パウリンの娘

パウリンの娘《第20章6》

 ←パウリンの娘《第20章5》 →パウリンの娘《第20章7》
皆がゼロとローレライの姿を微笑ましそうに眺める中、一人だけ恨めしそうに見つめる者がいた。
ブレイドだ。
ブレイドは独身の22歳。
公爵家の跡取りと言う事で縁談話に事欠かないが、成人した折父から託された『秘密の書』を見て以来のオルガゾーレ妃を理想の女性と称えてきた。
かなりの崇拝ぶりで、結婚するならば常々オルガゾーレ妃のような神秘な香りを漂わせる者が良いと希望していた。
だが公爵は、結婚とはそのような表面上の力云々で捉えてするものでは無い。如何に互いが広い心で相手を見つめ受け入れる事が出来るかが重要だと諭していた。
幸い自身、そう言う者と巡り合い、一男一女の子供にも恵まれ現在幸せな日常を過ごしていると自負している。
だが、貴族社会ではそう言う結婚ばかりではない。結局は家名を優先し、地位で政略的に婚姻を結ぶ事も多い。
最終的にはそのような手段もいた仕方無いとは思っていはいるが、できれば息子には前者のような者と出会えることを願っていた。
しかし探し始めて2年。息子を心から受け入れてくれそうな令嬢と巡り合う事もなくそろそろ理想だけを追い続けるのは限界かと思い始めていた。
息子は一つの事に囚われてしてしまうと周りが見えなくなるきらいがあるが、それ以外は素直な性格で、どちらかと言えば正義感も強い。
父としてはそう言う息子に畳み掛けるのではなく、諭せるような娘を希望していた。
己が認めた者へ対する忠誠心も固い。
後継ぎとしての将来への展望も、ゆくゆくはアイスラントを助け、良い関係を築いて行けるのではないかと期待している。

当のブレイドも何れは家の為に理想の者とまではいかなくても長子の責務として結婚をしなければならないと思ってはいた。
それでも中々理想を捨てきれず、良き相手との出会いを模索していた。
そこに今日記述に記されていたパウリンの娘が実際に存在していた事を知り、父に諫められてなお憧れは捨てきれずにいた。
そこに良く知る又従兄弟の親しげな態度はブレイドにとってあまりにも衝撃的で憤りを感じさせるには十分な材料だった。
自分は憧れを語るだけでも諫められたと言うのに、あいつは何故パウリンの娘にあのように親しげな態度を取っているのか?
遠く手の届かない者と思っていた憧れの存在が身近な者として今姿を現し、自分の目前にいる。
そうの上、又従兄弟とのあのような姿を見せつけられ、手を拱いている事さえ馬鹿馬鹿しく思えて来た。
あいつが許されるのならば自分も許される筈だ!
一気に感情が溢れ出して来るのを感じた。
そう思えて来るとアイスラントとの親しげな姿は憎悪としか思えなくなって来る。
たかが母をパウリンの後継者に持つだけであのような態度を取るとは、今までの女を突き放したような態度は一体何だったのか!?
尊敬していた又従兄弟に裏切られた思いだった。

「何処か別室をご用意しましょう。少しお休みになられた方が良いのではありませんか?」

「いえ。そのようなお気遣いは無用です」

「ですが、私の一言が原因なのに・・・・」

「いえ、本当に大丈夫ですから」

「本当に!?」

「はい」

最初何気なく交わしたかに思えたやり取りは、親しげなものとなり熱い視線へと変わって行く。
ゼロは只ならぬ胸騒ぎを覚え、瞬時にある事が頭を過った。

「・・・・お前・・・・まさか!!」

そう告げブレイドを見返すと、その瞳は攻撃的なものへと変貌を遂げていた。

「そうだ、父上。少し休憩しませんか? 私がお茶を入れて参ります。叔父上たちもそろそろお呼びしても差し支え無いのでは?」

間髪入れずに言葉を遮ろうとしたら今度は話を転じられてしまった。

「ああ、そうだな。呼びに行こう」

ゼロの嫌な予感は確信なものへと変わって行く。
ブレイドが先に出て行く姿を見送ると、次に出て行こうとする公爵を引き止めた。

「伯父上! お話しが!!」

ゼロは声を荒げずにはいられなかった。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第20章5》】へ
  • 【パウリンの娘《第20章7》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第20章5》】へ
  • 【パウリンの娘《第20章7》】へ