パウリンの娘

パウリンの娘《第20章8》

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園庭の脇にある温室は子供の頃の遊び場の一つだった。
この一角にあると言う調合場へ向かう為中へ入る。
扉を開けると伯父の趣味である新種のバラの香りが鼻を擽る。
更に奥へ進むとビニールで仕切られた別室が目に飛び込んだ。

「おい。そんな所で何をしている!」

思いも寄らぬ者の急な呼びかけにブレイドは調合中の匙を床に落とした。

「おっ、お前こそ何だ! ここは私の領域だ! お前に入室を許可した覚えはない!!」

かなり焦っている様子で、その事だけでもただのお茶を用意しているとは思えなかった。

「何故声を荒げる必要がある!? 唯のお茶の用意を覗かれた位でそのような態度を取ると不信をかわれても仕方ないぞ。だが・・・・私の知る紅茶やハーブティーの香りとも少し違うようだが!?」

「滋養強壮のジオウを少量混ぜただけだ。ジオウには血液を増す作用や血流の改善が期待できる。今のローレライ嬢には必要な成分だ」

ブレイドは自分のしている事が正しい事を宣言した。

「本当にそれだけか!?」

食い入るように鋭い目つきで見つめるアイスラントの瞳に思わず顔を背けそうになる。

ゼロはこの部屋へ入って来た時に過去に嗅いだ嫌な臭いを思い出した。
子供の頃に味わったあの苦汁の臭い・・・・。

「何を変な言いがかりを・・・・」

「まさかとは思うがセンナとか白桃花が入っていないだろうな!? 嘘をついても直ぐにバレルぞ!」

そう告げたと同時に現れたのはゼロと一緒に来た二人の姿だった。

「お呼びで!?」
「何事だ!?」

ハビロードとシザーレは揃って何かあった事を察知した。

「ああ、ハビ。今このポットに入れられている茶葉の種類が分かるか!?」

「はい、入った途端に漂っていた匂いはセンナ、白桃花、ジオウでしたが、他にも近づけば、シナモン、グローブ・・・・ガルダモン、ナツメグ、この瓶の液体は何でしょう!?」

ハビロードは聞かれた途端作業台に置かれてある瓶を手に取りどんどんその種を当てていき、最後に残された液体の入った一瓶を手に取った。

「あっ! それは!!」

「・・・・麝香です・・・・」

「それらから推察できる調合後の効能はなんだ!?」

「便意上昇、滋養強壮、・・・・媚薬効果でしょうか!? おそらく全てを一緒にするつもりは無かったのでしょう。ポットは二つ用意されていますし、全て一緒にしても殺傷能力はありませんが、既に調合されている方はこれだけ多量に配合されていては飲むと酷い腹痛に悩まされます。もう一方は病中病後でも効果的な飲み物になりそうですが、そこに麝香は必要ないでしょう」

「ちっ、違う! 私の開発した惚れ薬は・・・・」

ブレイドはハッとすると口元を自ら両手で塞いだ。

「惚れ薬等と言うのは世間で言う迷い事です。成分として媚薬効果のあるものを少量加える研究者もいるようですが、実際には成功した者はまだ誰もおりません」

ブレイドは自分と同等・・・・・いや、自分以上の薬学の知識を持つ目の前の男を凝視した。

「・・・・おまえ何者なんだ!?」

「少し調薬学に覚えのある元騎士です」

ハビロードは僅かに微笑みを浮かべながらそう告げた。

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