パウリンの娘

パウリンの娘《第31章4》

 ←パウリンの娘《第31章3》 →パウリンの娘《第31章5》
王としての業務は、議会や視察が無い時は多くを政務室で過ごす。
新しく取り入れる事となった政策の決定事項や各省からの報告書の認め、領主からの報告や要望書、市民の声。
そして、一番厄介な日に数名の者との面会・・・・。
会いた者には会えないのに、何故会いたくも無い者に会わなければならないのか!?
自然と深いため息が漏れる。

正式に玉座に就いて2週間が過ぎ、当初息抜きに夕刻には必ず1時間は剣の鍛錬に時間を取るよう計画を入れていたにも関わらず、最早忙しさにそれすらなし崩しとなっていた。
王としての職務がこうも過酷なものとは思ってもいなかった。
体力的にでは無く精神的な意味で。

「仕方無いさ。そうでなくてもここまで衰退した国だ。国庫はなんとかなったが、これからまだ改正しなければならない事は山積みだ。国益の回復も図らなければならないし」

「分かっている」

政務がどれだけ重要な事かも分かっているし、投げ出すつもりも無いが、こうも自分の精神的支えである事を奪われてしまっては幾ら夜の睡眠時間は以前より確保出来るようになったとは言え、疲れは溜まるばかりで一向に取れない。

顔を合わせる度に何処か疲れているそんなアイスラントの様子に、今日ばかりは剣の手合せだけでも付き合ってやろうと新宰相シザーレは心に決めていた。

そんな矢先の事だった。
火急の使者がオードラルの屋敷から訪れた。
ローレライに何かあったのかと慌てて書状の封を切り、中を確認した。

「・・・・・姉上に、男の子が生まれた・・・・」

「そうか、それは何よりだ! では急ぎデンズワーク伯爵家に使者を送り訪問日を定めよう」

「いや、今から出かける!」

「それは無謀だ。幾ら何でも王が行き成り行くと言うのは先方にとっても大事だ。それにこちらとしても安全を期する為にきちんと人を先行させてからでなければ、何かあれば一大事だ。でも・・・・、ちょっと待て。お前、姉君とはそんなに仲が良かったのか!?」

何時になく落ち着きが無く事を急ごうとしている節のあるアイスラントに疑問を抱いた。
シザーレの記憶では、アイスラントがプライベートで姉に会いに行くなど無かった筈だ。
口うるさい姉とは出来ればあまり関わりたくも無いとさえ言っていた記憶すらある。

「いや。どうやら実家で産気づいてそのまま出産したらしい」

“そう言う事か!!”

何時になく輝きに満ちた瞳は、まるで少年のようだった。

本来婚約期間2か月は王妃となる者は決められた者以外の異性との接触は許されない。
任された公家は不祥事が無いように監視を担うのも本来の役割の一つだ。
お妃となる者には清い状態で王を迎える準備と、より良い環境でお妃として恥じぬ教養を身に付ける為と教えられる。
王と言えど、その間の接触は余程の理由なしには許されない。
お妃教育は、一月目は教育を任された公家に委ねられ、二月目は城で実践を伴う教育が行われ、用途に応じての対応策などを学ぶが基本は同じだ。
ただ一点、違う事はと言えば晩餐のみは王の都合にもよるが、一緒に取る事が許される。
それ以外で許されるのは双方の近親者の冠婚葬祭、若しくはそれと同等な吉事、公的な行事で共に参加が必要とされる場合は例外となるが接触で許されるのは晩餐同様会話のみだ。
そして今回の場合は一様王にとっては吉事と認められる出来事だ。
アイスラントは、この時ばかりは姉と、このタイミングで生まれて来てくれた甥っ子に心底感謝した。
触れ合うことは許されずとも垣間見る事や話し位は出来るかもしれない。
自ずと期待は膨らむが、それは致し方ないであろう。

「分かった。直ぐに出かけよう。オードラル邸なら既に護衛兵が付いているし何の問題も無いだろう」

「私に護衛など必要ない!」

憮然とそう告げ既に机の資料を纏めはじめたアイスラントにシザーレは苦笑いを浮かべた。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村



総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第31章3》】へ
  • 【パウリンの娘《第31章5》】へ

~ Comment ~

NoTitle 

ザビーネさまが許すわけもないのにアイスラントくん……(^^;)

ポール・ブリッツ様 

そうそう。
会わせて貰える可能性が少なくても、つい期待をしてしまいたくなるアイスラントの心境でした^^
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第31章3》】へ
  • 【パウリンの娘《第31章5》】へ