パウリンの娘

パウリンの娘《第29章11》

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南の回廊で数名の者と合流したアイスラントは共に占受の間を目指した。
そこまでは兵の姿も無く難なく進めた。
駆り立てる気持ちを押さえつつも、誰よりも早く待合室の扉の前まで辿り着き、アイスラントは声を掛けた。

「ローレライ、私だ」

「・・・・・・・」

中からは何の返事も無く、慌てて取っ手を回すと鍵が掛かっていなかった。
一瞬、血の気が引いた。

“まさか何者かに!?”

「ローレライ!!」

叫びながら同時に取っ手を回して蹴破るような勢いで扉を開けると中は蛻の空だった。

「・・・・如何いう・・・・事だ!?」

“まさか占受の間に!?”

踵を返し、急いで占受の間へ向かった。

「母上! 失礼致します!!」

言葉を発すると同時に思わず取っ手に手を掛けた。鍵が掛かっていないと知っていた訳では無いが、無意識に叫ぶと同時に手を添えていた。
そちらも鍵が掛かっていなかった。

“絶対に何かがおかしい!!”

急ぎ開いた扉の奥にもやはり、母の姿は愚かローレライの姿も見つけられなかった。
二人は一体何処にいってしまったのか?

「他には何か言っていなかったのか?」

「もしかすると謁見の間に行かれたのかもしれません・・・・」

「謁見の間だと!?」

マチウスの言葉に怪訝な表情を浮かべた。

「ローレライ様が仰りましたお部屋の扉は確かに占受の間でした。しかし、私はこの部屋の中の様子までは存じませんでしたので確証が無かったのですが、中の様子の特徴は謁見の間に酷似しておりました」

アイスラントは血の気が引くのを感じた。
謁見の間はこちらへ向かう途中、遠目ではあったが視界を横切る時兵の姿を確認した。
おそらくそれは警備兵で、その数も少なくは無いと推察できた。
そこから導き出される答えは現在ザラゾール王と皇太后がその場に留まっていると言う事。
待合室も占受の間も何処にも乱れた様子は無く、兵が押し入った様な形跡も無い事からやはり母もローレライも自ら行動に転じたと言う事が示唆された。

「あの馬鹿が!!」

アイスラントは占受の間に置いてあった母の机に拳を立てた。
机は割れないまでも、その右の拳に傷を作った。

「いくぞ!!」

どれ位の時間差になるのか!?
フリードルの手紙が正しければ母は兵に取り囲まれる筈だ。
命はあるか?
母はその地位を知られている為直ぐに命を取られる事は無いかもしれない。だがローレライの素性など誰も知る由も無く、巻き込まれ一番危険な立場になるのは間違いなかった。

“頼む!! 無事でいてくれ!!”

アイスラントは祈りながら懸命に城内を走り続けた。

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