パウリンの娘

パウリンの娘《第26章2》

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剣は二人の間の床を傷付けると先端が折れ、ベイズは飛び散った刃先を避けようと飛び退いた時に、後に感じる鋭い気配にゾッとした。
歩み寄るアイスラントの姿を目にした途端、一歩、二歩と身を守る為に壁際に移動した。

「目下の者相手に剣も持たせずか。騎士の風上にもおけぬ振る舞いだな!」

アイスラントの目は怒りに満ちていた。

「何とでも言え。戦場では状況を選べん。この者にも良い経験になっただろう」

「ほぅ、我らは客人としてここに招かれたのでなかったのか? 何時から敵軍と同じ扱いになったのだ? 全ては皇太后の指示か!?」

「さあな。私は己の価値観に準ずる者に忠誠を誓う。それ以外は無い。それが私の騎士としての道だ」

騎士道とはある一定のものに向けられるものであって、本来そのような都合の良いものでは無い。
だからこそ、アイスラントも仲間も王宮騎士の名を捨てたのだ。

「お前の口から騎士の道を語る言葉が出るとはな」

「落ちぶれ風情が戯言を!」

「一定のものに対する服従心も持たず、何処にでも靡く犬如きが騎士道を語る事は許さん!!」

「既に騎士の道を歩まぬ者に言われる筋合いはない!!」

「我等は思う所があって一旦正道を外れはしたが騎士の心を捨てた事等一度も無い! 表に出ろ!! 本物の騎士道が何たるかを私が教えてやる!!」

ベイズの胸ぐらを掴むとアイスラントは言葉を吐き捨てた。

「伏せて下さい!!」

アイスラントの後ろに更なる敵を目にしたサビエルが叫ぶと同時に持っていた短剣をその者に向けて放った!
サビエルが利き腕を負傷して何も出来ないと甘く見ていたのか、その者は肩に刺さった短剣を押さえて痛みに耐えきれずその場で膝から崩れた。

「な・・・・何故・・・・」

「馬鹿が! サビエルは両利きだ!!」

「そんな・・・・筈は・・・・」

アイスラントの声が耳に入ってないのか?
肩を負傷したその者は、短剣が放たれた事がかなり意外だったらしく、痛みで顔を強張らせながらも狐にでもつままれたかのようにそう呆然と見つめていた。

その妙な言葉使いはアイスラントに一瞬不信感を抱かせたが、深く考える程の余裕をこの時のアイスラントは持ち合わせていなかった。

「仲間を捉えて私の口を封じ込めようと目論んだのだろうが、宛てが外れたな。このように早く私がここに現れるのは予定外だったのではないか?」

「何を!!」

「どうだ? 二人で決着をつけないか。お前の率いた者達は既に多くは床の上だ。これ以上の諍いはお互いに不本意だと思わないか。お前が勝てば我らは何も言わずに即刻城を離れてやってもいい。そのうなればお前も信用を無くさなくても済むのではないか?」

「何か裏がありそうだな」

「私はお前とは違う。これは正当な取引だ」

「取引?」

「私が勝った時はお前に膝を折って貰う。その時こそ、今度はお前が王宮を去る番だ!」

アイスラントは更に詰め寄ると剣先を喉元に突き付けた。

「さぁ、どうする!?」

「わっ、わかった・・・・」

もぅ、ベイズにはアイスラントの申し出を断る選択は残されていなかった。

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