パウリンの娘
パウリンの娘《第19章9》
今ゼロが自分の事を大切にしてくれているのは確かだ。
指輪も貰って正式に婚約もした。
でも・・・・。
あの時ゼロが口にした言葉は表向きに取り繕おうとして発せられた言葉では無い。
あのシザーレに対してゼロが虚言を吐くとは到底思えない。
それ故に今まで何処かで疑念を抱かずにいられなかった。
どんなに優しい眼差しを向けられても・・・・。
ザビーネ様は大丈夫と言ってくれたけれど、優しいのはゼロの本質で、きっと自分でなくとも婚約者となれば誰にでも向けられるものなのではないか?
状況的に見て、そう捉えた方が自然な事のように思えて来る。
だから多くを期待しすぎてはダメ。当初はずっとそう思っていたではないか!
それがゼロの優しさに触れて行く内に、もしかしたらと心の何処かで期待を抱くようになって来てしまった。
ならばゼロの優しさに絆されていっそ、あの言葉は聞かなかった事にして・・・・。
そう思おうと試みたが、今度は別の感情がローレライを捉えて離さない。
初めて知った女性の影。
女性に対する見方が変わるほど受けた衝撃とはどのようなものなのか?
ザビーネの口ぶりから、今となっては左程重要とされる事柄ではないのかもしれないが、知ってしまった以上その事が気になって仕方がない。
聞いてみたいけれど知る事が怖い・・・・。
けれどそれを知り受け入れる事で、もしかすると今まで以上の関係をゼロとの間に築けるかもしれない。
少し落ち着きを取り戻し冷静に捉えてみようと考えた時、ローレライが最初に思ったのはその事だった。
「あの・・・・若い頃色々あって女性に対する見方が変わったみたいと言うのは、如何言った事が原因だったのでしょうか!?」
聞く事が無粋な事と知りながらもゼロの心が少しでも手に入るきっかけが持てるのならばと言う気持ちだけがローレライの心を動かし、その言葉を口にさせた。
「詳しい事は私も知らないのよ。上の娘の嫁入り前で忙しくしていたからあの子に構ってやれる余裕も無くて。それが娘の結婚式当日とても冷めた面持ちで・・・・。緊張しているのだろうと思っていたら、それからもその態度は変わる事が無かったの。如何したのかと聞いてもただ女性に対する見方が変わりましたと言うだけで何も教えてはくれないの。とても無邪気に笑う笑顔の可愛い子だったのに、急に大人びた様に感じられてとても淋しかった事を覚えているわ」
「お姉さまが嫁がれて淋しかったのでしょうか?」
「それは無いかしら。上の娘はアイスラントと年が離れているせいかあまり仲良くは無かったの。時折邪険にしている節もあったし、どちらかと言えば折り合いは悪いようだったから」
「あっ」
ローレライは思わず口を押えた。
思い当たる節がある・・・・。
少し前、ゼロのお姉さまの嫁ぎ先の領地へ出かける話が出た時に、ゼロが行くならば自分も一緒に行ってみたいと思っていた事があった。
「何かあったの!?」
「いえ。私お姉さまに会える機会があるかもしれないと、何も知らずに少し浮かれた時があって・・・・」
ローレライは不安気にその時の事をザビーネに話した。
「でも、結局行かなかったのでしょ? だったら何も問題は無いでしょ?」
好奇心旺盛で直ぐに何にでも目を向けたくなって・・・・。きっと呆れられている・・・・。
精神的に感情が不安定な時、ローレライはいつもよりかなり悲観的になる。
これはローレライの悪い癖だ。
沈んでいくローレライの姿を見てザビーネはクスリッと笑った。
「何を気にしているのかと思えば・・・・。アイスラントはそんなに了見の狭い子ではありませんよ。大丈夫です。貴方が何をしようと今のままの貴方ならきっとあの子は何をしても受け入れてくれると思うわ」
「そんな事は・・・・」
ありえないと口にしようとしたが、そうあって欲しいとの願いもあって、ローレライはそれ以上の言葉を口にしなかった。
「分かるものなのよ。母親って。不思議なものね。貴方もきっと何れ分かる時が来るわ。どうか二人で幸せになってね」
ザビーネはにっこり微笑むとそう言った。
“信じたい・・・・。そして二人で幸せに・・・・”
その言葉こそがローレライが一番欲するものだった。
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指輪も貰って正式に婚約もした。
でも・・・・。
あの時ゼロが口にした言葉は表向きに取り繕おうとして発せられた言葉では無い。
あのシザーレに対してゼロが虚言を吐くとは到底思えない。
それ故に今まで何処かで疑念を抱かずにいられなかった。
どんなに優しい眼差しを向けられても・・・・。
ザビーネ様は大丈夫と言ってくれたけれど、優しいのはゼロの本質で、きっと自分でなくとも婚約者となれば誰にでも向けられるものなのではないか?
状況的に見て、そう捉えた方が自然な事のように思えて来る。
だから多くを期待しすぎてはダメ。当初はずっとそう思っていたではないか!
それがゼロの優しさに触れて行く内に、もしかしたらと心の何処かで期待を抱くようになって来てしまった。
ならばゼロの優しさに絆されていっそ、あの言葉は聞かなかった事にして・・・・。
そう思おうと試みたが、今度は別の感情がローレライを捉えて離さない。
初めて知った女性の影。
女性に対する見方が変わるほど受けた衝撃とはどのようなものなのか?
ザビーネの口ぶりから、今となっては左程重要とされる事柄ではないのかもしれないが、知ってしまった以上その事が気になって仕方がない。
聞いてみたいけれど知る事が怖い・・・・。
けれどそれを知り受け入れる事で、もしかすると今まで以上の関係をゼロとの間に築けるかもしれない。
少し落ち着きを取り戻し冷静に捉えてみようと考えた時、ローレライが最初に思ったのはその事だった。
「あの・・・・若い頃色々あって女性に対する見方が変わったみたいと言うのは、如何言った事が原因だったのでしょうか!?」
聞く事が無粋な事と知りながらもゼロの心が少しでも手に入るきっかけが持てるのならばと言う気持ちだけがローレライの心を動かし、その言葉を口にさせた。
「詳しい事は私も知らないのよ。上の娘の嫁入り前で忙しくしていたからあの子に構ってやれる余裕も無くて。それが娘の結婚式当日とても冷めた面持ちで・・・・。緊張しているのだろうと思っていたら、それからもその態度は変わる事が無かったの。如何したのかと聞いてもただ女性に対する見方が変わりましたと言うだけで何も教えてはくれないの。とても無邪気に笑う笑顔の可愛い子だったのに、急に大人びた様に感じられてとても淋しかった事を覚えているわ」
「お姉さまが嫁がれて淋しかったのでしょうか?」
「それは無いかしら。上の娘はアイスラントと年が離れているせいかあまり仲良くは無かったの。時折邪険にしている節もあったし、どちらかと言えば折り合いは悪いようだったから」
「あっ」
ローレライは思わず口を押えた。
思い当たる節がある・・・・。
少し前、ゼロのお姉さまの嫁ぎ先の領地へ出かける話が出た時に、ゼロが行くならば自分も一緒に行ってみたいと思っていた事があった。
「何かあったの!?」
「いえ。私お姉さまに会える機会があるかもしれないと、何も知らずに少し浮かれた時があって・・・・」
ローレライは不安気にその時の事をザビーネに話した。
「でも、結局行かなかったのでしょ? だったら何も問題は無いでしょ?」
好奇心旺盛で直ぐに何にでも目を向けたくなって・・・・。きっと呆れられている・・・・。
精神的に感情が不安定な時、ローレライはいつもよりかなり悲観的になる。
これはローレライの悪い癖だ。
沈んでいくローレライの姿を見てザビーネはクスリッと笑った。
「何を気にしているのかと思えば・・・・。アイスラントはそんなに了見の狭い子ではありませんよ。大丈夫です。貴方が何をしようと今のままの貴方ならきっとあの子は何をしても受け入れてくれると思うわ」
「そんな事は・・・・」
ありえないと口にしようとしたが、そうあって欲しいとの願いもあって、ローレライはそれ以上の言葉を口にしなかった。
「分かるものなのよ。母親って。不思議なものね。貴方もきっと何れ分かる時が来るわ。どうか二人で幸せになってね」
ザビーネはにっこり微笑むとそう言った。
“信じたい・・・・。そして二人で幸せに・・・・”
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ポール・ブリッツ様
本当に、もう少し自分に自信を持ってくれれば良いのですが、本当に思い込んだらドツボの性格なので、彼女を立ち直らせるのにいつもまた一苦労でした(笑)
恋は人を臆病にする典型的なタイプが正しくローレライだと思います(笑)
いつも有り難うございます^^
恋は人を臆病にする典型的なタイプが正しくローレライだと思います(笑)
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NoTitle
あなた考えすぎです(^^;)
「女房の妬くほど亭主もてもせず」という言葉もありますが、
「女房の泣くほど世の中悪くない」であります(^^)