パウリンの娘

パウリンの娘《第30章1》

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ローレライの傷は脇腹を15センチも切り裂くものだった。
だが剣が奥深くに入る事無く、横をかすめた程度であった事が不幸中の幸いだった。
ハビロードの見立て道理、臓器にも達していなかったが、腹膜が破れ少しだけ筋肉を痛めていたのと傷口が広範囲な事から縫合が必要との事でその場で処置が施された。
感染症さえ起こさなければ命に別状はない。
1か月程で傷は完全に塞がるが、跡は残るだろうと言われたがその様な事は全く気にしない。生きていてくれるならばそれで良い。
アイスラントは心からその事に感謝した。

縫合が終わってから別室に移されたローレライにはザビーネがずっと付いている。

「ごめんなさいローレライ。私の為に貴方がこのような傷を負うなんて・・・・」

傷を負うのは本来自分の筈だった。
ザビーネの己がパウリンにはローレライが傷つく姿は映っていなかった。
ローレライの泣き縋る周囲が血の海で、それを窺い知る事は出来なかったが、おそらくそれが自分の運命なのだろうと示唆していた。
パウリンで覘き見た記憶の投影をし、本来己の持つ力以上のものを酷使したらパウリンが落下の有無に関係なく力を使い果たし砕け散る事は分かっていた。
初代パウリンの所有者であったオルガゾーレの書に刻まれてあったから。
次の後継者がパウリンを手に生まれた以上、自分の持つパウリンは新王が立てば役目を終え、その役割はローレライへと受け継がれる。
そうなれば己がパウリンは不必要なもの。
最後の力を最大限に活用し、新王を導く者の為に使うのだと言う事はローレライの誕生を知った時に心に決めていた。
何処まで投影を持続する事が出来るか、それは自身でも分かっていなかったが、粗方の事は成功と言って良いと思っている。
ただ、その代償は大きかった。
それがまさかこの様な形になるとは夢にも思っていなかったのだ。
パウリンの映像は絶対的なものとローレライに告げたが、事と場合によっては違ってくるのだと言う事が今回初めて分かった。

「良いのです。アイスラントの大切なお母様ですもの。無事で何よりでした」

意識を取り戻し寝台に横たわりながらローレライは少しまだ顔色は青白く痛々しいが微笑を浮かべながらそう呟いた。

「冗談じゃないぞ!!」

ローレライが意識を取り戻したと聞いた新王アイスラントは、ノックも無く部屋の扉を荒々しく開けると憮然とした面持ちで佇んだ。

「アイスラント・・・・」

「勘弁してくれ。母上の無鉄砲も去ることながら、お前のは最低だ。ちっとも笑えん!」

その瞳は鋭く射抜かれるように真剣だった。

「御免なさい・・・・」

自らの取った行動に後悔はしていないが、アイスラントや皆に心配をかけてしまった事は事実なので、ローレライは謝るしか無かった。

「まぁ、アイスラントも大人げない。そう怒らなくても良いでしょ!?」

「母上にも言っているのです!! 母上が身勝手な行動に出なければ、こいつも怪我を負う事は無かった。私が駆けつける事がお分かりでしたでしょうに、もぅ少し待って頂ければ良かったのです!!」

「御免なさい‥‥」

肩を窄ませ小さくなる母と、痛々しげに項垂れるローレライの姿にアイスラントは大きく深いため息をついた。
二人のこの様な表情を見せつけられて、これ以上叱れる程、アイスラントは人間が出来ていない。
ローレライに近寄り膝を折り、髪に手を伸ばすとその額に自らの額を重ね合わせそっと呟いた。

「‥‥‥私が早死にしたらお前のせいだからな。お蔭で寿命が10年は縮んだぞ」

「ごめんなさい・・・・」

「早く良くなれ」

母が居る事等気にする素振りも見せずに額に口づけを落すと、引き続きの看病を頼むと言い残し、アイスラントは追われる事になった後処理へと戻って行った。

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