パウリンの娘

パウリンの娘《第23章9》

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シドから頼みたいことがあると言われ、ルシオンはいそいそと喜んでついて行った。
デーン村での一件以来、シドを慕うようになっていたランドンにとってそれは勿論嬉しい事だが、何より今のランドンにとっては想い人の兄に気に入られたいと言う感情の方が強かったかもしれない。

シドの部屋の小さいテーブルに向い合せになって腰を下ろした。

「明日、ゼロ達と王宮へ赴く事はしっていると思うが、それに際してお前を見込んで頼みたいことがあるんだ」

見込んでと言われれば悪い気は勿論しない。

「任せて。何でも言って!」

ルシオンはニコニコ笑顔でシドに答えた。

その笑顔を見て、シドは一瞬心が痛んだ。ほんの一瞬だけなのだが・・・・。

「実は私の居ない間に妹に悪い虫がつかないか見張っていて貰いたいんだ」

「へっ!?」

随分と間の抜けた声だった。
かなり呆気に取られたらしい。

「実はこれはあいつも知らない内々の話なんだが、サンドラは父の元騎士仲間のとある侯爵の子息と婚約しているんだ。既に家同士の間では正式な書面も交わしてある。サンドラが17になったら正式に発表する話になっている。私が居る間は良かったが、騎士と言えども一介の男に過ぎん。他の奴が手を出さぬように見張っていてくれるか?」

「‥‥‥」

先程までの爛漫ぶりはすっかり影を落とし、呆然と佇むルシオンがそこに居た。

「おい。聞いているのか?」

「・・・・そいつ、どんな奴? 兄妹は? 普段は家の手伝いでもしてる奴?」

「いや、一人息子で今騎士として王宮に勤めている。ゆくゆくは辞めて後を継がなきゃならんがな」

「じゃあ、シドだけじゃなくフリードルも皆知ってる奴なんだ・・・・」

「あっ、ああ」

一瞬、フリードルの名が出てシドはドキリッとした。
こめかみからはツーっと汗が伝う。

「そいつ、良い奴?」

「ああ、人望も厚く、申し分ない」

「・・・・そう‥‥、でも、ゴメン。俺、今無理かも・・・・」

そう告げるとルシオンはゆっくりと立ち上がり、脱力気に部屋を出て行った。

“おい、大丈夫か?”

と、思わず声を掛けそうになったが、その言葉は飲み込んだ。
シドは何だか自分がかなり身勝手な事をしているような衝動に駆られた。

いや、駄目だ! 冷静に判断してみても、あのようにフラフラしている奴に妹は任せられない。
そう思いながらも何故か罪悪感を拭いきれない自分がそこに居た。


昨夜遅くに帰って来たハビロードとブレインを交えて明日に備え、皆で最後の計画を確認した。
後は明日を待つだけだ。
最近妹の事が気がかりで中々寝付けずに居たが、事が解決してスッキリしたはずなのにこの夜も中々寝付けないシザーレだった。

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