パウリンの娘

パウリンの娘《第26章3》

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月は更に欠けて行き、隠れる目前。
フリードルは知らせを受けて直ぐ二陣の出立を待たずに密偵を城に先行させていた。
だが、その者からの可及な知らせはまだ無い。
外苑での待機はそのまま続いていた。

「どうだ!?」

ローレライは外套に身を包みながらこっそりパウリンを覘いていた。

「皆の戦う姿が見えるわ。サビエルは肩に怪我をしているようだけれど、無事みたい」

「そうか・・・・」

「ここで変に手を出す事は得策ではないだろうな」

密偵の者にはこっそり様子を探り、一人で事が足るならば敢て我等を呼び出す必要は無いと伝えてある。
何事も無ければ明朝報告がある筈だ。
ローレライのパウリンにも先の事が映し出されているのならば、ここで要らぬ手出しは無用と言う事になる。
未来は見える所までは確実に開けている筈なのだから。

「ザビーネ様の所には!?」

「ミゲルを行かせた。先程報告が来て、明日未明に緊急議会が招集されるそうだ。話が上手く運んでくれればおそらく議題は王位が継続されるべきか否か。その場が事実上の決する場所だ」

「では、私が見たのは緊急議会の場所なの!?」

「おそらく。ザビーネ様は現時点では議会の場に顔を出すことを許されてはいない。だが、事の風向き次第では宰相殿が証人としてその場に呼び寄せると言われているらしい」

「証人? ザビーネ様が?」

「ああ。ザビーネ様はその場にさえ留まる事を許されれば、我々の道は開けると言ったそうだ」

ローレライはハッとした。

「もしかして、私が見たあの場面に関係が!?」

ザビーネ様がパウリンを掲げて何か叫んでいたあの姿。

「そうかもしれないな」

「フリードル! ザビーネ様を守って!! ザビーネ様は兵に囲まれて・・・・」

「分かっている」

とにかくここは何としてもザビーネ様が行動を起こす前に情報を城内に居る仲間に流さなければならない。
それはマチウスに頼むとしても、それ以外何もせずただ待機するだけと言う訳にはいかない。
“打てるべき手は見極めたその時に直ぐに行動に移すべし”
アイスラントの教えの一つだ。


会議に臨む高級官僚の意向はどうなのか。会議までに一人一人を探るのは最早不可能だ。
王に本心から服従している者が多ければ多い程余分な血は流されるかもしれない。
欲に目が眩み、王と言う幻影に踊らされ服従しているだけの者等に用は無い。
新政権下では、その様な者を出仕させる訳にはいかないのだ。
家名存続の為に不本意ながらも服従している者も中には居るだろうが、その者の中にどれだけ新政権において重鎮として迎えられるべき人材が残っているのかが問題だ。
今回の件はそれを計り知る為には、またとない機会だ。これを使わない手は無い。
この選択は新王が決まってしまってからでは遅いのだ。
口先だけの言葉では無く本心が知りたいのだから。

ミゲルから議会が開かれる旨を聞いたフリードルは、予てからアイスラントが気にかけていた人物数人に密文書を送っていた。

『明日未明に開かれる議会の議題は現王を存続させるべきか否かである。現王は前王の実の御子では無いとの噂は予てから絶えなかった。我々はその事を事実と捉え、現王政を正す為、前王の意志を継ぐべき正統なる者を次王として推挙する者である。明朝、陽が昇る時刻、その者に味方する意思あれば、供を連れずお一人下記の場所に来られたし。意志が明らかであればこちらから声をおかけし、全てはその時に明かす』

正式な名を明かさず、それでいて供も連れずに一人で来い等と言う到底真面とは思えぬ文書だ。
だが、聡明な者であれば文面の内容やこれだけの情報を集める事が出来る者を傍における人物が誰であるか、推察すれば自ずとそれは導き出せるだろう。
手紙の内容を信じ、全てを託しても良いとまで思える者が居れば、その者は間違いなく我らの仲間になり得る人材だ。
後になり、この文書の内容の全てが明かされてから靡くような者では意味が無いのだ。
その様な者に、この国の現状を真面な目で捉える事等出来はしない。
両断される事は無くとも、新政権において高級官僚としての地位は与えられないだろう。
フリードルは今後を見据え、一つの賭けに出ていた。

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