パウリンの娘

パウリンの娘《第29章1》

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評議の間ではアイスラント陣営のブラックナイトのメンバーがついに成し遂げた偉業を皆が歓喜していた。
賛成した重鎮らも歩み寄り、アイスラントに額づく姿に父である宰相は胸を撫ぜ下ろすと共に目頭が熱くなるのを抑えきれずにいた。

歓喜する者等の傍らで、天井を見つめ唯呆然と佇む前王の姿。
何を考えているのか誰にも窺い知る事は出来ない。

「ザラゾール・・・・」

母である皇太后がそっと声を掛けその手を肩に掛けたが、前王となってしまった息子はその手を冷たく払い除けた。

「全て母上のせいだ・・・・。母上が私に手出しさえしなければ、私が玉座を追われる事も無かったんだ!!」

母を頼り、成人してからも母の目の色を伺い、業を成して来た事を今更後悔した所でもぅ遅い。
国庫を私物化し贅沢を好み使い果たしたのは母のせいだけではない。成人後も、宰相では無く母を後見人の如く傍に置き、重用し続けたのは今や前王となったこの者だ。
政治を翻弄し続け、揚句退位となった責任を母一人に転換するとは何とも情けない。
それがこの者の力量か・・・・。

母親ならばこの様な場合、本来失脚した息子に掛ける言葉が見つからず、自責の念に囚われるか唯々狼狽するのが普通の姿なのだろうが、この元皇太后はやはり一味違っていた。
その姿に苛立ちを隠せず、今や前王となってしまった息子の手を今度はがっしりと掴むと次の瞬間心配し傍に近付いて来る父侯爵をも押しのけ、皆の間を横切ると扉へ急いだ。
そして自ら扉を開くと大声で叫んだのだ。

「誰か! 此れへ!! 謀反です!」

息子である前王を前面に押しやり、大声で更に皇太后が捲し立てていた。

その声に一番慄いたのは重鎮等とブラックナイトの面々。そして、たった今自らが新王と告げられたアイスラント自身だった。

「この期に及んで、何と言う血迷い事を・・・・!!」

シザーレが口惜しそうに叱咤した。

前王は呆然と唯立ち竦み、事の現状を理解していないようだっだ。

「母‥‥上!?」

「何を躊躇う必要があるのですか!? 貴方は玉座に未練があるのでしょう? だったら取るべき道は一つしかありません!!」

母の一言で、評議の間の前には方々から兵が集まる夥しい数の足音が近づいているのが分かった。
確かに今決断しなければ、今後自分はどうなってしまうのか!?
離宮で細々と一生を送るのか? 自分も何らかの罪に問われてしまうのか!?
玉座を手放す気は無かったが、もぅそれは自分の手には無いのだ。
迷っている暇は無かった。

「この者等を捉えよ~~~~!!」

前王の虚勢に騙された兵らが更に勢いよく声を上げ足音と共にその音は次第に大きくなっていた。 

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