パウリンの娘

パウリンの娘《第29章8》

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アイスラントは待ち受けたマチウスの姿を目にすると、直ぐに確認した。

「来てしまったのか!?」

「はい。ただ今占受の間の待合室でお待ち頂いております」

「占受の間だと!?」

「はい。ローレライ様の指示に従い案内致しましたら占受の間に辿り着きました」

フリードルから書かれてあった手紙の経緯に寄れば、母が何処かの間で兵に取り囲まれている姿をローレライが覘き見たと言うものだった。
その場所が占受の間であったと言う事は、少し意外だったが、もしかするとこれは己への牽制なのかもしれないと考えれば道理は通る。

「ここはじきに片付く。フリードル率いる第二陣と王宮近衛騎士隊が一小隊我々に味方として付いてくれたのが大きい」

「そうでしたか!」

マチウスも安堵の笑みを浮かべた。

「だが、ここが落とせないとなれば、おそらく矛先は変わる」

もし、自分がザラゾールの立場であったなら次の標的はその者の近親者。中でも一番弱い者を狙う。
幸か不幸か本日母は城に居るのだ。

「マチウス!! 占受の間へ急ぐぞ!!」

そう叫びながらアイスラントは扉越しに声を荒げた。

「シザーレ! 一番後方に居る者を何人でも良い、南回廊沿いに向かわせろ! ここは最低限の人数を確保して守らせればいい。そちらで合流する!!」

「分かった!!」

「父上! 次の狙いはやはり母上です! ここが片付いたら護衛を数名残して他の者をそちらへ向かわせて下さい!!」

父宰相が頷く。
アイスラントが急ぎ窓からマチウスと共に出て行こうとした時、その姿を見て声を荒げる者が居た。
何処にでもいる自分の事しか考えないアイスラントが一番嫌悪を抱いている輩だ。

「我らを見捨てるのか!? 卑怯では無いのか!? 新王と決まった途端に我が物顔でなりふり構わずか? お前だけさっさ逃げ出す気なのか!?」

アイスラントはあまりの自分本位で浅はかな考えに怒りを露わにした。

「お前は先程の話を理解出来なかったのか!?」

その者を見据えて低音で呟く声に、周りの者は一歩引いた。

マチウスを伴いテラスに足を掛けようとしたその時、何を思ったのかアイスラントは足を止めると再び振り返った。

「来たければ勝手に付いて来い!! 共に戦おうともせず、口先だけで観衆を気取る輩に用は無い! 最もここから落ちれば命は無いだろうがな!!」

アイスラントは言葉を投げ捨てた。

己の保身のみを訴えたその者は、いきり立ちテラスへ向かうが、地上との高さを確認するとその場で腰が砕けるように崩れ落ちた。

嫌悪に満ちた眼差しでその者を見据えると、アイスラントはマチウスと共に隣のテラスに飛び移った。
幾つかのテラスを飛び越え角部屋の窓辺へ辿り着くと中に誰も居ない事と死角となる反対側の扉がある事を確認した。
剣の鞘でガラスを一部破壊し室内へ入ると反対側の扉に耳を側立てた。
扉の直ぐ側に兵の居ない事を確認すると直ぐに廊下へ出た。
向かうは合流地点の南の回廊。
一刻も早くローレライの許へと心が急いた。

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