パウリンの娘

パウリンの娘《第30章8》

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サザーランド国建国以来、20代で宰相の地位に就いた者は今だかつていない。
歴代で一番若くしてその地位に就いたのはアイスラントの父である現宰相で、それでも30代半ばの頃だった。
オードラル公爵家はそれまでにも幾人かの宰相を輩出している名門の家柄で、当主は歴代王室の重鎮としての地位を誇る。
その家の出の現宰相ですら当時は若すぎると異論を唱える者があったと聞く。

「どう考えたってそれは無理だ。他の臣職にしても20代での起用は滅多にないぞ。あっても高貴な家柄だ。ハビロードとブレインは30代であるし、爵位にしても男爵の重鎮が居る位だから二人に問題は無いだろう。フリードルに至って若いが侯爵家の跡取りだどうとでもなる。だが、俺は子爵家の出だ。それも、元は平民の出で1代限りの士爵の所を、騎士となる者が続いた事から過分な取り立てで運よく子爵の地位を賜った。そんな家の出の俺が宰相だって? 現実を良く見ろ!」

「言いたい事はそれだけか?」

何を言っても全く気する素振りを見せないアイスラントにシザーレは呆れ返った。

「お前やっぱりおかしい・・・・。宰相って言うのは王に次ぐ権力者なんだぞ!? 何処の国に居る!? 子爵上がりの宰相が!」

「私はその様な事は気にしない」

「気にしろよ!!」

アイスラントが深いため息をついた。

「前例が無いなら作れば良い。それだけの事だ。改革は? お前が考え出した新たな助成制度は? 前例が無いからと言って諦めるのか?」

「それとこれとは・・・・」

「同じだ。今進めているのはその為の改革でもある。今の重鎮達の中には私を嫌悪する者も居る。その者をお前なら容易に御せると私は思っている」

「買いかぶりだ」

「お前が出来なければ何者を持ってしてもそれは無理だ。その時は諦めざるを得ないが、それでもお前ならその者等を翻弄させる案を考え付く。与えられた道が困難であればある程奮起する。お前はそう言う奴だ。その力をフルに発揮して貰う為には宰相と言う地位は絶対に必要だ。それにお前程無遠慮に私に毒舌を吐く奴も居ないしな。こんな立場で居たらその内私はつけ上がるかもしれん。その時はお前に私の奢りを諫めて欲しいのだ」

最後の言葉にシザーレは頭を抱えた。

「参ったな・・・・」

「それに、お前が気にしている爵位だが、私が重臣にと思っている者の中には一代限りの士爵の者も居る。気にするな」

「お前何を言ってッ! 馬鹿を言え!!」

全く呆れ返って二の句が告げないとはこの事だ。

「まぁ良い。父が宰相を退く時はお前が宰相になる時だ。その事は私の中では決定事項だ。どうしてもと言うならば、後の文句は父に言え。父を説得できればもぅ何も言わん」

アイスラントは全く悪びれる素振りも無く、憮然とそう告げた。

新王政権における重臣の決定は、王の推挙を受け宰相の承認により決定する。
シザーレは苦笑いを浮かべた後アイスラントにこれ以上口を挟む事はしなかった。

後日宰相の下を訪れたシザーレは、結局自分を承認せぬ様にとは一言も告げなかった。
ただ、如何言う意向で自分が宰相に推挙される事を良しと考えたのかその事のみを聞いたと言う。
その時の詳しい会話は二人にしか分らないものだが、最後に『お前の父に拝み倒された』とだけは言っていた。

アイスラントはシザーレの言葉に苦笑いを浮かべつつ『すまん』と一言告げた。

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