パウリンの娘

パウリンの娘《第24章10》

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フリードルは仲間との剣の鍛錬の後、ルシオンの部屋を訪れていた。
何かあるといつも塞ぎ込んでベッドに潜り込み蹲っていると言うのがルシオンの子供の頃からの姿だ。
今回もきっとそうなっているに違いないと思っていたフリードルは、部屋をノックして声を掛けた時の反応に少々驚いた。

「開いてるよ」

そっと扉を開けると、机に額づいて何やら調べ物をしている様子のルシオンがそこに居た。
思いがけない姿に、少し呆気に取られた。

「・・・・食事も取らずに、ずっと何しているんだ?」

「うん、とりあえずこれ覚えないと話にならないと思って」

ルシオンの手にしているのは『バスタードソードの極意』と言う本だった。
その隣には『ロングソードと共に』『ブロードソード ~入門編~』と言った本も積み重ねてある。
それにしてもこの様な本を何処で手に入れたのか?
ランドンにでも頼んでいたのだろうか!?

「お前、ホントにこれを全部覚える気なのか?」

「勿論。とりあえず少しでもシドに認めてもらうにはそれしかないじゃん」

やはり、こいつは本気なのだと思った。

「覚えるだけでは何もならないぞ。基礎体力もつけなくてはならないし、バスターソード(大剣)なんて絶対にお前の体格で使いこなせない。私にも無理だ」

「そうなのか?」

「そうだ」

無知だからこそ手を出してみようと言う気にもなるのだろうが、本を読んでいるなら無理だと気付いても良さそうなのにと少し思ったがその事は敢て口にはしなかった。

「・・・・分かった」

「えっ!?」

「お前の本気は理解したから、読破してある程度頭に入ったら私の所に来い。ブロードソードなら使い方を教えてやる。ロングソードは長いし重いし今のお前には無理だ。最初は短くて軽いブロードソードがお前には使いやすいと思う。本来片手で使う剣だが無理なら両手で使えばいい」

本来騎士が主に使用している剣は長さ90センチ程のロングソードだが、ブラックナイトの面々は腰に2本の剣を下げている者が多い。
片手使いの可能なブロードソードも多くの者が用いている。
ロングソードより30センチも短く片手で容易に使い熟せる。
窃盗など事件性を匂わせる護衛任務には顧客を守りながら戦える為打ってつけなのだ。

「ホントに!?」

「ああ。その代わり食事位は顔を出せ。ローレライも心配している」

「フリードル恩にきる! 分かった。絶対に食事には顔を出すから!」

ルシオンはフリードルの右手を両手で掴み、勢いよくブンブンと振りまくる。
ニッコリ微笑むその姿にフリードルは、やはりルシオンが笑っていないのは寂しいと思った。

その日の夕食にはルシオンも姿を見せ、フリードルと楽しそうに談話する姿にローレライは胸を撫で下ろした。

「いいのか? サンドラの事は」

「うん。気になるけど、ここでそっと見守ってる。今の俺にはその資格が無いから。少しはシドにも認めて貰えるようにならなきゃ。とりあえずサンドラが17になるまでに少しは使えるようになりたいし」

サンドラが17になったら公けにするとシドが宣言していた事が、ルシオンにはずっと気になっていた。

「そうか」

子供の頃からのルシオンを知っているからこそ自分には分かる。
今までのルシオンとは明らかに違う。
思い込みの激しさで何にでも突っ走る所は幼き頃のまま、今もそう変わりは無いと思うが、今までとは向き合う姿勢がまるで違っている。
以前のように浮足立った様子を今は感じられない。
ルシオンを本当の意味で伯爵家の後継者に相応しい人間にしてくれるのは、もしかしたらサンドラなのかもしれないと何処かで捉えている自分がいた。
今サンドラがルシオンに特別な感情を抱いてはいないにしても、悪くは思っていない筈だ。
シドには悪いがルシオンを応援してやろうとフリードルはこの時決意した。

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~ Comment ~

NoTitle 

エリナちゃんいい娘ですね(^^)

ルシオンさんは武術だなんだという前に基礎体力をつけたほうがいいような(^^;)

また来ます~(^^)

ポール・ブリッツ様 

エリナに関しては実はもっと小悪魔的な心を持つシーンを1つ作ってたんですが、結局それ入れてしまうと横道逸れちゃうので泣く泣くカットしました。(やってしまって後悔するみたいな場面)

実はエリナに関しては後日の設定も実はあったりします。
今の所番外編として書く気はないのですが、機会があったらその内少し出て来るかもしれません。

ルシオンは身の程知らずです。でも、本気でやり始めたら突っ走るタイプなので、これで彼の本気の程をお分かり頂ければと思います。

再び有り難うございました^^
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