パウリンの娘

パウリンの娘《第27章6》

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どうやら男爵は息子の生死を全く知らなかったらしい。
その驚きはかなりのもので、落ち着かせるのに暫く時間を要した。
男爵は妻よりロイエルの身の危険を示唆され、急ぎ愛する者の許へと駆け付けたが、ロイエルは不慮の事故で亡くなったと伝えられていたらしい。
そして、ロイエルの母からは『貴方は私を不幸にするからもぅここには来ないで下さい』と告げられた。
愛する息子の死と元婚約者からの拒絶。
父から押し付けられた形だけの妻への憎悪は膨れるばかりだったそうだ。
ロイエルが民兵育成隊へ入隊した事も勿論知らなかったらしい。

「御子息は武勲を重ね、この若さで民兵隊隊長の地位まで上り詰めました。将来有望な若者です。後ろ盾する者がいれば直ぐにでも騎士の道を歩むことも可能でしょう。その実力は既にございます」

元王宮近衛騎士隊総隊長の実績を持つフリードルからの言葉は男爵に後悔の念を抱かせた。
どれだけの実力があろうと、一平民の出では騎士の道を歩むことは難しい。
騎士の道は両親のどちらかが貴族の出か、それ相応の貴族を後見人に持つ者が必要だ。
武勲を重ね実力があれば力を認めた貴族からお声がかかり、その後騎士の道を歩むことも出来る。
このままでもおそらくロイエルは後者の対象になり得る人材であるだろうが、実父である男爵が後ろ盾となればこれ程強いものは無いだろう。

「不甲斐無い父を許してくれ・・・・。7年前に父が他界し、爵位を継ぐ事になった折、直ぐに離縁して彼女を迎えたいと思っていたがそれは敵わなかった。アレの実家の侯爵家からの圧力は男爵家存続のみならず私の身内にまで及ぶものだったから・・・・」

男爵は一人息子で、既に両親は他界している。
ロイエル以外の身内が男爵にいるのか? 元婚約者だと言うロイエルの母の事を言っているのか?

「御身内・・・・ですか?」

フリードルの問いに男爵は憂いを帯びた瞳で少し微笑んだ。

「彼女と娘を守るためにはこの形だけの結婚でも続ける他なかった」

「娘!?」

ロイエルが思いもよらぬ父の言葉に少し首を傾け不思議そうに尋ねた。

「ロイエルが死んだと聞かされた・・・・、おそらくロイエルが民兵育成隊へ入隊した半年後、お母さんは女の子を一人で産んでいるのだ。私もずっと知らず、離縁を申し出た折にアレの父より知らされた。お母さんに会いに行っても否定されるだけだったのだが、私は娘子を一目見てやはり自分の子である事を確信した。君の妹はね死んだ私の母にそっくりなのだよ」

男爵は目を細めて嬉しそうにそう告げた。

「では、夫人と離縁されないのは、ロイエルの母親とお嬢様の為?」

「離縁するならば次の標的は彼女と娘だと言われた。ただ、私が会いに行かなければ手出しはしないと・・・・。アレもこのような私にどうして未だに執着するのか・・・・」

男爵はため息交じりにそう告げた。

「夫人と御実家の侯爵家どちらが裏で糸を引いていると思われますか?」

「分らん。アレは私には良い顔しか見せないからな。だがアレが何も言わなければ侯爵が手を出すとは思えない。何も知らぬ筈は無かろう。表面上どのような優しい言葉を向けられようと、私はアレを許す気にはなれない。アレが私に執着せねば、権力で私は婚約者を退けられる事も、生まれた息子の命を狙われる事も、今も彼女と娘が危険な目にあっていないかと怯える日々を過ごす事もなかったのだ。アレはまだ諦めては居ない様だが私はアレとの間に子を持つつもりは無い。報復を考こそすれ、そのような者を愛せる道理が無い。 息子を無き者にした男爵家等私の代で終わらせても良いとそのつもりだったが・・・・、ロイエルは生きていてくれた。ならば私はロイエルにこそ男爵家を何としても継いでもらいたい!!」

想いも寄らぬ話の展開にロイエルは驚きを隠せなかった。

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