パウリンの娘

パウリンの娘《第28章1》

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重鎮達の馬車が次から次へと城の中へと入って行く。
アイスラントの父である宰相オードラル公の馬車は正午過ぎには既に王宮へと入って行った。

馬車の中には夫人も同乗しており、ミゲルも所要を済ませると従者に扮して同行した。
こちら側の手筈は全てミゲルより宰相と夫人に伝えられた。

「では議会開催前に皆を東殿へ連れて行けば良いのだな」

「はい。昨夜の惨状跡を見て頂ければ、こちらにお味方しておられない者達の見方も変わるやもしれません」

「票数的には過半数を超えれば有効だが、今後の為には出来れば満場一致で事を進めたいからな。さすれば後々になって反旗を翻す者も少ないだろう」

息子を思う親心か。
宰相は出来るだけ有利な条件で息子を玉座に据えたいと思っている様だった。


通常議会の30分前には控えの間に揃うと言うのが通例だ。
この日も例に漏れる事無く全員がその時刻には控えの間に集まっていた。
重鎮達が揃った事を確認すると宰相が声を発した。

「御足労だが議会開催前に皆様に少し付き合って貰いたい」

「こちらです」

宰相の言葉に促され、小言を言う者も居たが、皆従い従者に扮したミゲルの案内で宰相の後に続いた。
案内されたのは勿論東殿。
続く回廊を歩いている時点でモアッとした蒸れたような臭い。
更に進むと何とも言えないくぐもった中にも鼻を突く様な薬草の苦々しい匂いの混ざった異臭が漂い始めた。

「何なのだ!? この臭いは!」

「昨夜の名残です。東殿にお泊り頂いておりました会議における重要な賓客の方々が夜襲にあわれまして・・・・」

「ならばこれは、死臭なのか!?」

想像するだけで咽そうになったのか、更に怪訝な表情をし、口元を押さえた。

「いえ。死者は今の所出ておりません。体臭とボテイコの毒素の入り混じった臭い、それに現在利尿を促す為に投薬を施しているようですので、それを煎じる薬草の臭いかと。臭いだけで体に害はございませんのでご安心ください」

「いや・・・・、さぞ激戦であったのだろう。もぅ良い理解できた。私はこれで・・・・」

ハンカチで口元を押えてながら顔を顰めているのは皇太后の父であるマベラス侯爵だ。
目配せして他の者にも退去する様に促す態度を取ろうとしていた。

その姿を目にして引き止めたのは東殿奥から出て来た者だった。

「お待ち下さい。我らが夜襲をかけられたこの事こそが隠蔽に当たると言う事をしかとその目に焼き付けて頂きたい」

「お前は・・・・」

「本日の法律議会を開廷するに至りました議題をご提出下さいましたブラックナイトの代表であられますアイスラント・ゼロード・フォン・オードラル殿です」

マノン伯にそう告げられマベラス侯爵の顔は青ざめた。
ブラックナイトには家族に知られたくない内容の警護を頼んだり、秘密裏に捜査を依頼した事もあった。

「ブラックナイトだと!?」

「御ひいき頂いております方々のお顔もいらっしゃるようで心強うございます」

アイスラントは目だけが据わった状態でにっこり微笑むとそう告げた。
何とも言えぬ異様な微笑みはマベラス侯爵にある種の牽制をを投げかけているようだった。

何も関わりの無い者にとっては、あのブラックナイトかで済んだとしても、そうで無い者も中には居る。
娘から相談を受けて、守ってやると約束していた侯爵ではあったが、この場にあってはいささか分が悪い事を瞬時に理解した。

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