パウリンの娘

パウリンの娘《第24章3》

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サンドラが紅茶を注いでくれて、食堂で一緒に一息ついていた。

「美味しい! このスコーンとってもあっさりしてるのにサクサクでしっとりしてて、どうしたらこんな風になるの? 幾つでも食べられそう」

「それは、バターを香りづけ程度にしか使ってないから・・・・」

「それでどうしてこんなにしっとり?」

「ヨーグルトを使っているの。以前アイスラントに作った事があって、軽く食べて貰いたくてヨーグルトで代用してみたらとっても喜んでくれたものだから・・・・」

「へぇ~。こんなの喜んで食べる人だったんだ」

スコーンを手に取り眺めながらそう話すとマーマレードを塗りパクリと口に頬張る。
美味しいとニッコリ微笑んでくれるこの瞬間が作った者としては一番うれしい。

「以前は食べない人だったのかしら?」

「って言うか、まだ兄達が王宮勤めをしていた頃なんだけど、下の兄が騎士見習いに入るからって父に連れられて一緒に見学に行ったことがあるの。その頃兄は宿舎を仮住まいしていてあまり帰って来なかったから好きだったマフィンとスコーンを焼いて差し入れに持って行ったの。結構皆に好評だったんだけど、アイスラント様にぞうぞって言ったら途端に『いらん』の一言で返され事があるの。兄からは何時もの事だから気にするなって言われたたんだけど、仏頂面で掴めない人だった。たけど、ここに来たらまるで印象が違うじゃない。婚約したって聞いて成る程って思ったわ」

確かにそうだ。掴めない人。出会った頃はそう感じた事も多々あった。今でもそう感じる面はあるけれど、自分はゼロの・・・・アイスラントが本当はとても細やかな優しさを持ている人だと言う事を知っている。
しかし、思い返してみれば、確かにゼロは公けの御茶の席では食べ物は殆ど口にしない。
でも、ローレライが作ったものはいつも美味しいと言って食べてくれるのだ。
ローレライにはその事の方が気になった。

「もしかして、気を使ってくれていたのかしら・・・・」

「何が!?」

「アイスラント、他ではあまりこう言う物は口にしないの」

ローレライが、あまりにも神妙な顔つきで言い出すものだからサンドラは可笑しくなってしまった。

「ないない。気を使ってくれているなら私のも一つ位は食べてくれても良かったじゃない」

ケラケラ笑ってそう言ってくれた。

「では、どうして!?」

「それは婚約者の成せる業ね。愛の力に決まってるじゃない。見てれば分かるわ。貴族同士の結婚って家同士で決められる事が大半だけど貴方たちは違うでしょ? 二人の別れ際の抱擁はまるで『マグノリアの乙女』の行を彷彿とさせたわ。私だって親に決められる結婚なんて真っ平御免だもの。色々言う人は居るだろうけど、幸いうちはそんな良い所の出では無いし、そうまで煩くは無いと思うの。いつかお互いに認め合える方に出会えれば貴族でも平民でも私は関係ないわ。私にも誰か素敵な人現れないかしら」

夢見る乙女のサンドラは瞳をキラキラ輝かせていた。

今朝、ゼロから兄が今置かれている事情を聞いた。
とてもびっくりしたけれど、サンドラの様子から見て今の所、兄はその対象とはなっていない様だ。
兄は知らされたサンドラの婚約者の地位と人となりにかなり落ち込んでいたとの話だったが、今のこのサンドラの話を聞いたら何と思うだろうか!?
サンドラは地位や爵位に拘る様な娘では無いのだ。
ローレライもゼロが公爵家の跡取りだとか、パウリンが選んだからで好きになった訳では無い。
ゼロが自分の気持ちを一番理解してくれて、傍に居たいと心が叫んだから今傍に居るのだ。
パウリンが選んだ時よりもゼロに対する想いは、より強いものになっていて、自分でもその先が見えず怖い程だ。
だから今ならハッキリ言える。
例えあの時、パウリンがゼロを選ばなかったとしても自分はきっとゼロを諦めることなど出来はしなかったと・・・・。
己の運命に囚われるのではなく、きっと立ち向かおう抗おうとした筈だ。
そして、新王を導く為の協力はしても、自分は新王の婚約者にはなれないと何れ答えを導き出したかもしれない。
ゼロは自分にとって永遠に不変なる人物なのだから・・・・。

サンドラのような人と義姉妹となれたらきっと楽しいだろうとは思ったが、これは本人達の問題だ。
縁があればいつかきっと、運命が味方してくれるはず。
自分とゼロがそうであったように。

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