パウリンの娘

パウリンの娘《第19章2》

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新しい神官長の側近がサイナーの息子である事は、入神者名簿と入神時期、デーン村での証言から言って間違いは無い。
現時点での証拠能力は無いが当時の状況と、通常この国の者には見られない異種的な瞳の色もレディエ国の流れを組むデーン村の者特有の瞳の色だとすれば全ての事が符合する。
サイナーの息子が我王の本当の父親である事はおそらく間違いは無い。
現段階で同じような条件を持つ入神者は存在しない。
王家のしきたりで、通常婚約が成立すると花嫁となる者の傍には何時も警護の者とお付の侍女傍にいる。
どのような行動も監視されそれは神殿内とて変わらない。
ただ、唯一足を踏み入れる事が出来なかったのはお清め場のある言わば神殿内でも聖域の場所でお傍にいる侍女ですらそこへ入る扉の前までしか入室を許されない。
侍女は儀式には参加できないにしても扉のすぐ傍まで付き添いの待機していた筈だ。
何かあったとすれば清めの儀式の間でしか考えられず、既に身ごもっていた節が正しければ相手は儀式に参加できる入神者以外考えられなかった。
それは即ちサイナーの息子こそが我王の実の父親であることを示していた。
状況的に見てもゼロが引き摺り下ろすまでも無く、この事が事実として明るみに出れば皇太后の追及は免れないであろう。
そして我王の王位剥奪を唱える者は必ず現れる。

我王は前王と皇太后の婚姻後8か月で早産として生まれたと言う報告になっているが、前王は我王が生まれた時点でサザーランド王家の血統に一代たりとも存在しない瞳の色の子に疑念を抱かなかったのであろうか?
どのような理由から我が子であると認めたのだろうか?
事を荒げる事もせず、当初から跡継ぎの王子として認めた前王の真意をゼロは掴みあぐねていた。
傍から見ている者の多くが疑念を抱く事を聡明な王が気付かない筈はない。
その後本当に自分の実子が生まれる可能性を考えなかったのだろうか?
考えれば考える程その謎は堂々巡りで、闇に埋もれて行った。

「その従兄弟の送られていた手紙と言うのは拝借出来ないものなのでしょうか?」

話し合いの中で一番に出て来たのはやはり、デーン村で夫人が話してくれた夫が従兄弟のサイナーから時折届けられていた手紙の存在だった。
形見と称し取っていれば一番の証拠能力を持つかもしれない代物だった。

「それを現段階で徴収するのは不可能だろう」

「しかし、それ以外にどういう手があるのか!?」

「当時皇太后に付いていた侍女なら何か知らないか!?」

「以前接触したが知らぬ存ぜぬで相手をして貰えなかった」

そう告げたのはハビロードだった。

「その侍女と言うのは皇太后に結婚以前からずっ付いていた者なのか?」

「いえ。花嫁修業先の公爵家からの付き合いだそうで、前王がご崩御された後に王宮を去り現在結婚しております。夫は王宮の内務官をしております」

「それは、何か知っていても話せないだろうな・・・・」

シドがポツリと呟いた。

「いや、グルバルト家の者ならばまだ聞きだす手はある」

「あっ、そうか!!」

現在夫か重鎮として働いていて、真実を知っていたとしても何も話せないのも頷ける。
だが、皇太后の結婚が決まってからグルバルト家から侍女として付い行き、前王崩御と共に王宮を去っていると言う事はその侍女の忠誠心はおそらくグルバルト家に対するものだ。
前王の母方の実家と言う事はゼロの母ザビーネの母方実家でもあり、即ちそれはゼロとも血縁関係のある家だと言う事だ。
グルバルト家には母に連れられて幼い頃に避暑に出向いたこともあり、現グルバルト公ともゼロは顔見知りだ。
ただ、騎士見習いとして王宮に入ってからは疎遠となっている。
それでも王宮で公と出会った時などは親しく声をかけて貰った事もある。
ただ、この事態を現段階で公爵に話し間を取り持って貰い、その侍女に話を聞いて貰えるかは分らない。
公爵の人柄も表向きだけで深くは知らない。
ただ、現段階でのゼロの印象は決して悪くは無い。
やはり、この事についてはまた母の手を借りる事が一番の近道に思えた。

「母の方がグルバルト公の人となりは詳しい。この提案が受け入れて貰える確率がどれ位あるのか聞いてみたいと思う」

「そうだな。最初から公に全てを話すのは危険すぎる」

「こればかりは書状をと言う訳にもいかないか・・・・。やはり、また出向かなければならないかと思うと少々気が重いが致し方ないな・・・・」

ゼロは深いため息を一つついた。

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