パウリンの娘

パウリンの娘《第30章3》

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忙しいとは言え、ローレライの顔を見る位は許されるだろうと思って訪れたのがそもそもの間違いだったのか。いや、正解だったのか?
ローレライが自分と出会う前に既に結婚話があったと言う事に、アイスラントは戸惑いを隠せなかった。
翌々考えてみれば社交界デビューも果たした伯爵家の令嬢だ。そう言う話があっても不思議では無い。
もし、母がパウリンの定めし事をローレライに伝えていなければ、既にその者と結婚が整っていたのかもしれないと思うとアイスラントは居てもたっても居られなかった。
ここはきちんと問い正して如何言う事か聞いてみようと思ったが、やっとここまで辿り着いた二人の関係がもし壊れてしまったら? その恐怖にアイスラントは苛まれた。
心の葛藤の末、自身に言い聞かせ、結局己の感情を押し込めアイスラントは扉を叩いた。

「笑い声が扉の外まで聞こえて来たぞ。何だか楽しそうだな。何の話だ?」

「アイスラント!」

ローレライはクッションに背を凭れながら満面の笑みで答えた。

「今日は午後しか時間が取れないって言っていたのに大丈夫なの?」

「いや。近くまで来る用事があったからな。顔色だけでも覗いて行こうかと思った。今日の気分はどうだ?」

「大丈夫よ。痛みも殆どないし。それよりアイスラント無理してない? 顔色が優れない様だけれど‥‥」

先程扉の中から聞こえて来た二人の会話が気になっているとはとても言えず、正直に現状を話してしまった。
ローレライが心配するから最近あまり寝ていない事はここ数日伏せていたのだが、ついロが滑ってしまった。

「大丈夫だ、仮眠は取った」

アイスラントの言う仮眠と言うのは30分だと言う事をローレライは先日聞いてびっくりした。
そんな事では直ぐに倒れてしまうと心配して言ったのだが、毎日では無いし戦場では何日も眠れぬ日を過ごしたこともあるからと全く聞き入れてくれなかった。

「そんなに忙しいなら、毎日来てくれなくても良いのに・・・・」

アイスラントは毎日ローレライの就寝前の1時間を必ず一緒に過ごしてくれている。
この様な話を聞いてしまえば遠慮して貰った方が良いのではないかとも思えて来るのは当然の事。愛すればこそ何と言われようともやはり身体は心配なのだ。

「私が訪れる事は迷惑なのか!?」

穏やかに見えたアイスラントの表情が告げた一言でみるみる内に強張って行くのが分かった。

最初は微笑ましく思われていた二人の会話が次第に一触即発の雰囲気になって来て、ルシオンは居た堪れなくなってきた。
本当にここに居ても良いものなのか? 何か口でも挿んだ方が良いのでは・・・・。

「あっ、あの・・・・」

だが、上手く言葉に出来なかった。

「そんな事ある筈無いじゃない! 私はアイスラントの身体が心配で、もぅ少し寝ないと身体が持たないわ!」

「そんなに軟な身体では無い。お前に会えない方が身体に悪い。心配で寝るに眠れん!」

だが言い合いになったその言葉の内容に呆れ返った。

「そんなこと・・・・」

告げられた言葉に頬を染め、真っ赤になり手を添えるローレライはとても可愛かった。

「また後で来る!」

アイスラントはルシオンに気付いた気配も無く・・・・。いや、敢て無視したのか? そのまま部屋を出て行った。

“もしかして照れ隠しか? ”

「御馳走様」

微笑を浮かべ、からかう様にルシオンはローレライを見据えた。

「いやだ。もぅ、お兄様ったら!」

暫く離れていた事が功を奏したのか? はたまたローレライの怪我がきっかけなのか? 思いの外円満な二人の姿にルシオンは終始笑顔を絶やさなかった。

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