パウリンの娘

パウリンの娘《第25章3》

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やはり、全ては皇太后か。
おそらくは周囲の者が噂する件が王の耳に入らぬように、例え入っても疑念を抱かぬように偽の肖像画を作り上げたのだろう。

「畏れながら私の調べました所、初代サランドル王からなる王家の家系、そして皇太后様の家系を辿りましても、国内では珍しい赤みがかった深い緑色の瞳を持つ者はおりません。その瞳の色はこの国には本来無い特有なものなのです。ある一定の小さな村を除いては外国その村の出身縁者にしか存在致しません」

デーン村が国内では王の持つ瞳の色の発端地となっており村の起源が他国から来た者によって創られた事、そこの出身者が30年前に唯一の信者として入信した事、その者と皇太后が予てから面識があり神殿内で再会し親密であった事、そして、最近長年神官長の側近を務めていたウィレム・サイナーが隠居し後任として息子であるその者が側近に位置する者になり、王と同じ瞳を持つ者である事を告げた。

「・・・・そっ、そのような事は、私の知った事では無い!!」

理解しえない事柄は拒否をする。
これはアイスラントが仕えていた時と基本的には変わらぬ姿勢だった。
以前と違う点と言えば、強気な態度を取ってはいるが、明らかに狼狽しているのが手に取るように伺える事だ。
いつも傍らに居る筈の皇太后が居ないだけで、これ程までに威厳を欠く滑稽じみた振る舞いになってしまうものなのか。
漠然とそう感じ目を向けると、机に置かれた手はブルブルと震えていた。
信じる信じないは別として、告白された事に多少なりとも疑念を抱き始めれば、それは当然の反応だろう。
当初、ここで両断される事も視野に入れ準備もして来たが、皇太后が傍に居ないお蔭で王はそこまで強気な態度を取れずにいる。
追い打ちをかけるのに、この機を逃す訳には行かなかった。

「男爵夫人」

アイスラントはグローバル男爵夫人に合図を送った。
王の様子を見て絆されたのか、一瞬躊躇する様子を見せた夫人であったが、隣に座っているハビロードにも再度後押しされると重い口を開いた。

「・・・・あのお方が・・・・その、ウィレム・サイナー氏の御子息と言う事を私は存じませんが、皇太后様が前王様とのご婚約中に下の者と神殿で再会し、好意を寄せ合っておられたのは事実です。・・・・しかし、皇太后様は当時、許されぬ想いだと自らを断ち切ろうとされておりました。ですから、まさか私も許されぬ領域に足を踏み込まれるとは思っても見なかったのです・・・・。私さえもっとしっかりしていれば、この様な事態には・・・・」

「‥‥‥」

王は無言のまま、立ち竦んだ。
幼き頃から慕っていた侍女の口から告げられた真実は王に余程の衝撃を与えた様だった。
逃げ出すのかと思ったが、無言のまま何の言葉を発する事もせずにただ茫然と立ち竦む。皆、急がすでもなく王の言葉を無言のままじっと待った。

静寂に包まれ、シーンと静まり返った室内の中でアイスラントは思う。
そうだ、確かにそうであれば我王と言う存在は生を受ける事無く、おそらく王弟殿下であるザンゾール公が後を継いた。
そうであれば自分がこのように煩わしい立場に立たされることも無かった。
しかし、そうであれば、あのライサンドが跡取りの王子か!? その話も頷けない。
どちらにせよ遅かれ早かれ自分は同じような場に引きずり出される運命にはあるのか!?
だとすれば、ローレライに出会えた分だけ今起きている現状の方が自分にとっては遥かにマシなのかもしれない。
漠然とそのような事を考えていた。

“このような場においてもあいつの事が頭から離れないとは、既に末期だな”

自然と苦笑いが零れた。

誰も何の言葉を発する事が出来ずにいたが、各々は何を思っているのだろうか!? 等と考えている時だった。
そこに何処からともなく笑い声が聞こえて来た。

(ククッ、フッフフフフ)

背中にゾ~ッと悪寒が走る。

王はすぐさまオーラルの腕をガシッと掴んで固まってしまった。
ハビロードは男爵夫人の前にスッ立ち防御態勢をとる。
他の者は戸惑いつつも、その声を無視する事も出来ずにゆっくり後ろを振り向いた。

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