パウリンの娘

パウリンの娘《第30章5》

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城にいる間、誰もがフル稼働で働いているようだった。
新王も休む間もなく動き回り、質問攻めの施工業者に次々と指示を出して行く。
財政担当にはマノン伯が、仮ではあるが人事異動と言う形で力を注いでいた。
アイスラントはマノン伯を重鎮としてだけではなく、重臣としても兼務する形で財務大臣の職に就けるつもりでいる。

「では、集められた金銀宝石類、装飾品は全て転売しても宜しいのですね」

「無論だ。前ザラゾール王と皇太后が買い入れた物は全て処分しろ。足りなければ倉庫に仕舞ってある絵画も必要ない。借金の返済を最優先にし、利息を払う事の無い状況を先ずは作ってくれ。巨額の利息をこのまま払い続けるままでは国庫の回復は図れない」

「御意!」

政務室では無く誰もが通るこの様な場で互いに気にする素振りも見せずに話し終えるとマノン伯は早々にその場を立ち去った。

アシュド伯はその会話を聞いて唖然とした。
ここ十余年も破綻していた国庫をこの新王は短期間に回復させるつもりでいるのか?

隠れていたつもりは無いのだが、思いがけず近くに居合わせ目が合ってしまった。
一礼をすると新王殿下が声を掛けて来た。

「お父上。居らしたのですか?」

「申し訳ございません。食後に庭園散歩を決めこもうとしていたのですが、話を少し聞いてしまいました」

「いえ。何の問題もありません。私は誰に聞かれても困るような話をこの様な場所では致しませんので」

「国の財政に関わる重要事項のように感じましたが、誰に聞かれても構わないのですか?」

「構いません。国庫が長年に亘り破綻している事も、王室が多額の借金を抱えている事も国民誰もが知っている事実です。最早隠しようがありません。私はそれを少しでも回復させようとしているのですから、それを知られて困る事等何一つありません。本来はこの様な事をエントランスで話す事では無いのでしょうが、今は時間が少しでも惜しいものですから、報告を待っているより私が動く事が一番時間の短縮になるのです」

確かにここまで厳密に自らが動かれていては時間は足りないだろう。

「一つ疑問なのですが、今何故この様な改修工事を!?」

見聞きした話に感銘を覚えたが、一つだけこの城に来ての改修工事が気になっていた。
どうして今、金のない時にこの様な浪費をするのか?

「ああ、あれは改修工事では有りません。補修工事です。それも金は払っていません」

「金を払っていない!?」

それはどう言カラクリなのか?

「ええ。実は前王と皇太后が客室の大掛かりな改修工事を致しておりまして、調度品や装飾品に巨額な財を投じておりました。形あるまま取り去りそのまま売却できるものは良いのですが、壁に埋め込まれた宝石類はどうしようもありません」

「では、その宝石類を!?」

「はい。業者に出来るだけ宝石類を傷つける事無く取って貰っています。その後の補修も兼ねて。報酬は集めた宝石類の中から好きなもの1つ持ち帰っても良いと言う事にして」

これには驚いた。
宝石類にはピンからキリまであるが、王室の客間に埋め込まれていた宝石類は、何度か宿泊した際目にした事があるがどれも高価な代物だった。

「良いのですか? それではこちらで回収して給金を支払う方が安く上がるのでは?」

「御存じありませんか? 前王時代に改正された一般労働に従事る者の固定賃金制度を」

アシュド伯はその言葉に息を飲んだ。

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