パウリンの娘

パウリンの娘《第29章6》

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ローレライは自分の中にある部屋のイメージを必死でマチウスに伝えていた。
フリードルに話した時の様な漠然としたイメージでは無く、その様子は今でははっきりと映し出されていたからだ。

「多分城の中腹あたりだと思うの。そこから少し入った回廊の奥に扉の両側にユリの花の紋様描かれてある扉なの。中は赤い絨毯が敷かれてあって四隅には兵が居るわ。そこに王と皇太后とご一緒にいらっしゃる筈になの。舞踏会の開かれたお部屋の半分程の広さはあると思うわ」

城の内情にあまりに詳しい事から何度も訪れているのかと思えば、社交界デビューを果たした昨年、形式として一度参加しただけだと言う。
ローレライ嬢の示した場所は恐らく部屋の内部は謁見の間だ。そして扉は占受の間。そのどちらともが混在しているとはどういう意味だ!? その上、どちらも到底足を踏み入れた事が過去にあったとは思えず、そのローレライ嬢がどうしてこのように詳しいのか、マチウスには疑問だった。

「思い当たる場所はございますのでご安心ください。ここから中に入りますのでお静かに」

ローレライはコクリと頷いた。

マチウスは辺りを見回すと手で探りを入れてから外壁の石を動かした。
ここは城の出入りが容易に出来るようにと密偵になった折、仲間と時間を見つけて死角となる場所を見つけ出し石を動かし出入り出来るように細工した場所だ。
人一人がギリギリ通り抜けられるスペースだった。

潜り抜けた先は城の裏側。
すぐ傍には厩舎があったが、古い馬具や車輪などが放置されており、物置小屋と言っても処分品の一時的な保管庫と言っても良いような場所だった。
世話役と農夫が来た所で裏側だ。誰も気にも留めない確かに死角的な場所だろう。

「私が先に行きます。一先ずこちらでお待ちください。様子を見て私が右手を振り降ろしたら私の傍まで急いで駆けて来て下さい。少しずつ移動します。絶対に見つからないように城内に入れるように致しますから私を信じて下さい」

こっそりと話すマチウスの言葉にローレライは大きく頷いた。


城には図書室の通用口から入った。
仲間がここに居るらしく、ルイスと言う者がいつも手筈を整えてくれるらしい。
現状も調べてくれており、出来るだけ兵を避けた順路で進む事も可能となった。
死角となる本棚の間を潜り抜け、隙を見て難なく図書室を抜けるとルイスの意見を参考に兵の配置の無い場所を選び出来る限り前へと進む。
城内は戦った痕跡が随所に見られるものの、押し迫って身の危険を感じるものでは無かった。
時折かすかに聞こえてくる奇声を耳にし、身体が震える。
マチウスは角々様子を伺いながら合図を繰り返し、そしてある場所に差し掛かると様子を伺い先に進まず、ピタリと止まった。

「ここを曲がった奥がローレライ様の申しておりました扉だと思うのですがご確認頂けますか?」

おずおずと先に進み指定された奥を覗き見ると確かにそれはパウリンに映された扉だった。

「ここだわ。でもここは一体!?」

「占受の間です」

「もしかして物事の吉凶を占うと言う占者お部屋なの!?」

「はい、そうです」

ローレライは間違いないと思った。

マチウスはローレライに確認だけ取ると、部屋のすぐ傍にある扉をそっと開いた。
中には誰も居なかった。

「ここは占受を頂く者の待合室です。こういう状況ですので他の者は来ないと思います。私がゼロ様をお連れ致しますので、それまで内鍵を掛けられて何がありましても絶対にこの部屋から出ないで下さい」

真剣な眼差しで、そう告げられローレライはコクリと大きく頷いた。
マチウスはローレライを信じて、その場を一旦離れたが、後になってその事を大いに後悔した。

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