パウリンの娘

パウリンの娘《第27章4》

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ロイエルはフリードルと向い合せに座るとゴクリと生唾を飲み込んだ。
言いたい事はあるが、中々口には出せない。そう言った状況だ。
フリードルはクスリッと笑うと優しく言葉を掛けた。

「で、どうなんだ? 見た所、お前に何か考えがあるのではないのか?」

座った途端確信に触れられ、ロイエルは額の汗をそっと押さえた。

「実は・・・・名簿にあったバイエルン男爵の事なのですが・・・・」

「ああ、男爵は今回の調査については非該当者だ」

実は男爵には密文書を送った。
良識のある人物と評判で、フリードル自身も何度か面識があり、穏やかで欲に目が眩むような者にも思えず好人物と思っていた。
今回来てくれるのではないかと期待もしていたのだが現れなかった。

「実は・・・・私の父なのです・・・・」

フリードルは目を見開いた。

「お前、庶子だったのか!?」

「いえ、父と言っても正式に認知されている訳では有りませんので、実質上は私生児なのです。私は母一人子一人の家庭で育っておりますので該当致しません」

これは驚いた。
いや、でも言われてみればこの目鼻立ちは確かに男爵に良く似ていた。

「お母上から聞いたのか?」

「いえ。父から直接話を聞きました。訳あって表立って認めてはやれないが、お前は私の息子だとはっきりおっしゃって下さいました」

「では、お前との接触は現在可能なのか!?」

「いえ。それがもぅこの10年近く、全く会えなくなっておりまして‥‥。奥方に私の存在を知られてしまい、実は子供の頃何度も命を狙われております。それを回避する為に母は私が7歳になると民兵育成隊へ入れたのです。入隊後は身内を含めて外部の者との接触は一切禁じられておりますので以後両親とも断絶状態です。正式に民兵隊への入隊を認められてからも母からは身の安全が保障されるまでは一切の連絡を取るなと言われております。殉職すれば知らせがある筈だから連絡は不要だと言われました。ですから両親は私の生死をおそらく明確には知りません。ですが父を、家の者に私の存在に気付かれる事無く呼び出して頂けるのであれば・・・・直接お会いする事が叶えば、私はゼロ様のお役に立てるのではないかと思うのです」

詳しい事情は窺い知れないが、私生児とは言え、どうやら男爵との親子関係は成立しているらしい。
婚姻以前に生まれ当事者本人が認める嫡子を認知できずにいたとなれば恐らく親か権力による何らかの絡みだろう。
加えて生後間もないであろうロイエルが居るにも関わらず、男爵が結婚したのは現王即位直後で、しかも相手は皇太后の親戚筋に当たる侯爵家の令嬢だ。
現在結婚してもぅ長いが子供は無く、夫婦仲が原因だとも実しやかにささやかれている。夫人との不仲説が真実ならば協力して頂ける可能性はあるのではないかと踏んでいた。
だが、ロイエルからの話を聞き、かなり複雑な事情が絡んでいるらしい事を理解した。
事は簡単では無いかもしれない。それでも今は一人でも多く味方が欲しいのだ。

「分かった。難しいかもしれないが、今一度男爵へ手紙を書こう」

「有難うございます!!」

フリードルは急ぎ手紙を認めると、伝令の者をバイエル男爵家に送った。
今度は実名を名乗って。

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