パウリンの娘

パウリンの娘《第30章2》

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新王交代劇から1週間が過ぎようとしていた。
あの後、城に従事する者全てが大広間に集められ、宰相と議会に参加した重鎮全てが揃う中、議会の決定によりアイスラントが新王に推挙され、評議の結果正式に新王と認めた事を城の者に伝えた。

前王となるザラゾールと皇太后の今後の処遇については正式決定されていないが、とりあえず前王は一番の近親者となるマベラス侯爵家に身を置く事となった。
マベラス侯爵家に関しては、皇太后を今まで擁護してきた経緯も踏まえてとりあえず謹慎の上、今後その処遇を決定する事になっているが、その間も前王、皇太后両名に対し冤罪を主張するような行動が見られれば即座にお家没収と言う言葉が据え置かれた。
皇太后は既に牢に捉えられている。
夫であった王が承知していたとは言え、王亡き後も事実を隠し続け王家と血縁無き者を玉座に据え今まで隠し続けた。揚句、国の情勢を顧みず私欲に走り国民を虐げて来た事に対する罪は重い。
それを然る事ながらシルベラント王の突然死や周囲の者の暗殺、それ以外の事件にも加担した形跡も多くあり、死は免れないであろうと言う事は誰の目から見ても明らかだった。

新王としてのアイスラントはと言えば、現在の城内の修復を第一に考え、城の正常化に努めていた。
城が本来の機能を取り戻すにはおそらく後数日は必要だろう。
正式な即位式は行われていないが、書類は揃えられた。
宰相と重鎮12名、そして神官長からの署名を受けた即位に伴う書類は既にアイスラントの手元にある。後は正式な即位式で自らが署名するだけだ。
周囲は直ぐにでも即位式をと言う意向だったが、アイスラントがそれに首を横に振った。

「私の即位式にはローレライにも傍に居て欲しいのだ。正式な婚約者として」

ローレライは、2週間は安静にするよう医師に告げられている。
全治1か月の治療期間が終わった後、正式な婚約者として王妃となる教育に入る事となる。
今回王妃教育の任を賜ったのはアイスラントの実家であるオードラル公爵家。
元皇女であるザビーネがその任を一手に受ける。
その間清めの儀式などを経て式は3か月後の吉日をもって行われる事に決まった。

ローレライはと言えば、広範囲の傷口が化膿するのではないかと当初心配されたが、その後、現在入手困難とされている薬を手にすることが出来、傷口は順調に回復していた。

『これは、紫馬簾菊(エキナセア)と言う薬草です。煎じて飲めば免疫力効果、抗菌、殺菌、抗ウィルス薬として効果が期待できるものです。幸い私の祖父が研究用に個人的に常備しておりましたのでどうぞお使いください』

ハビロードが持参して来た良質の紫馬簾菊(エキナセア)は採取できる時期が限られており、今の時期が一番入手困難だ。
思わずそのような高価な薬が手に入り、医師の確認の下ローレライに処方された。

「紫馬簾菊(エキナセア)って凄く飲み辛いんだろう!? 俺絶対に飲みたくない」

王交代劇が終結してからこちらへ移って来たルシオンが午前中はいつもローレライの看病に訪れていた。
実際はただ、話し相手をしているだけの現状なのだが。

「あら、これで少しでも良くなると思えば何て言う事は無いわ。良薬は口に苦しよ」

「俺にはとても真似できない・・・・」

最初飲んだ時、流石の苦さにローレライも噎せ返った程だった。
だが、ハビロードから効能と話を聞いて絶対に残さず飲むと心に決めた。
無害と聞いてルシオンも興味本位で少量口に含んでみたがとても飲めたものでは無かった。
その紫馬簾菊(エキナセア)をローレライが、今では笑顔で飲んでいる姿がルシオンには信じられなかった。
今までアイスラントに迷惑をかけたから頑張って飲んで早く良くなるのだとローレライは言うけれど・・・・。
子供の頃から大の薬嫌いだったローレライが変われば変わるものだ。愛の力は偉大だとある意味感慨深かった。

「お母様達はまだなの!?」

「うん。今日の午後には着く筈だ。アイスラントの即位式まではこちらに滞在するみたいだから、しっかり甘えろよ」

「やぁねぇ。私もぅそんな子供じゃないわ」

「子供の頃って言えばさぁ、叔母上がレライの婚約話聞いて激怒したらしいぞ。フィード猫しゃんと結婚するって言ってたのにって。まぁ相手が新王って聞いて諦めたみたいだけど」

「叔母様ったら相変わらずね」

二人の楽しそうな笑い声。そして告げられたその言葉に、扉を叩こうとしていたアイスラントは一瞬その手を止めた。

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