パウリンの娘

パウリンの娘《第21章8》

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ハビロードに続き応接室へと入って来た夫人は公爵を見るなり深々と頭を下げた。

「・・・・マリーカ・・・・」

公爵は何が起こったのか一瞬理解できなかった。
衝撃の事実を知らされた後で起こった出来事に、唯々目を白黒させて動揺を隠せずにいた。

「おじ様、すっかりご無沙汰してしまい申し訳ございませんでした。ご子息からおじ様が体調を崩されて私にお会いしたいと申しているとのお手紙を頂き、急ぎこの者に連れて来て頂いたのですが、お加減は如何でしょうか? ああ、お顔の色が幾分薄い気が致しますが・・・・」

驚きすぎて少しぐらい身体から血の気が引いていたかもしれない。
会いたいとは思っていたが、まさかそう思って直ぐに目の前に現れるとは夢にも思っていなかった。

「・・・・どうなっているのだ!?」

公爵は息子に問い正した。

「いえ、夫人にはどうしても来て頂かなければなりませんでしたので」

そう言いながらブレイドはハビロードの方を少しおどおどしながら見つめた。

「私がお願いしたのです。何を申してもロクにお話しもして頂けなかったものですから。申し訳ございません」

「いえ。私の指図です。全をお知りになれば伯父上が夫人とお会いしたいと思う事について疑いの余地はありませんでした。しかしこう言う事は時間を置いてしまうと要らぬ雑念を抱き中々素直になれないものです。手を拱いたままではお互いの溝は深くなるばかりです。何の期待も持たなかったと言えば嘘になってしまいますが、私はお二人を引き合わせたかった。その事も事実なのです」

ゼロは伯父にそう告げた。

「良かった・・・・」

マリーカ嬢は心底ホッとしたように大きく息をフッーっと、吐き出した。

「マリーカ!?」

「ご病気では無いのですね? 大事はないのですね!?」

「ああ。何ともない」

夫人は瞳を少しウルわせながらにっこり微笑んだ。

「怒ってはおられないのですか? 貴方は騙されたのですよ!?」

ブレイドが不思議そうに尋ねると夫人は大きく首を振った。

「理由はどうでも良いのです。私はずっとおじ様にお会いしたかった。でもこのような愚かな真似をしてしまった自分からお訪ねする勇気も無くて、あの日から疎遠になってしまいました。恩を痣で返すとは正しくこの事です。長年に亘る無作法をお許し下さい」

夫人は再び深々と頭を下げた。

「許すも何もない。私は今聞かされるまでお前の18年間を全く知らずに来た。男爵に連れ出され辛い日々を過ごしたであろう事も今聞いた。あの時気付くべきであった。お前があのような者を自分から受け入れる筈が無いのだ。それを私は気付いてやれなかった」

「もぅ、過ぎた事です。辛い時期もありましたが、エリナが・・・・・娘が生まれて、私の気持ちを分かってくれるようになってから、今はとても幸せなのです。あの子さえ、傍にいてくれれば私には辛い事なんて何もありません」

「エリナと言うのか!? 娘の名は・・・・」

「はい。申し訳ありません。勝手に付けてしまって・・・・」

「いや、嬉しいよ。こんなに嬉しいことは無い」

「おじ様・・・・」

マリーカの目には大粒の涙が溢れ、公爵の瞳も少し潤んでいた。
―――『エリナ』、それはグルバルト公爵夫人と同じ名だった。

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NoTitle 

ここまで読みました。先がきになります。面白いです。(^^)


それでなんですが、相互リンクしませんか?

よかったらですが……。

先にリンクしてしまいました。事後承諾ですみません(汗)

ポール・ブリッツ様 

先がきになり、おまけに面白いと言って頂けて嬉しい限りです^^

相互リンク大歓迎です♪

えっ、もぅ貼って頂けたんですか!?
有り難うございます^^
私も早速これから貼らせて頂きますね^^
今後とも宜しくお願いします^^/

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