パウリンの娘

パウリンの娘《第22章12》

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ローレライは急ぎ足で階段を降っていた。
とにかく今は時間も無いしゼロに会わなければと思い部屋へ向かおうとしたのだが、降りきる途中でハッとした。
自分はゼロの部屋が何処にあるのかを知らされていなかったのだ。
婚約したとは言え、初めて訪れた夫となる人の実家の屋敷。
それもこのような夜更けに誰かに部屋を訪ねる等と言う事はローレライには到底出来ない事だった。

「どうしたら良いのかしら・・・・」

ローレライは途方に暮れた。
結局、誰にも聞けずに部屋へ戻る事にした。

成す術も無く、ゼロに言われた通りとりあえず荷物を纏める事にした。
すると誰かが部屋をノックした。
一瞬もしかしてゼロが来てくれたのかとドキリッとしたが、次に聞こえて来た声は違う者だった。

「お嬢様、お夜食をお持ち致しました」

客室担当の侍女だった。

「え!? あの・・・・私頼んでいませんが!?」

「いえ。アイスラント様がグルバルトのお屋敷で、お嬢様が殆ど召し上がっておられなかったからお持ちするようにと・・・・」

侍女の手にするトレイの上には野菜とハムが挟まれた一口サイズで軽く食べられるサンドイッチと紅茶が添えられていた。

グルバルトのお屋敷であの後晩餐に誘われた。
夫人との長きに亘る絶縁関係を修復出来た公爵はとても嬉しそうで、ゼロの家族も昔話を懐かしんで場はとても和やかだった。
ローレライも相槌をうち、場を崩さないようにと気をつけたつもりではあったが、話の内容は蚊帳の外。ゼロとも少し気まずくて、気にかけてこちらから目を合わせようとはしなかった。
連れて行けないと言われた事もショックで食事は真面に喉を通っていなかった。
こちらの事など気にする素振りも見せていなかったのに、ゼロはしっかりローレライを見ていてくれたのだ。

「・・・・・」

「あの・・・・お嬢様!? どうされたのですか?」

「えっ!?」

侍女から心配そうにそう尋ねられハッとしたローレライの頬にはホロリと涙のしずくが伝っていた。

「いえ、何でも無いの」

ゼロの優しさが心に沁みた。

「・・・・あの、アイスラントは? もうお休みに!?」

涙を拭い、何も無かったかのように柔らかな笑顔を作ると侍女に尋ねた。

「いいえ。先程お食事を頼まれると、そのまま外套を纏われて外に行かれました。軽装でしたので、おそらくお庭か厩舎かと」

侍女の言葉を聞くや否やローレライはそのまま部屋を飛び出した。

「お嬢様! どちらに?」

慌てて外套を手に取り後を追う侍女は邸のエントランスに降りた所でローレライを見失った。

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