パウリンの娘

パウリンの娘《第25章7》

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その言葉に一番反応したのはサビエルだった。

「奇襲が!?」

「・・・・このまま大人しくはしていないだろうとは私も思っていたが・・・・夜襲か!? しかし、そこまでするか?」

シザーレがそう告げればハビロード、ブレインも納得している様だった。

「まだ私が騎士として名を受けたばかりの頃だ。外交に訪れたヴィグナスの者と皇太后が諍い事を起こした事があった。このままでは埒が明かないと言う事になり、冷静を保つ為にその日はお泊り頂いて、話しは翌日へ持ち越そうと言う事になった。だが、怒りを鎮める事の出来なかった皇太后はべイズを呼び出し夜襲をかけてしまった。事に気付いたオーラル殿が寸前の所でべイズを押さえ事なきを得たが、あわや諸外国と戦になっていたかもしれぬ未遂事件だ。命を助けられたヴィグナスの者はお礼にとオーラル殿に愛用していたこの銀時計を送った。これはその事を示唆している。そして現時点で何かあるとすれば指揮をとるのはおそらく、あのベイズだ」

「あの男か!!」

ナニアート・ベイズ。
アイスラントが騎士副団長だった際、正騎士団団長だった男だ。
地位的にはアイスラントの直ぐ下で、シザーレの直属の上司であった。
剣術もそれなりに出来るが策略術に長けており、そちらの面ではシザーレのもぅ一人の師と言っても過言では無い。
だが、腹黒く金を積まれて裏に手を回し犯罪スレスレの行為にも幾度も手を染めて来た。
そう言う姿勢は代々騎士の家に生まれ育ったシザーレとはそりが合わず、度々衝突が絶えなかった。
依頼主が王と皇太后となれば大手を振って難なく夜襲位かけるだろう。
あの皇太后の様子から見て、到底素直に明日緊急議会に訪れるとは思えず、だとすればオーラル殿の読みはおそらく間違えは無いだろう。

「とは言え、そう大掛かりなものは起こせないだろう。マノン伯は先程宣言した直後に側近を呼んで既に緊急議会招集の件を各官僚に向けて知らせるようにと通達していた。奴らが先手を打てなかった事が吉と出るか凶と出るか。だが、明日の議会で我々が有利に事を運ぶのだけは何としても避けたい。となれば手段は一つ。夜襲は一番外部の者に悟られない深夜、それも数時間限定だろう」

「では、この東館は完全封鎖だろうな」

「と、なると信用のおける者のみの少数気鋭だな。ベイズと同類等とは関わりたくないな」

「それで夜明け前には全てを撤収して何事も無かったように振る舞うつもりなのか? 呆れ返るな。と、なると一番危ないのは男爵夫人か」

「お前たちもだぞ。そして現時点で一番安全なのは私だ。私が出なければ明日の議会は始まらない。その時点で怪しまれるからな。だが勢力は削ぎたい。ならば余計な事を喋らせない為にお前らを拘束して私を牽制する。そして、その後は私が矢面に立たされる番だ」

「そう易々と捕まえられると思われているとすれば、心外だな!」

シザーレの言葉に皆が頷いた。

「・・・・私は、まだ皆様の足元にも及ばぬ若輩者ですが足手まといにだけはなりたくありません! 足手まといになる位ならばこの命を捧げても悔いはありません!!」

流石はフリードルの一番弟子だ。肝が据わっている。だが、まだ尻が青いな。
シザーレは期待を込めて微笑んだ。

「良く言った!! だが、まぁ私でも今の状況でパリス殿に攻め入られてはお手上げだ。攻略手段は一緒に考えよう」

シザーレがサビエルの頭をクシャクシャと撫ぜながら、“罠は私に任せろ”とそっと告げた。

「では、見張りは私が変わります。ランドンには伝令の者に接触して貰いましょう。彼なら馬車の清掃なり、馬の世話なり幾らでも理由を付けて容易に内苑までなら出られます。とりあえず外苑で待機させて、エルならこちらの様子で如何様にでも動いてくれるでしょうから」

ハビロードは予てから男爵夫人を守ると約束している。
ここは言う通り奴に任せるのが適任だろう。

「武器は各々で確保しろ。とりあえず心を静めて時を待て。寝たふりでも何でも良い。無防備な所を襲わせてやり込めろ。決っしてこちらから先に手は出すな。あくまで応戦していると言う形を最初は取れ。それと、殺すなよ。状況によっては証人として願え出る者も出て来るかもしれん」

剣は城に入って直ぐに預けさせられた。
既に正式な騎士の名を持たぬ者達には不要な物として、持ち込みは堅く禁じられた。

「何だか、お前サラリと凄く難しい事を言っているのを分かっているのか!?」

シザーレが苦笑いする。
雑魚だったら良いがベイズクラスが最初の相手では剣を奪う事など出来ないだろう。
剣を手にしたうえで本気で戦わなければこちらの身が危うい。

「勿論。それが出来る奴らだから連れて来た」

「では、その期待には応えんとな」

ブレインが苦笑いを浮かべながら頷くと同感とばかりに皆で拳を合わせた。

運命の時は刻々と近づいていた。

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