パウリンの娘

パウリンの娘《第24章4》

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大よそ2年振りとなる城内は、民の生活が年々貧困に陥っていると言うのに、回廊の装飾品が一段と煌びやかなものになっていた。
国庫が破たんして直、何処からこの様な資金が調達出来るのか?
何処からか借りているのは明らかだ。

自分に課せられた使命を思えば一段と気が重くなる。
ため息交じりでシドに目配せすれば、奴にもそれは伝わったのか苦笑いした。
先ずは予定道理の交渉を熟してそれからだ。

「では、こちらでお待ちください」

そう言われて踏み入れたその場所は、現在通常外交の契約時にも使われていると言う王の政務室。
新たに改装されたと言うその場所は、初めて踏み入れたが正しく応接室と呼んだ方が良いのではないかと思われるものだった。
天井には豪華なシャンデリア。細かい木彫りに宝石を埋め込んだ政務用の机の前には真紅の絨毯が数メートル敷かれており、まるで小さな玉座の前に政務用の机は装飾品の一部として置いているようにさえ見える。
交渉用に用意されたテーブルは赤い絨毯の上に置かれており20人掛けの大掛かりなもので、まるで応接セットだった。
これまた彫の入った煌びやかな椅子にお座り下さいと言われたが、とても落ち着けるものでは無かった。
このような場所で真面な外交交渉が出来よう筈もない。

「ここは何だ!?」

「はい!? 王の政務室でございますが・・・・」

案内してくれた政務官マノン伯にそう告げられたが、とても正気の沙汰とは思えなかった。

「このような場所で落ち着いて王は政務が出来るのか? 凡人には考えが及ばないな」

「こうでないと落ち着かないそうでございます」

「政務官の部屋も似た様なものなのか!?」

「いえ、改装して頂けるとの事でしたが、遠慮させて頂きました」

「家臣としては良識のある判断だな」

「恐れいります」

ゼロがまだ城勤めをしていた頃、マノン伯は財務秘書をしていた。
国政がどのような状況かを良く理解し知っている数少ない人物だ。
まだこのような人物が城に残っている事に少し何処か安心を覚える。
それにしても、この馬鹿げた部屋だけはどうにかして貰いたいものだとゼロは心底思った。

程なくして王が来られた様ですと知らせがあり、全員起立して王を迎えた。
宝石をあしらった重厚な作りの豪華なマントに幾多の勲章を胸に着け誇らしげにサザーランド国王ザラドールが入って来る。
続いてこれまた王とお揃いかと思わせる煌びやかなドレスに身を包んだ皇太后が入場し、その傍らに居るのは懐かしい元騎士団長のオーラル殿だ。
現在は最高司令官として王宮全体の軍を統率する立場にあるらしい。
ゼロは思わず王で無く恩師オーラル殿に頭を下げたくなった。

「久しぶりだなアイスラント」

「はい。陛下にはご機嫌麗しく存じます」

「うむ。今日は式典では無い。皆も顔を上げて座ってくれ。書類は既に整っておるから後はサインしてくれればいい。マノン伯」

「はい。王様」

マノン伯はとても申し訳なさ気な表情を浮かべつつ、アイスラントの前に書類を置いた。
書類を手に取りざっと読んでいるアイスラントの表情が4枚目を捲った途端制止した。

“何だ? この賃貸料と言うのは!?”

王室御用達と言うだけで売上の70%貰い受けると言うのは・・・・。
ゼロの呆れ返った表情に、書類を取り上げた隣に居たシドはそれを見るなり破り捨てた!

「なっ何をするのだ! お前は・・・・何と言ったか・・・・」

「陛下、シザーレでございます」

最高司令官が口添えをする。

「シザーレ! この不届き者が!! そこになおれ!!」

王の声が政務室に響き渡り、マノン伯は今にも卒倒しそうな形相で固まった。


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