パウリンの娘

パウリンの娘《第25章4》

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押さえていたように感じられた笑い声がやがて判別できるものへと変わって行った。

“まさか!! ・・・・いや、しかし、有り得ない・・・・”

思い描いた人物を一度は打ち消すが、その声が聞こえて来るただ一点を見つめ続けていると、それは確信なものへと変わって行った。

(フフッ、ア~ッハッハッハハ、ククッ)

聞こえてくる高らかな笑い声に苛立ちを覚えた。
扉が開けられ目にしたのは、やはり想像通りの人物だった。

「で、何!? だから退位せよとでも言いたいの!? フッフッ、アッハハハッ!」

笑い声は止まらない。

「皇太后・・・・様・・・・」
「母・・・・上・・・・」

先ほど捉えられた筈の者がそこに居た。

「どうしたの!? そのように驚いた顔をして。ああ、私は貴方に捉えられたのだったわね。でもね、私には至る所に味方がいるの。貴方が何を言おうと何をしようと私を拘束する事は出来ないわ」

ふっ、ふふん。と鼻先で笑って見下した。

「・・・・世も末だな・・・・。王宮に仕える者が、ここまで衰退しているとは思いもしなかった・・・・」

己を戒めるような脱力感を伴う恩師の声にアイスラントの胸は痛んだ。

「ザラゾール! 貴方は何をしているの!? 母が捕らえられたと言うのに助けもせず、このような輩の話を真に受け堕落したもののような醜態をさらして。ああ、情けない! 王の威厳も何もあったものでは無いわ。この母がいないとホントに何も出来ないのね!!」

吐き捨てるようにそう告げた。

「・・・・申し訳ありません・・・・しかし、それが真実ならば私は・・・・」

狼狽する息子の嘆かわしい態度に横暴な態度は更に増していく。

「真実ですって!? 笑ってしまうわ。貴方は前王が世継ぎと決めたなるべくしてなった正当な王なのですよ。何の問題も無いわ。そうよねマリーカ」

「・・・・はい。前王様はご自分の御子としてお育てになると・・・・」

「“はい”だけで良いの!! また余計な事を!!」

吐き捨てるように告げ、チッと下賤な者のように舌打ちをすると、更に苛立ちを募らせた。

「しっかりしなさいザラゾール!! 王家の血筋なんて言っても今は所詮一介の貴族に過ぎません。何の権限も持たぬような者に何を言われようと現王たる貴方の足元にも及ばないわ。貴方は王として毅然たる態度で構えていればいいのです!!」

男爵夫人の言葉に、更なる不安が増して行き、王が明らかに平静を保てなくなっている事に気付くと皇太后が、それを両断し、王を奮い立たせる。

「・・・・私は、王だ・・・・。私が王なのだ・・・・。私は、母の期待を裏切らない王にならなければならないのだ!!」

王のその言葉はアイスラントに新たなる想いを抱かせるのに十分なものだった。
おそらく、王は幼少期から皇太后にずっとコントロールされ、そう言われて来たのだろう。
皇太后の意向のまま国を動かせば自分は苦も無く玉座に就ける。
だから任せるようにと子供の頃は言われたのかもしれないが、成人してからも己の意志を全く持たぬような者に国を今まで任せていたと言うのは驚きだった。
ただ母の為だけに成人してからも国を操って来ていたのかと思うと情けないと言う感情すら最早湧いてこない。
己の中に王家の血を感じる事は今まで無かったが、ここまで他者に今まで祖先が堅く守って来たものを蔑にされて来た事に初めて憤りを覚えた。
この様な者に国を私物化させる為に祖先は身を切る思いで国を守って来たのではない筈だ!
王家の血を受ける者の一人として、このような者に今まで玉座を握らせていた事を思うと国民に申し訳ないと心底思えて来た。

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