パウリンの娘

パウリンの娘《第22章13》

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厩舎には明かりが漏れており、誰かいるのは明らかだった。
そっと扉の隙間から中を伺うと、ジュリアスの背にブラシをかけるゼロの姿がそこにあった。
以前痛めた足には湿布も貼られてある。
その光景を見ただけで、ローレライは涙が零れそうになった。

「誰だ!?」

直ぐに人の気配を感じたゼロが厩舎の中から声を発した。

ローレライはおずおずとゼロの声に導かれ、厩舎の扉をそっと開いた。

「ローレライ・・・・」

ゼロは驚いたような眼差しでブラシを手にしたまま立ち竦んだ。

その声は怒っている様ではないけれど、温かみが感じられず、それがローレライには何処か冷たく感じた。

「あの・・・・お部屋の窓から厩舎の明かりが見えたから、誰かいるのかしらって・・・・」

「・・・・そうか・・・・」

言葉が繋がらない・・・・。

本当はローレライの部屋からは厩舎なんて見えない。
その事を知ってか知らずかゼロは軽くそう話を合わせると、再びジュリアスの背にブラシをかけ始めた。

近くにいるのにその距離はとても遠くに感じられて、とても寂しいと思った。
すると、今まできちんと思い出せなかったあの時のゼロの言葉が耳の奥から聞こえて来た。

『お前は私の気持ちを全く理解していない。パウリンの力等関係ない。パウリンを介してでなければお前との関係を私は築けないのか? 滑稽だな・・・・。とんだ茶番だ。期待していた己が愚かしい・・・・』

何処か打ちひしがれたようなゼロの言葉に、自分は今何が出来るのだろうと思った。

もぅ、見限られてしまったのかもしれない・・・・。
何を言ってもきちんと聞いてくれないかもしれない・・・・。
絶望的とも思える言葉に心が震えた。
ゼロはパウリンに囚われない関係を望んでくれていたのに・・・・。
自分は本当にゼロの事が何も見えていなかった。
全てが今更な事かもしれないが、それでも勇気を振り絞り言葉を口にしなければと思い直して呼吸を整えた。
しかし出て来た言葉はとても想いとはうらはらな何の変哲もない普通の言葉だった。

「あっ、あの・・・・お夜食を有難うございました」

「いや」

「見ていてくれたの?」

「ああ」

「あの・・・・」

「用が済んだのならさっさと部屋へ戻れ」

「・・・・」

素っ気ない言葉が、とても否定的に感じられた。

「風邪をひくぞ」

突っぱねた様に感じられた態度の中に労りの言葉が見え隠れし、胸が熱くなった。
ローレライは涙が出そうになるのをグッと抑え込むと、奥歯を噛みしめた。

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