パウリンの娘

パウリンの娘《第25章12》

 ←パウリンの娘《第25章11》 →パウリンの娘《第25章13》
ローレライは鼻を啜りながらも顔を上げると涙を拭い、気丈に振る舞おうとグッと奥歯を噛みしめた。
そして、途切れ途切れに自分がパウリンで覘いた事をフリードルに話し始めた。

「・・・・それは間違い無く王宮だな。そのゼロ様の戦っている石造りの廊下は恐らく東殿だ。多くの者が居るのは大広間だな。大体で良い、時間は分かるか!?」

「・・・・分らない・・・・。でも、夜よ。廊下には松明を掲げられてあったし、剣を交えている背景は間違いなく夜だった。でも、月が出ていなかったから今日では無いってなのかしら!? ザビーネ様の居た部屋には松明も掲げられていなかった」

「いや、恐らく今夜の筈だ。月が出ていないと言う事は時間の目安になるな。月の動きに注意が必要だ。今夜は月が隠れる」

「隠れるの!?」

ローレライは息を飲んだ。
“月が隠れる時悪しき者が空から舞い降りる”と言う伝説がこの国にはあった。
また、月に左右されるの!?
月が隠れた日。その日にローレライはパウリンを手に生まれ、人とは違う運命を歩む事になった。
両親は可愛い娘を授かった日が悪しき日である筈が無いとずっとこの伝説を信じていなかった。
ローレライも、今まで唯の伝説と思って来たし、その後も月が隠れたからと言って自身に何かが降りかかると言う悪しき事は何も起こっていない。
外国では月が弱っているから助けてあげないといけないと祈りを捧げる国もあると言う。
全ては伝説であって実際に何があると言う訳では無いが、月が隠れると聞くとどうしても更なる不安が拭えなかった。

ローレライの不安気な表情にフリードルはまた何か消極的に捉えているのだと察知した。

「知っている? 戦場では、月が隠れたお蔭で勝利を得る事もあるんだよ」

「えっ!?」

「月が隠れる時を事前に知っている者はほんの数分だけだけれど相手の目を削ぐ事ができる。闇を利用する事が出来るんだ。月が隠れる事を好機と捉える考え方を最初に教えたのはオーラルと言う御仁だ。ブラックナイトの面々の多くは、そのオーラル殿の流れを汲む者を師と仰いでいる。今夜の月を良き事と捉える者と月が隠れて戸惑う者とでは、どちらが戦況を有利に導けると思う!?」

ローレライはハッとした。

「ゼロはこの事を知っているの?」

「勿論!」

フリードルはニッコリ微笑みそう告げた。

「オードラルの屋敷には誰かつけよう。ザビーネ様が城に向かうにしてもこちらと連絡を取って頂いて連携して行動して貰うようにする。安心して」

フリードルは何も心配ないからと言ってくれた。
でも・・・・。

「お願い! 私も連れて行って!! 月の事は分かったから、もう心配なんてしないわ。でも、嫌な予感がするの。パウリンの場面は今までにない位どんどん変わって行くの・・・・。きっとまた何か啓示されると思うの!!」

「・・・・しかし・・・・」

フリードルは戸惑った。
ローレライを連れて行くなど、あの方が認める筈が無い!

「分かっているのに守れないなんて絶対に嫌なの!! ここで手を拱いているなら私は何の為にパウリンを手に生まれて来て、今まで振り回されて来たのか分らない・・・・。今までの事を無意味な事にしたくないの!! この国を・・・・、ゼロを‥‥失いたくない!!」

フリードルはハッとした。
ローレライの言葉が胸に響いた。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第25章11》】へ
  • 【パウリンの娘《第25章13》】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第25章11》】へ
  • 【パウリンの娘《第25章13》】へ