パウリンの娘

パウリンの娘《第28章12》

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先程までの勢いは何だったのか?
皇太后は、今度は終始ダンマリを決め込んでいた。
今口を開くのは得策ではないと思ったのだろうか。
だが、何としても聞き出す必要があった。

「貴方が処分されたのは写しです」

静寂を押し入るように言葉を発したのはアイスラントだった。
明らかに皇太后の形相は変化した。

「主治医は前王崩御後、自らの命の危険を示唆しておりました。そこで写しを用意した。写しを自室の机の引き出しに。もぅ1冊の本物は墓碑の下に厳重に包まれて保管されておりました」

「墓碑を動かしたのか!? 何と言う非常識な!!」

辺りから非難めいた声が次々にあげられた。
それを遮るようにアイスラントは声を高めて更なる話を続けた。

「医師の調査をしていた折、自宅の書斎机の裏に謎めいた文字が書かれてあるのを発見致しました。それが何かの暗号である事は明確でした。それを書き写し、数日かけて解読した結果、場所が判明したのです。日記を開くと最初に『後は頼む』と書かれてありました。この日記は託されたものです。真相を暴く事は、即ち医師の遺言だったのです!!」

放たれていた野次は『遺言』の一言でピタリと治まった。

「口封じの為に側近らに心臓麻痺を装いある者が毒を盛った事が書かれてあります。残念な事に前王崩御についての真相は記されておりませんでしたが、疑わしき内容は記されてありました。医師自身も疑念と言う形でしたが・・・・。前王陛下の死について真相は暴く事は出来ませんが、ここには皇太后様の指示に従いバシリクの小瓶を手渡したとの記述があります」

ここでアイスラントは後の話を専門分野であるハビロードに任せた。

「バシリクの原液は無味無臭です。1滴で効果が現れます。心臓麻痺に似た症状がおき服用後数秒で死に至らしめる事が可能です。本来入手が困難な為医師や薬師を通してでなければ使われる事はありません。激戦地へ赴く折に囚われの身となった者が自決剤として軍部でも過去に使用していた例もございますが、その毒性の強さから現在は犯罪者への自決剤としてしか使用されておりません。小瓶1本で30名分はあるはずです」

「何名に使用したのですか?」

アイスラントは冷ややかな眼差しで皇太后を見据えた。
その問いに、周りにいた重鎮達が一斉にざわめき始めた。

「・・・・私の甥は出仕中に心臓発作で亡くなった。殺したのはお前だったのか!?」

「私の末娘は・・・・王の主治医の助手を任されていた・・・・。心臓発作と言う事だったがあれもお前の仕業だったのか!?」

口ぐちで近親者を亡くした者達が皇太后に向かって詰め寄り、声を荒げて行った。

「わっ、私は何も知らない! そっ、それにそのような」

宰相が木槌を鳴らして何度も『静粛に!!』と声を上げたが、その声は誰の耳にも届いていなかった。

詰め寄る者と、冷静にと諫める者。
肉親の死の真相を突き付けられ怒り心頭の者を治めるのは困難だ。
アイスラントも仲間と共に間に入り、取り押さえていたその時だった。

「もう良い!! もぅ沢山だ!!」

声を荒げてその場を一瞬にして静寂を齎したのは、今まで唯々無言で観衆となっていた者だった。

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