パウリンの娘

パウリンの娘《第19章5》

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屋敷に挨拶に行き、その後どのような状況になるかは分らないが、以後の行動は全てこの支部が中心になる。
管理を頼んだハビネス夫妻からは王宮にいた頃以上に良くしてもらっているとフリードルからの報告も受けている。
夫妻もきっとローレライの事を気に入ってくれるであろうと信じていたから紹介する事にあまり不安は抱いていなかったが、それでも少し心配はしていた。
貴族の令嬢としては変わり者と言われてしまえばそれまでだ。
かつて自分もそう感じていたのだから。
しかし、ここまでの褒め言葉を貰えるとは思っていなかった。
ローレライの感覚は普通の貴族の娘の持つものとは違い過ぎる。
この違い過ぎる良い面をどのように伝えれば分かって貰えるかと考えていたゼロだったが、全く心配することは無かった。
ハビネス夫妻はローレライを見ただけでその本質を見抜いてくれた。
これからの始まる新しい生活への当面の不安が解消されゼロは胸を撫ぜおろした。

昼食の後、夫人と共に洗い物をしながら楽しそうに話しているローレライの姿にゼロは自然と笑みが零れる。
初めて目にするローレライの家庭的な姿に無意識に目を奪われていた。

「おい、若い連中が居る時にその顔は見せるなよ。威厳が損なわれる」

シドの声にゼロはハッとして我に返った。

「・・・・そんなにか!?」

やはり気付いていないのか・・・・。
愛しげな視線であの娘を目で追う姿は、傍から見ていても切なくなって来る。
あいつの想いがいつか本当の意味で報われることを信じたい。

バラサインでは皆今までの経緯を知る者ばかりで差ほど気に留める事も無かったが、ここは違う。

「自覚なしか。一番やっかいだな・・・・」

「すまん・・・・」

シドは頭を抱えた・・・・。

実は今回王都に移る事になり、一番に考えたのはあの娘の処遇だった。
皆信頼のおける仲間で不心得者は居ないと信じてはいるが、男大勢の中に若い娘が一人と言うのも考えものだ。
オードラルの屋敷に頼み込んで置いて貰おうかとも思ったが、ローレライがそれを否定した。
それともぅ一つ。あの娘が傍にいればどうしても無意識にゼロが気にかけてしまう。
ゼロも自分の事で皆に変な気遣いをさせたくは無いだろう。
現在支部として利用しているのは敷地内で飼料小屋として使われていた場所を一部改装したものだ。
それ以外の場所は統括した事から人数も多くなった為、皆で共有できるフリースペースと居住空間にしている。
普段気の抜けない仕事柄、支部以外の場所では皆が寛げる空間にしてやりたいと言う思いがあった。

「やはり屋敷に預けるべきか!?」

「でも、嫌がっているんだったら無理強いは出来ないだろ!?」

「ああ」

「・・・・まぁ、お前も居ないのに屋敷に一人と言うのは確かに気まずいだろうしなぁ・・・・」

そう告げるとシドは少し考え込んでいるような素振りを見せたが、暫くするとハッと何か思いついたように顔を上げた。

「・・・・まぁ、何とかなるか。とりあえず俺が強力な助っ人を用意してやる。そうすれば場の雰囲気も幾らか変わるだろう。より和める場になるかどうかは命運に委ねよう。まぁ嫌がらないとは思うが、断られたら勘弁してくれ」

「強力な助っ人!? 私の知っている者か!?」

「そうだな。会ったのは・・・・5、6回位か!?」

「誰だ!?」

「まぁ、良いじゃないか。それよりあいつが来るまでは特に気を付けろよ。今後の事もある。お前はあくまで憮然とした態度を取っていた方が良い」

「最もだ・・・・。以後気を付ける」

「ああ。頼む」

そうは言ったものの、シドはあまり期待をしていなかった。
無意識と言うのが一番やっかいなもので、幾多の恋を渡り歩いた強者なら未だしも、周りが気付いても自分の気持ちにすら中々気付かなかった云わば恋愛に疎かったゼロにそれを求めるのは酷だと思っていた。
ならば皆の目があの娘とゼロに集中しなければ良いのだ。
シドはその場を離れると即効で手紙を一通認めた。

ローレライは後片付けの手伝いを終えると、到着時に荷物を降ろした部屋に戻った。
その中から最小限の荷物を持ち出し準備を終えるとゼロは同行を許された者達を連れてオードラル屋敷を再び目指し出発した。

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