パウリンの娘

パウリンの娘《第24章7》

 ←パウリンの娘《第24章6》 →パウリンの娘《第24章8》
それは、そうだろう。ずっと気に留めていた侍女の所在を知っていたはずの母が自分を偽り、嘘をつき隠し続けて来たのだから。

「それは、子供には話せないでしょう。口封じの為に当時下心のあった野心家の男爵に話を持ちかけ元侍女を誘拐させ凌辱させた上に孕ませ妻に娶らせた等とはねぇ」

シザーレは口にするのが躊躇される事柄をいとも簡単にサラリと口にした。
真実を知らなかったものは皆驚きを隠せない。
王も呆然と佇んでいるが、一番確かな反応を見せたのはオーラル殿だった。

「皇太后様が犯罪の後ろ盾を!?」

怪訝な表情で頭を抱えている。

「そのような事、私は存じません!! 言いがかりです!!」

勿論知らぬと言うだろう。

「証拠はあるのか!?」

オーラル殿の言葉に反応しハビロードに目を向けるとこちらに向けて目配せをする。
頷くと、ハビロードは己の懐にスッと手を差し入れると、麻布で包まれたものをオーラル殿に差し出した。

「男爵が後生大事に保管して下さっておりました証拠の品です。男爵夫人が見つけて下さり提供して下さいました」

手に取りオーラル殿が麻布の紐に手を掛けた時だった。

「それは、罠です! そのような手紙など私は知りません!!」

紐が解かれると中から手紙が出て来た。
最高司令官はその文書に目を通すと、皇太后を見下す様にキッと睨みつけた。

「なっ、何ですか! その目は!! 衛兵!この者をッ」
「皇太后を拘束しろ!!」

皇太后の言葉を遮りオーラルが先に決定的な一言を口にした。

「なっ、何を申しているのですか、オーラル!! このような者の戯言を貴方は信じるのですか!? それにお前は今回警護に付けただけの身ですよ! 放しなさい!! そのお前がこのような狼藉を働いて、たたでは済みませんよ。あなたの権限は全て没収します!!」

「現王朝において、皇太后にそのような決定権はございません。このような立件に結びつく自供を耳にした場合、最終決定権は我が配下の一つである警務部に属します。貴方はその長たる私の前で言わば自供された状況なのです。ハビロードは証拠の品としか言っておりません。麻袋の中身が手紙であると言う事を知る者は、この証拠の品を目にした事がある者と、当事者のみです!」

キッパリと言われて気付いた皇太后は咄嗟にハッとし、両手で口を覆うが時は既に遅い。

「他の者の前ならいざ知らず、皇太后であろうと王であろうと私は目の前で暴かれた罪を無きものと葬る事は出来ませぬ!!」

おそらく、皇太后が今まで自分の目を掻い潜って幾つもの罪を逃れているであろう事をオーラル殿は気付いていた。
しかし普通、最高司令官の元には事件の事後報告が大半で、事件そのものの経過報告はされない。
以前、騎士団長として実戦指揮を全て任されていたオーラル殿にとって、権限があっても自らが動けないと言うこの状況は、肩書ばかりが重く圧し掛かり随分口惜しい思いをされて来たであろう事を想像させた。
それは元来オーラル殿の性分にはそぐわない。
そのような役職を何故受け入れる事になったのかは知る術はないが、皇太后に詰め寄り一撃を食らわせたこの状況に、今オーラル殿の瞳はとても輝いて見えた。

強固な意志で皇太后に対して正論を述べる恩師であるオーラル殿の姿を、ただオロオロするばかりの我王を他所に元騎士である面々は誇らしく見つめた。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第24章6》】へ
  • 【パウリンの娘《第24章8》】へ

~ Comment ~

時代劇を思い出してしまった(^^;) 

「やかましい! 闇奉行のおれには証拠なんざいらねえんだ! たたっ斬る!」

……アイスラントさんたちは証拠があってよかったです(^^)

ポール・ブリッツ様 

証拠、作らないと話が進まないので、これはかなり悩みました。
色々エピソードの中から拾い出してみたり。
皇太后は中々口を割らないだろうし・・・・結局ハメて証拠OK状態にしました^^;

何とか証拠として成立で来て良かったです^^

いつも有り難うございます^^
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第24章6》】へ
  • 【パウリンの娘《第24章8》】へ