パウリンの娘

パウリンの娘《第26章9》

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密偵マチウスはベイズの配下の者の案内で、難なく内苑まで出る事が出来た。
門番には、夜間練習中に怪我を負った者を自宅まで送り届けると言う名目で、衣服は騎士のそれを借り受け着替え、馬も手配して貰うとサビエルを支え、城を出た。
門番から怪しまれない距離まで進むと道を反れ、本隊の待機する外苑の一角へ向かった。

近付く馬上の者の姿に一瞬緊迫した第二陣の一行だったが、それが程なく密偵に送ったマチウスと支えられている者がサビエルだと気付くと急ぎ駆け付けた。

「どうした? 何があった!?」

普段平常心を欠くような事のあまり無いエルの荒声る姿に、周りに居た者にも緊張が走った。

「ボテイコの毒です。致死量には満たないとの事でしたが、このような使い方は初めてらしく確証はありません!」

「そんな!!」

ローレライは痛々しいサビエルの姿にいたたまれず、心配そうに近づくとそっと手を握った。

「セス!!」

フリードルは声を荒げてその者を呼んだ。

セス・アイランド。彼は医術の心得がある。
ハビロードと共に今まで幾多の戦場で仲間の命を救ってきた人物の一人だ。

セスは駆けつけると直ぐにサビエルの手を取り、脈を確認すると診察を開始した。

「どうだ?」

辺りにも緊張が走る。

「既に中毒の中期症状のようですが呼吸の症状は見た目ほどそう悪くはありませんし、急を要する事は無いと思います。解毒剤があれば良いのですが、まだ開発されていませんので。応急処置しか出来ませんが、このままにはしておけませんので。とにかく傷口から少しでも毒を出し、生理食塩水と利尿を促す薬湯を多く取らせましょう。毒を少しでも早く輩出できれば回復も早い筈ですから。こちらに」

そう言うと外苑近くの古民家に連れて行かれた。
そこはフリードルが来るべき日を想定して予てから借りていた家で、数日分の食料と医療用品、生活備品などが整えられていた。

ローレライはセスに手伝いをさせて下さいと頼み込み、フリードルの許可も取り付けた。
何か分かれば逐一報告する事になっている。

“大丈夫。パウリンにはサビエルが怪我をした場面しか映されていなかった。きっと大丈夫”

ローレライは自身に言い聞かせた。


マチウスはサビエルを送り届けると、城内の東殿での参事の一部始終を報告した。

「ベイズの首を押さえていると言う事は事実上の勝利だな。この状況をいかに生かすかも今後の鍵となりえるか・・・・」

とは言え、そう簡単に皇太后が今回の一件を認めるとは到底思えなかった。

フリードルは再び戻ると言うマチウスにアイスラントに宛てた手紙を託した。

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