パウリンの娘

パウリンの娘《第31章5》

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結局、アイスラントは宰相に言われ、残りの政務を急ぎの物だけ最低限終わらせると、オードラル邸に向うべくそのままの格好で城を出て厩舎へ向かおうとした。

「おい、待て。まさかお前騎馬で行く気じゃないよな」

シザーレに止められた。

「無論だ」

「それは不味いだろぅ・・・・」

最初の視察に赴いた時だった。いつもの格好で護衛の騎士を伴い騎馬で出かけたら、次の週始めに行われる重鎮等との会談の席でこっ酷く叱られた。
王が王ならば宰相も宰相だと。何故止めなかったのだと。王としての威厳が損なわれると・・・・。
アイスラントは容姿や形だけで全てを捉えようとするから視野を狭くさせるのだと両断し、その言葉に同意する者もいたが、それでも多くは難色の言葉を口にした。

「今何と言った!? 着替えて馬車で行けだと!? 行くのは公の場では無い。私の実家だ。騎馬で行って咎められる道理はない!」

「そんな道理があの堅物連中に通じると思うのか!?」

唯ですら普段は落ち着くからと見るからに騎士の格好そのままに政務を行っているアイスラントだ。このまま祝辞に訪れたとあってはまた何を言われるか分かったものでは無い。

「だから、早く奴らを何とかしてくれ。私は諸々の式典や祝賀行事以外であのような無様な格好をするつもりは無い!! それに馬車にばかり乗っていたら気晴らしも出来ん」

それが本音か・・・・。
おそらく、近隣諸国の王族で威厳に満ちた王の煌びやかな衣装を無様と言いのけるのはコイツ位だろう。

結局、アイスラントは聞き入れる事無くそのまま愛馬イクタシオに跨り、シザーレはしぶしぶその後を追う事となった。

その頃オードラルの屋敷ではアイスラントが訪れる旨の知らせが入るり、慌ただしくなっていた。
ただ、息子が帰って来ると言うのではない。王となった息子を迎えると言うよりも、今はお妃教育中の娘を預かっている身。おいそれとはそう易々と入れる訳には行かないのだ。

「ローレライ、大変! アイスラントが帰って来るの。早く自室へ戻って!!」

「えっ!? アイスラントが!?」

ローレライも戸惑いを隠せない。
この時、実はローレライには少しばかり思う事があったのだが、接触がタブーな突然の息子の来訪と孫の誕生に浮足立っていたザビーネはその様子に全く気付いていなかった。
とりあえずローレライを自室に押し込めた。

程なくして訪れたアイスラントは直ぐに姉との面会が許され、シザーレをエントランスに待たせたまま姉の部屋へと向かった。

「姉上、この度は無事御嫡子の御出産おめでとうございます」

「有難うアイスラント。でも、貴方がこんなに早くお祝いに訪れてくれるなんて意外だったわ。もしかして、理由は他にあるのかしら?」

勘ぐり薄笑みを浮かべる姉に、少し視線を逸らした。

「言ったじゃありませんか、甥っ子が生まれるのを楽しみにしていると」

にっこり微笑みそう告げると傍らに寄り添う、初めて見る甥っ子に目を向けた。
子供に関しては上の姉の餓鬼どもで苦い経験があった為、苦手意識が今まであったのだが、屈託のないあどけない表情に自然と笑みが零れる。

「ふっふっふっ。可愛いでしょ。お母様曰く、これに黒髪だったら生まれたばかりの頃の貴方にそっくりなんですってよ」

「へぇ~」

頬をツンと突っついてみたら、口をもそもそさせたかと思うと目をパッと見開いた。
その瞳の色は伯爵とも姉とも違う自分と同じ薄い紫色だった。
思わず手を握りあやしてみると。

「そうやっていると貴方の息子でも可笑しくないわね」

「なっ、なにを馬鹿げた事を!」

アイスラントは慌てて顔を背けたが、その横顔はほんのり色づいていた。

フローテは弟に婚約者がいる事を勿論知っている。
母曰く、それが想い人であると言う事も。
その姿に姉は弟にも近い将来同じ幸せが訪れる事を願わずにはいられなかった。

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