パウリンの娘

パウリンの娘《第28章6》

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胸を張って堂々と歩く従者の服装に身を包み付け髭にかつら姿の王と、侍女の服装にも関わらずあの大きな石の指輪は無いだろう。
こちらもかつらで髪型は変えてはいるが後ろに歩く侍女と違い堂々とした姿は何処か高飛車のようにも感じられる。
同じ侍女でありながら、片方は胸を張って堂々と歩き、もぅ片方は大荷物を抱えこそこそと。言われてみればこれ程不自然で滑稽な絵図らはあり得ないだろう。

「何処まで抜けているんだ・・・・」

これでは身分が知れぬように変装までしている意味が無い。
フリードルは、再び大きな溜息を付くと皆を呼ぶように告げた。

日が高い内に皆を連れて・・・・、しかも現王と皇太后を引き連れて城に入り込む事は不本意ではあったが、事このようになってしまえば致し方ない。
王と皇太后には絶対に城に戻って議会に出席して頂かなくてはならない。
しかし、連れて城に行った所で連れ出したと疑われるのがオチ。
『はいそうですか、ありがとうございます』等と感謝して貰える筈も無い。
そろそろ城内では王と皇太后が居ないと言う事が判明し、騒ぎになっている頃だろう。

「とりあえず、私はこの者等と身柄を押さえる。他の者はいつでも城に入れる準備をしておけ。話が通らず兵が剣を抜いたら天高く矢を射る。それを合図に突入してくれ」

そう告げると傍に居た者に弓矢を持たせた。

踏ん反り返って歩く者の中に、フリードルは2名の者を従えて、颯爽と歩み出ると、その場で額づいた。

「陛下。このような時間に城下へのお忍びは危険でございます。早急に城内へお戻りを」

フリードルは王宮勤めをしていた近衛騎士時代の様にさも当然の如く王に接した。

「フリードルか!? 久しいではないか!! 壮健であったか!? もぅ少し良く顔を見せ」

「ザラゾール!!」

王が満面の笑みで声をかけ、その肩を抱こうとした瞬間、皇太后が声を荒げて制止させたが、声を発した皇太后自身も慌てて両手で口を押える事となった。
名を呼ぶのが一番不味いだろう・・・・。

「やはり、陛下と皇太后様でいらっしゃいましたか。さぁ、皆が心配しております。城にお戻りを」

フリードルがそう告げた途端、一緒に居た者に王と皇太后はがっしりと腕を掴まれた。
元来た道を無理矢理強制的に連れ戻される。

「無礼者!! 離しなさい!!」

後ろで大荷物を持ち、立ち竦んでいた侍女はその声に慌てた様に辺りを見回しおどおどしていた。

「貴方もこのような茶番にいつも付き合わされて大変ですね。これは貴方のせいでは有りませんから何も心配される事はありませんよ」

ニッコリ微笑みそう告げられ、まじまじとフリードルを覗き込んだ侍女はその姿に頬を染めた。

「シュタイン・・・・様!?」

「久しぶりだね。貴方は少し遅れて通用門から城へ戻った方が良い。一緒に居ては返って咎められるだろうから」

そう告げると大人しく連れて行かれる王とは対照的に往生際悪く喚き散らす皇太后を引き連れてフリードル達は城へと向かって行った。

門兵に交渉している間も、終始無言な王に対し皇太后の暴言は留まる所を知らず、腕を掴ん拘束している者を罵倒し続けている。
良くもまぁ、これだけ口が回るものだと感心したくなる。

間もなく、脇にある蝶番の戸口では無く、木が軋む重々しい音を立てながら正門が少し開けられると全員城の中へと入って行った。

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