パウリンの娘

パウリンの娘《第25章8》

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ランドンは内苑へ出ると、城内の高みの塔周辺の警護をしていると言うアイスラントより聞いた風貌の者を見つけた。
茶褐色の長髪を背中の辺りで結んでいる。この男だ。間違えない!!

「ナニヤード殿ですか!?」

「そうだ」

「ゼロ様よりの伝言です。今夜奇襲があります。エル様に伝言を。時が来るまで外苑で待てと」

「了解した」

そう告げると男はランドンに何の疑いを持たずに塔の中へと入って行った。
暫く隠れて様子を伺っていると、程なくして帰り支度をしたその者が現れた。
同僚からは気遣う言葉がかけられている。
どうやら今日はずっと調子が悪いと漏らしていたらしく、何時でも連絡を受ければ直ぐにでも仮病を使って早退できるように画策していたらしい。
その姿を見てホッと胸を撫ぜ下ろすランドンの姿に気付いたのか、こちらに目線を向けるとクスリッと笑って去って行った。
この緊迫した状況でのその余裕は何処から生まれものなのだろうか!?
自分にはとても真似できないと思った。

城内に戻るとランドンはその足で状況を報告すべくアイスラントの部屋へ向かった。

「城に上がって以来、今まで自らの都合で休む等と一度も口にした事のない者が体調不良で最悪の場合は早退させてくれと今日の警護に就く前に申し出ていたのであれば、誰も文句は言わんだろう」

部屋に居たシザーレがそう告げた。

「それも、シザーレ殿の計画ですか!?」

「私はただ、何時でも城を抜け出せる手筈を整えておけと言ったまでだ。後はアイツが勝手に考えた事だ」

当然だと言うような口ぶりだ。

「我々は同じ目的を持つからと言って誰でも仲間にしている訳では無い。己の欲に溺れるような事が無いか、その者が信用に足る者か。言われた事に対して自ら考え行動を起こせぬ者や、利益を求めるような者には決して協力を求めない」

確かに今までランドンが接触したどのブラックナイトの面々も、人として信頼できる立派な人物ばかりだった。
城内に居る仲間と呼ぶ者達が今回の件について何処までを知り得ているかは不明だが、おそらく今後アイスラント様の糧になり得る人材だと言う事は間違いないだろう。
あのナニヤードと言う者がどれ程の経歴を持つ者か伺い知る事は出来ないが、悪い印象は全く無かった。
今はただ、出来るだけ早くフリードル様に無事接触出来る事を祈るばかりだった。


アイスラントは夕食の後、皆を自室に戻すと部屋の中にとりあえず武器や仕掛けが作れるものが無いかと辺りを見渡した。
窓辺にかけてあるレースのカーテンは使える!
細くて頑丈な素材は端を解けば繊維数本で仕掛けが作れる。
抜いた繊維を扉の蝶番の下の部分、棚や椅子の低い位置に結びつけると簡易トラップの完成だ。
子供騙しだが夜目で行き成り入って来ては直ぐには気付けないだろう。
更に残りのカーテンは裂いて括れば頑丈な縄として代用できる。
暖炉の脇に置かれてある火かき棒は武器としても十分使える。
一通りの作業を終えるとアイスラントはベッドにそれらを忍ばせた。
横になり、ランプの明かりを落すと耳を欹てそっと目を閉じた。

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