パウリンの娘

パウリンの娘《第31章3》

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そんな矢先の事だった。

「奥さま! フローテお嬢様が!!」

「ごめんなさいローレライ。今日のお勉強はここまでだわ。また明日にしましょう」

「はい」

フローテお嬢様と言うのは、先程話に出て来たアイスラントの二つ年上のお姉さまだ。
と、言う事は・・・・家出して!?

『もぅ嫌! もぅ絶対に別れてやるんだから!! この子はここで産んで、もう二度とランズワースの屋敷になんて戻ってやらないんだからぁ!!』

声を荒げて叫んでいる姿に、執事や侍女やらが宥めようと落ち着きない声を発している。
それでも冷静になれず叫び続けているかと思えば次の瞬間、大声で泣き始めた。

「お母様・・・・。お母様ぁ~~~。わぁぁ~~~ん!!」

「そんなに泣いてはお腹の子に良くないわ。とにかく座って頂戴。落ち着かなくては」

あまり聞くのは良くないと自室に戻ってはみたが、それでも声はどうしても聞こえてくる。でも、これだけ泣いているのだから、それ程よん処無い事情なのだろうとそこは察し、静かにしておくことにした。
晩餐も、自分が一緒ではきっと落ち着かないであろうと自室で頂くと侍女に申し付けると、それは筋が違うからとザビーネ様に叱られた。
娘の家はもぅここでは無いのだから貴方が気に掛ける事では無いと。
城に住む事になろうとオードラルの人間になるのは貴方なのだからと言って下さった。
とは、言ったものの・・・・本当に良いのだろうか!?

結局晩餐の席にフローテは現れず、食欲が無いからと自室で休んでいる。
ザビーネも晩餐では何時にも増して口数少なく、ため息の数も多かった。
もしかしたら事態は予断を許さぬものなのかもしれない。

その食事の最中、何やら来客があった。
途中で一言告げてザビーネは中座したが、どうやら客人は娘の夫のようだった。
そして、程なく戻って来ると、額に手を当て深いため息をついた。

「どうせ、こんな事だろうとは思っていたのよ・・・・」

そう呟き、話し始めた内容に、ローレライは不覚にも姉上様の事をとっても可愛いらしい方だと思ってしまった。そして何より夫である伯爵を、とても愛しておいでなのだと。

事の始まりは数時間前、ある宝石商がフローテの嫁ぎ先であるランズワース伯爵邸を訪ねて来た事から始まる。
その者が差し出したのは高額な請求書で、聞き覚えのないフローテは何かの間違いだと突き返した。すると、既に商品は当主に渡していると言われたのだ。
寝耳に水だったフローテは慌てて義母に確認すると、その請求書はどうやら義母へ回す様に言われていたものらしく、義母も少し慌てた様子だった事からピンと来たのだそうだ。
普段一人では行く事の無い舞踏会や催し物に、最近一人で率先して出かけていると言う事実。それに加えて今まで有り得なかった突然の宝石商からの高額な請求書。
もぅ、これは新しい恋人に渡したものに違いは無いと感づいたのだ。
それで屋敷を飛び出したと言う訳なのだが・・・・。

「それがね。やはり今回もフローテの誤解だったのよ。子供が生まれたら、フローテに感謝と労いの意味を込めて直ぐにプレゼントを贈りたかったそうなのよ。フローテは舞踏会や賑やかな事が大好きだからあの子に似合う特注の首飾りを作らせたそうなの。今は身重で心配だからそう言う出事は遠慮してくれと自分が強いているからお詫びも兼ねてですって。それで送るからにはやはり気にいられる物をと苦手な社交の場に一人で出向いて、あの子の好みそうなデザインや宝石の種類をフローテの友人達に聞いていたらしいのよ」

何て優しい旦那様なのだろう。

「でもね、こうなってしまえばもぅ隠した所で溝は深まるばかりと思うのよ・・・・」

確かに、この状況では誤解を解くには全てを告白してしまうのが一番だと思う。
感謝のサプライズの為か何かは知らないが、こんな馬鹿馬鹿しい誤解なんてない。
と、思っている時だった。
今度は物凄い勢いで、侍女頭が食堂の扉を開いた!!

「大変です!! フローテ様が破水されました!!」

聞くや否や瞬時に椅子から立ち上がり、走り出したザビーネにローレライも続いた。

扉の外で待つようにと言われたローレライの耳に入って来た男性の声は、破水を起こしたことで急激に陣痛が早まったらしい妻を懸命に励ますものだった。

痛みに苦しむ姉上様には申し訳ないと思いつつも、ローレライにはその事がとても羨ましく感じられた。

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