかすかに朱色に染まる。

「だからシルビアの事に関してだけは、自らの意志だけではどうしようもないものがあて……、私はお前に出会って、本当の意味で人を愛すると言う意味を知ったのだと思う。……だから初めての感情に、自身でもかなり戸惑ってしまっているのは確かだ」

「旦那様が?」

妻は、信じられないという表情をしている。
確かに結婚前の私の評判を知っている者が聞けば、そのようなことは想像もできない事だろう。だが、これは事実で、現在私は妻に対しては誠実すぎる程誠実でいると思っている。
今回の罠にはまったことに関しても、妻を愛するが故での惨劇であって、裏切った訳では決してないと自身では思っているが、それを分かって貰うにはどうやって妻に伝える事が正しいものなのか?
私を見上げる妻のつぶらな瞳は、何とも言えず愛くるしく、今こうして妻に触れずにいることすら実はとても苦しい。

「だから、お前からの愛を勝ちとった今、本当に他の女など露程思ってもいないし、興味も全く無い。お前以外勿論自ら触れたいとも思わないし、触れられたくもないと思っている。だが、心ならずもあの女に良いように弄ばれている内に、感情だけでは計り知れない男の本能が顔を覗かし始めた」

「男の本能?」

「男は本来愛する者が相手でなくても女を抱ける生き物だ。それは今まで自らの犯してきた行動で自負している」

「!!っ……」

男と言う生き物の生態的特徴を知らされ、妻の動向がかすかに揺らいだ。

「だが、今の私はそれでもお前以外を欲しいとは思わない。ただそれは、私の意識と感覚がはっきりしていればの話だ。薬で縛られた状況では話は別だ。意識はあっても感覚は、私の思い通りにはなってくれなかった。意識で抗おうとも、あの女の手管に身体は従順に反応していくのが感じられた。巧みなあの女の淫口行為にお前を裏切ってしまうのではないかと恐怖を覚える程だった。だから、私は自らを自身で制裁した。それしか方法が見つからなかった」

「嘘ッ!……」

両手を口元へとあて、驚きに満ちている妻の視線は、私の腕へと移される。

「では、あのおびただしい血は……、まさか旦那様がご自身で!?」

発せられる声も、幾らか震えていた。

「ああ、シルビア。お前を傷つけるくらいなら、腕の一本や二本、たやすく捨てられると思った」

「そんなッ!! 私の為だなんて……」

妻は、思ってもみなかった傷に至った経緯に、大きく首を何度も振る。

「……罠にはまってしまったのは、私自身の落ち度だ。だから、お前が気に病む必要は何も無い……」

「でもッ……。傷は、深いのですか?」

「大したことは無い。動くようにはなるそうだ」

「……深いのですね!?」

「……淫口行為まで許してしまった今、そう易々と許してもらえるとは思っていない。だが、心は伴っていなかった。その事だけは、分かってほしいと思う……」

この告白で、妻はどのような反応を見せるのか?
暫く、妻からの返答は何も無かった。

静寂が、時の流れを狂わせる。
どれ位の時間が過ぎたのだろうか?
5分? 10分。いや、もっと短かっただろうか? 或は長かっただろうか?
すると妻がやっと、重い口を開いた。

「……お話を伺っていて、……旦那様のお話が本当で、ならば成す術がなかったであろう事は、何となく……理解できます……。でも、旦那様が、私以外の方に……」

「許せないか?」

「……嫌だとは思います」

「そうだな。私も、お前が私以外の者に……、グレンに手に口づけられる事すら嫌だからな」

嫉妬心をむき出しにした私に、妻が再び驚いたように、瞼を見開く。

「ですが、あれは挨拶ですよ?」

「それでも嫌なのだ。私はもし……、私にされたようなことをお前が他者にされたとしたら、相手を生かしてはおけない。例えそれが、お前の意であったとしても……」

「それこそあり得ない事だわ! 私は絶対に旦那様としか、あのようなことは死んでも出来ません!」

「ならば、お前は私を許してくれつもりにはならないか……」

「……すごく不本意ですが……、事情が事情のようですし……、今回に限り……」

「許して……くれるのか?」

「はい……」

「そうか。淫口までされたら、簡単には許してもらえないと思っていたが、シルビアが寛容でいてくれて感謝する」

「いえ。私だって旦那様が不本意な……、手に口づけられていますし、手で触れられた位なら許して差し上げなければいけませんよね?」

そう告げ、妻は小さく微笑んではくれたが……。
いや……、待てよ!?

「……今、手で触れられたぐらいと言ったか?……」

「はい」

「お前……淫口の意味を、知っているのか?」

「えっと……、旦那様のモノに触れることですよね?」

「何処で?」

少し考えるような仕草を見せた後、妻は……。

「……手?」

「…………」

ここは言うべきなのか、言わざるべきなのか?

一難去って、また一難。
私は頭を抱え、思わず大きなため息を一つ零した――。

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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第27話

信じても良いですか?旦那様ッ

書斎で領地に関する報告書に目を通しながら、他に言いようがなかったのかと自身を戒める。

妻は今まで私が関わってきた女たちとは根底からして違う。
世慣れておらず、擦れた所等の全くない……、本来私等が触れる事すら許されないであろう純真で無垢な少女だったのだ。
婚姻による関係で、男に身を委ねる術は私が教え込んだ。
妻はいつも従順で、恥じらいながらも私を素直に受け入れてくれていた。
身体を寄せれば、求めるままに私を受け入れてくれる躰を私は欲し、情を幾度も交わし合った。
だから男を初めて知る妻に、自己満足にしか過ぎぬ淫口的行為なるものを教え込もうとは思わなかった。
それが妻に似つかわしい行為とは到底思えなかったというのが一番の理由だが、妻との間には淫口行為を強要する必要性を感じていなかったと言うのも事実だった。
勿論女からされる淫口行為自体は決して嫌いではない。妻が喜んでしてくれると言う日が来るのであれば、勿論それは喜ばしい事ではあるが、変に知らせて引かれて怖がらせるのは頂けない。ならば知らせぬままでも良いと思っていた。
それに、それを必要としない程に妻の躰はいつも甘美で、私を狂わせる。
私はそれだけで妻との関係性を、十分に現時点では満足していた。
だから妻に余計な強要はしたくなかった。
何よりまだ閨での行為に慣れていない妻に、たどたどしい淫口行為などされた暁には、私は自身を抑えきれない程に乱れ、妻を今までに無いほどに求め抱き潰してしまう自信がある。
それはとても今の妻との間で出来る行為ではないと思っているし、してはならないと感じている。
だから、おそらく先程告白したあの女との行為は、妻にとっての初めての知識となった筈だった。

思えば、あれほどのあからさまなる物言いは、いささか妻にとっては考慮が足りなかったのではないかと言う後悔を、少なからず覚えるのだが、それも今となってはもう遅い。
震える妻を、私は抱きしめる事すらできなかった……。

「もっと、違う言いようがあっただろうに……」

顔を上げれば出るのはため息ばかりで、見直している書類は読んでいても頭の中をすり抜けて、全く内容が入って来ない。

「……はあ――っ……」

言いようのない虚しさが心に壁を作る……。

きっと妻は、私に対して嫌悪感を覚えたに違いない。
当たり前だ。己ですらあの時の自身の状況を思い出しただけで、嫌悪以外の感情が芽生えることは無いと言うのに、妻からしてみれば、まさに聞き及んだ情報は青天の霹靂だったに違いない。

「状況から言って、これ以上の弁明は、直ぐには無理だろうな……」

妻が普通の状態であれば、何としても無理強いしてでもその場に残って更なる状況を説明し、懇願し続けていたに違いない。
だが、今の妻の状態を思えば、そういう訳にも行かなかった。

時計に目をやれば、妻の部屋を出てまだ1時間と経っていない。

「今夜は長い夜になりそうだな……」

こんなに時間の経過が過ぎるのを、遅く感じられる夜は初めての事だった。



何度目かの深いため息をついた時だった。
書斎の扉が小さく叩かれる。

“コツン、コツ”

明らかに、いつも聞き慣れた家の者とは違う緩やかな音。
何処か躊躇するような奥ゆかしい弱い扉の叩く音に、私は聞き覚えがあった。

まさか……!?
そんな、あり得ないッ!
だが……。

私は急ぎ反応すると、扉の傍まで駆け寄った。

「シル……ビア……、なのか?」

震える手で、ゆっくりと扉を開いた。

「やっぱり……」

「えっ?」

すると目の前に現れた妻は突然、何を思ったのか、私が取っ手を持っていなかった方の利き腕を、掴みにかかった。

「ッ!!……なっ、なにを……ッ」

妻の思いがけない行動に、私は咄嗟に身を引いた。
傷口は縫って間もない。痛みも実はまだかなりある。かすかに顔を歪めてしまっていたかもしれない……。

「……痛むのではありませんか?」

「……何のことだ?」

妻に余計な心配をかける必要は無いと思っている。

「お怪我を……なさっているのではありませんか?」

「何故そう思う?」

「洗い場に置かれていたシャツ……。旦那様の利き腕の袖口が、おびただしい血痕で濡れていました」

「……それは私の物ではないな。スウェーデンが昨日負傷したと言っていたから奴の……」

「嘘!」

「落ち着け。そんなに怒っては腹の子に良くないぞ?」

「……誤魔化さないでッ! 給女と口裏を合わせて、私は除け者なのですね……。あのシャツが旦那様のものかどうか位、私にも分かります。上着にも血痕が付着しているのを私は見ました。どうして……、私には隠すのですか!?」

「シル……ビア……」

まさか、傷の事に気付かれているとは思いもしなかった。
私は気まずくなって視線を少し反らした。

「……痛むのでしょう?」

「お前の心の痛みに比べれば、大した事は無い……」

そうだ。
結婚して尚、私は心ならずもずっと愛する妻を傷つけてきたのだ。
こんな傷位、大した事では……。

「如何してお怪我を?」

どう説明すれば良いのか……。

「性(さが)を封じ込めるにはそれしかなかった。俗に男は下半身の生き物だと言が、良く言ったものだ。心は無くとも身体は反応をするのだからな。どうしようも無かった……」

「……えっと……それは如何いう??」

どうやら私の放った言葉は、今回も妻にはかなり難しいものだったらしい……。

妻は小首を傾げて呆然とした眼差しで私を見上げている。
この無知で理解の無さ気な、のほほーんとした表情が、痛い程に私に可愛く見えていると言う事を、妻は自覚しているのだろうか?
私は思わず差し出した両腕を、ブルブルと震わせていた。
抱きしめたい衝動を抑える事に、酷く苦労している状況だったのだが、必死にこの場は何とか食い止めた。

「立ったままでは何だ……。身体が冷える。お茶でも入れよう。座りなさい」

私は妻の腰に何とか片手だけを収めると、書斎の一角に置かれているソファーに座らせた。

今度は妻に分かるように、しっかりと理解できるように話をしなくてはと思い直しながら……。
しかし、この無知なる妻に対し……、一体どのように砕けて話をすれば、理解して貰えるものなのだろうか??

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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第26話 (シルビア視点)

信じても良いですか?旦那様ッ

状況から言って、旦那様になすすべがなかった事は理解できるのに、とてもその事に直ぐには感情がつて行かない。

「如何して、こんな事に……」

一方通行の恋だと分かっていながらも、お父様に話を纏めてもらい無理やり旦那様と夫婦になったのは、例え思いを交わすことが叶わなくとも、旦那様にとっての唯一の……、特別な存在になりたかったから。
旦那様には幾ら思いを交わす相手はあっても、その方々との間には決して子を儲けることが許されない。その事が分かっていたから、妻となり、子を成すことに全ての望みを託した。
子を授かり、真の家族になれれば、或は私との間には新たな関係性が芽生えるかもしれない……。
けれどそんな中で、婚姻早々思いもよらぬ事態が勃発した。
旦那様が懇意にしていた相手の一人が、懐妊したと言うのだ。
けれど、相手は夫のある身。夫との間の子という事も考えられると自身に言い聞かせ、探りを入れさせた結果、どうやら夫には執着している愛人がおり、久しく会う事すらしていないとの事だった。

だとすれば……。

ローゼリアン伯爵家には、まだ子は無い。
旦那様は初婚。過去において通われていた方々との間にも、誰一人として子は儲けられてはいなかった。

『夫以外の殿方との間のお子ですってよ』

『まあ、それで離縁されてご実家に?』

『あら、お身受けなさると言う話を聞きましたわ』

旦那様が、その方を迎え入れるのは確実な状況だった。
旦那様の唯一の存在になれるかもしれないという私の儚い願いは、この時見事に打ち砕かれた。

それでも、正妻は私だ。
何を言われようと、私はこのまま旦那様の許に留まる事が許される存在だ。
そうなれば、週に一度の関係だけれど、旦那様との間にいつしか私も子を授かる事が出来るかもしれない。
そうすれば少なくとも旦那様との間に家族関係は成立することはおそらく出来る……。
旦那様は子供好きだ。
けれど、決して旦那様にとっての、唯一なる存在にはおそらくはなり得ない。
ならば、いっそのこと……。
長い間、旦那様と情を交わしてきた相手に、若いだけが取り柄の婚姻間もない妻が太刀打ちなど出来る筈もないと思うと、全てが終わった事のように思えだ。

旦那様は週に何度も通われているというその方に、今までどのような愛の言葉を囁いたのだろうか?
週に一度だけの、形式的に夫婦として躰を重るだけの妻の身には、分かろうはずもなかった。
愛の言葉すら囁かれたことのない妻には……。

嫁いで来た時のかすかな望みは脆くも立ち消え、私はついに……、旦那様との離婚を決意した。

『……離婚しましょう、旦那様ッ』

けれど、意を決した私の言葉に対し、旦那様からは信じられない言葉が返ってきた。
旦那様の口からは、私に対する賢明なる愛の告白が紡がれた……。
それは、にわかには信じがたいほどの、熱のこもったものだった。

(旦那様が……、本当に私の……事を!?)

旦那様の表情は真剣そのもので、本当の想いに触れられたと感じられた私は歓喜に涙した。

旦那様と、相思相愛になれるなんて……。
そんなことが起きようとは、夢にも思っていなかった。

更に、思い悩んでいた全ての事は私の誤解で、まさかこれ程までに旦那様に愛されていたなんて……。

(えっ?……妊……娠……??)

旦那様との間に、こんなにも早くに子宝に恵まれ、本来のならば喜びに満ち溢れ幸せを噛みしめられる筈なのに、全く無知な私はその事に気付けず……、この子にはとても辛い思いをさせてしまった。
それは、己の心意的弱さと無防備な行動が齎した結果だった。
何とか頑張って欲しいと願う私の思いは、旦那様の心強い支えによって聞き入れられて、今この子は私の中に息づいている。

幸せすぎて信じられない程の穏やかな日々。
報われるに余りあるほどの幸せを、私は噛みしめていた。



結婚当初の、旦那様の愛を感じられずにいたあの頃のままの私だったら、今回の旦那様の出来事も、不慮の事故として自分の中できちんと整理し消化できたのかもしれない。
けれど、私は知ってしまった。
旦那様が傍にいてくれる幸せを……。
知らなかった過去には決して戻れない。

最初は不確かのように思えていた旦那様からの愛情表現も、やっと最近、当然のことのように受け入れ、信じられるようになって来ていた。
これは夢ではないのだと……。
何時か消えてなくなるのではないかと言う不安も、ここ最近の呆れかえるほどの旦那様のかいがいしさが、私の心の迷いを払拭してくれていた。
これ以上の幸せがあるのだろうかと……。
私は旦那様に愛されているのだと、素直に信じられた。

信じてはいても、それでも少し前まで付き纏っていた不安。
それは当人の想いとはうらはらに、旦那様がとてもおモテになるから……。
実家の家の者の話では、旦那様の周囲には、まだ懇意になろうと近づく輩が居るのだという。
その誘いに乗る事は、今の所は無いようだが、それでもその話を耳にする度に、心穏やかでは居られなくなる。
この子の存在が旦那様との絆になると同時に、私の躰を気遣い、最近閨を共にすることが出来なかった日常が、更に私を不安な状況へと駆り立てていた。

想いを交わせないと感じていた頃には無かった思い。
旦那様から愛の言葉をささやかれ、それを信じ、共に歩んでいけるのだと思った時から私の心は婚姻当初より贅沢になっていた。
心が狭くなっていた。

(そんなの……、旦那様の意思に反する行いなのだから、そもそも責められるべきものでも無いのに……)

旦那様が実際に出来ない状況にあったと言うのなら、そうなのだろう……。
言い難いであろう状況を正直に告白してくれた時点で、とても旦那様が嘘をついているとは思えなかった。

しかし……、動けない状況にあったというのに、旦那様はその状況を如何やって回避したのだろうか?
それに、全身痺れて動けなかったと言っていた。どうやって帰って来……っ。

「あっ、……血……」

その時、洗濯場で見た破れたシャツに付着する、おびただしい血痕の事を思い出した。
あれは、一体誰のものなのか!?

(まさか……、旦那様はその者を殺……)

いや……、動けないのだ。それはあり得ない。
それに幾ら何でも殺めたのであれば、旦那様は既に捕らえられている筈。
何のお咎めも無いのであれば、それはそういう事なのだろう。
ならば、他に考えられる事は……。

「まさか……、旦那……様の?」

(私に心配をかけまいと、……傷を負った事を隠して?)

一つの結論に達し、私の身は小さく震え始める。

「奥様ッ、今ご無理をされては……」

「大丈夫。旦那様の所へ伺います」

私はそう侍女に告げると、身体を起こし旦那様の許へと向かった。

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※父、何度も急変し、人工呼吸器をつけたり外したりを繰り返してましたが、先週末気管切開をしてから、吸引は必要ですが状態が安定し始めました。良くなる病気ではありませんが、落ち着いているので少しずつまた再開したいと思います。
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離婚しましょう? 旦那様ッ・続編『信じても良いですか?旦那様ッ』 第25話

信じても良いですか?旦那様ッ

妻の視線が突き刺さる。
もう誤魔化しも何もきかないと言う現実を突きつけられている事は、否が応にも理解できる。
私は覚悟を決めると、ゆっくりとした口調で続く言葉を口にしはじめた。

「警戒はしていたのだ。私が結婚後に直帰するようになった事を不服に思っていたようだし、だから結婚後は職務以外で奴と行動を共にすることも避けていたんだが、あの夜はとても直ぐに帰る気分にはなれられず……、他の部下に誘われるままに酒を交わしに出かけた。そこに避けていた筈の奴が、不意を衝いて現れた。だから、ヤバいとは思っていた。奴とは以前は良く一緒に行動をしていて……、シルビアが心を病んでいたあの件にも深く関わっていたから……」


「えっと……、確か旦那さまの同期の部下と、いま仰いました?」

「ああ、そう言った」

「えっ? でも……あの……、ですけれど、旦那様の同期で一番お近くにいらっしゃるのは、あのお優しいグレンソ・マグリニー第2連隊長様しか、いらっしゃいませんわよね? 私の……、思い違いだったかしら……??」

「思い違いって……、まさか……。おいッ! なんでお前がグレンの事を、そんなに良く知っている素振りなんだ!?」

確かにグレンの事は結婚式後のお披露目会の席で、大勢の親族や関わりのある国の重鎮等、隊長クラスの部下たちと共に紹介はしたが、その数は100名を優に超える。とても一度顔を合わせただけで覚えられる類のものではないし、妻の言いようにも何処か引っかかるものがあった。

「あ、はい。ご紹介頂きましたし、それにマグリーニ連隊長様には、騎士のお仕事について等も、あの後ご丁寧にご教示頂きましたので……」

「なん……だって!? いつ……、それは何処での話だ!!」

私は身を乗り出し、妻に問い正した。

(グレンの奴、私の知らぬ間に、妻と……、まさか会っていたのか!?)

お披露目の席では妻と離れることは無かったはずだ。妻が退出するまで、ずっと行動は共にしていた。
という事は、何処か別の機会でという事か!?

「えっと……、結婚休暇を終えられた翌日だったでしょうか。非番明けだと仰っておりましたのに、わざわざ邸にお立ち寄り下さいまして、色々と私の知りませんでした騎士のお仕事の業務外での関わり事の重要さ等についても切々とお教え頂き、とても有難く思っておりました。それに、とても親切にしてくださいましたし、騎士としての旦那様のご様子をお伺いするのも楽しくて……」

「……あいつーっ……」

あの日、出仕するや否や例の奉仕への誘いがグレンよりあったのは確かだ。
だが、既に妻に対する深い愛情を覚えていた私は、即座にその件を断った。
そして、今後は今までの関係を全て清算するつもりであることも話した。グレンは『成程な……』と頷いてくれたものだから、私は勝手に納得してくれたものだと思っていたのだが、後の事件を思えば、当時から全く快く思っていなかったという事か。
だから妻を言いくるめ、帰宅が遅くなることも了承させ、裏で根回しもし、あの頃から今後も私を、あの既に思い出したくもない泥沼の世界へ連れ戻すつもりでいたと?
そういえば妻は結婚当初から『こんなにお早いお帰りで、ご無理をされているのではありませんか?』と私をいたく心配していたが、あれは私の身体を心配しての言葉ではなかったのだ。あの優しい言葉までもが、グレンに私を加担させる為のものだったとは……。
私はグレンの知略に嫉妬すら覚えた。

「……旦那様?」

「ここまで用意周到な奴だったとは……。だから私は出し抜かれたのか!?」

「……はあ?」

「いや……、奴には何もされなかっただろうな!?」

「はい、別に特別なことは何も……。挨拶の抱擁と、手の甲に口づけられましたけれど、それは形式的なものですし……」

「!!…………っ」

グレンと妻の当時の様子が、妄想となって脳内を駆け巡り、私は嫉妬に狂いそうになった。

「あの……、それよりも旦那様。あのお優しいマグリニー連隊長様が……?」

妻はとても信じられないと言った表情だ。

「奴とは腐れ縁で、色々と今まで公に出来ない事も共にやって来た間柄だった……」

正直に、グレンとの過去の関係性を認めながら話す。
妻の前で、グレンがどれだけ紳士ぶっていたのかは想像ができた。
今の妻の頭の中で、グレンはきっと『清廉な優しい人』という位置にある。

「えっとぉ??……」

「私はお前と出会って、女に対する認識を改めたが、奴は結婚後もずっとその事を改める事も無く、関係を続けている。婚外子もいて奥方が育てている。奴は今まで私を同類と見なしていたし、私も奴のように生きていくのかと正直ずっと思っていし、そう話していた。だが、そうでは無かった。シルビアが私を変えてくれた……。だが奴は、おそらくそんな私を快く思っていなかった。それで私に罠をはめたのだろう。私を再び奴の都合の良い世界へ連れ戻す為に……」

「それは……、あの……、複数の女性との……、あの……」

妻は少し羞恥に満ちた表情で瞳を反らし言葉を詰まらせながら、確認の為の言葉をゆっくりと紡ぐ。

「そうだ。あの夜……娘の事で嫉妬を覚えた私は、やけ酒を煽りながら……つい、愚痴を零してしまった。すると思いのほか深酒になってしまった……。いつの間にか薬を盛られ、その事に気づた時にはもう遅かった……」

「……薬を……、盛られた!? まさか……」

「本当だッ! 普段だったら絶対にそんなヘマはしなかった。だが、あの日の……、お前たちの話の内容は、私にとってはそれ程に大きな痛手を齎すものだったのだ。だから、気を失っている間にグレンの宛がった女に衣服を緩められ、馬乗りにされている事にも気づかなかった。目が覚めて、愕然とした……」

「うっ……馬乗りって……」

「ここまで来たら隠していても仕方ない。シルビアが気にしている香水の香りはその女のものだ。勝手に私を剥いてモノに手をかけていた……。私は薬で痺れて身動きができない状況だった……」

「そんな……っ」

「心ならずも淫口行為を許してしまった事に、疑う余地はない……。この目で直視し愕然とした。その件についてはシルビアに何の申し開きもできない。謝った所で簡単に許されるものではないかもしれないが、本当に済まない……。だが、聞いてくれ! それ以上の事は本当に許してはいない! だから、私はお前を裏切ったつもりは毛頭ない!」

「そんな……都合の良い話って……」

「シルビア!」

「それに、そんなの……分からないじゃない! 気を失っていたのなら……何をされていたのか分からにいのなら……。思いは無かったかもしれないけれど……、何もなかったとは……」

「それは大丈夫だ。まだ私のモノは反応してなかった。……挿入が出来ず、あの女は苦渋を強いられて翻弄していた……」

「!!……っ。そ……、んな事……」

妻は頬を染め羞恥しながらも、小さく震えていた。

「都合の良いことを言っていることは自分でも分かっている。だが、信じてくれ! もし、本当にお前を裏切っていたら、今私は……」

「いやッ!! それ以上、聞きたくない!!」

「シルビアッ!!」

「……旦那様が私を裏切ったとまでは言わない。……けれど、ごめんなさい……。今は混乱して感情がついていかない……。しばらく一人にして……。これ以上混乱してこの子をまた危険な状況に追い込みたくないのっ……」

「……分かった……」

子の事を持ち出されれば、私には今これ以上の弁明は難しい……。
妻は今までに無いほどに動揺しているし、混乱している。
それは理解できた。

妻の状況は、想定内のものだった。
だが、その状況を目の前に突きつけられた現実は、私が想像していたものよりも遥かに重いものだった。
妻に言われた通り、速やかに部屋の出口に向かおうと重い足どりでゆっくりと歩き出す。そして扉の取っ手に手をかけると立ち止まり、今一度だけ私は妻を振り返った。

「全ては私の落ち度だ。何の申し開きもできない。だが、これだけ聞いてほしい……」

「……な……に?……」

「本当に心から……、私はシルビアだけを愛している……」

「!!っ……」

私はそう告げると、ゆっくりと扉を閉めた。
妻の涙に揺らぐ大きな瞳を愛おし気に見つめながら……。

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※父の病状が思わしくなく、更新が途絶えてすみません。色々ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。更新できる時はしますので、すみません。
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風波 涼音

Author:風波 涼音
オリジナルの王道恋愛ファンタジーを書いています。(ハッピーエンド推進)〇〇年振りに執筆を再開しました。少しずつ自分のペースで書いていきたいと思います。

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