パウリンの娘

パウリンの娘《第31章12》

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事を勘ぐり様子を伺ってみれば、方々で確かにこの話題は話しの種となっていた。
隣国アリタリスの王女をグルバルトの屋敷に追いやった事で全てが収拾したと思っていたアイスラントとシザーレはその事実に目を逸らせていた自らを心底後悔した。

ローレライの侍女メイテルがこの話を最初に聞いたのは、ローレライ本人からで、どうやらアイスラントの実家であるオードラルの屋敷が事の発端らしい。
母を呼びつけ詳しい話を聞いてみれば、伝令の者が城での噂話を心配して母に相談した事が始まりだと言う事が分かった。
他言はしていない事から、きっとローレライは二人の話を偶然何らかの形で聞いてしまったに違いないと。

直ぐにその伝令の者を呼びつけ、出所が何処かと確かめれば、どうやら赴いた際に一時的にと通された控えの間で一緒だった者等の話を聞き入れた事が始まりだと言う。

あの日、伝令の使者が訪れた前後にアイスラントが面会に応じた者は、ジグニードと孫娘、それと隣国タリアラスの家具の飾り職人だった。

「何でもジグニード候とその家具職人が控えの間で口論となったらしい。最初は二人で世間話をして笑いも漏れていたらしいのだが、その内互いの国のお国自慢が始まり、やがてそれがあらぬ方向へと進み、侯爵が、孫が王の側妃になる事が決まっていると得意げに自慢話を始めたものだから、その職人も器量良しなら我が王女様も負けてはいない等と言い始め、うちは王女だから正妃にもなれる身分だと自慢した事でどちらが王に相応しいかと言う話にまでエスカレートしてしまったようだ。だから事の発端は侯爵の絵空話が原因の可能性が高い。もし、面会に訪れる度にこの様な諍いを他の者ともしていたのであれば尚更な。例え話が何処でどう履き違えてしまったのかは分らないが、独り歩きを始めてしまったのだろう。これも憶測だがおそらくこの話を外に広めた中心人物はおそらく侯爵と孫娘、そしてその者等と今まで控えの間で一緒になった者達だろうな。そうでなければ、帰り際にも伝令の者が他で耳にするなどありえないだろう」

と、言う事はやはり以前に城内を飛び交った噂話がまだ消えていなかったと言う事になる。

「噂話と言うものはより面白い方に広がっていくものだ。侯爵の孫と隣国の王女とでは噂話のネタとして面白い方はどちらだと思う? 少し城に訪れただけで話を耳にする位だ。伝令に来た者はこのまま知らぬ振りは出来なかったのだろうな。それもそうだろう。今自らの仕えるお屋敷にはお前の妃となるべく必死に頑張っているローレライ嬢がいるのだからな」

「・・・・それを母に伝えている所に、運悪くあいつが出くわし聞いてしまったのか・・・・」

「ああ。それで相談を受けたあの侍女が、城に戻ってから仲間内の侍女にそれとなく話を聞くと色々な情報が入手出来たらしい」

それはローレライが城に戻る直前までアイスラントが頻繁に王女と会っていた話や、噂で飛び交った話もさも実際にあった事かの様に実しやかにささやかれ、ひいては王女様が正妃に納まれば恐らく傍に付く侍女は自国の者で固められ、今回新たに王妃様付となるべく雇われた侍女たちの多くは暇に出されるだろうと言う話にまで持ち上がっていたらしい。メイテルに関しては『あなたはローレライ様に古くから仕えているからこれから先も食いっぱぐれる事がないから良いわね』とまで言われる始末だったとか。
これをそのままローレライの耳に入れた訳では無いだろうが、そこまで話が大きくなっていたのならばメイテルが話さなくても自然とローレライの耳に入って行ったのかもしれない・・・・。
そう推測すると、アイスラントはいたたまれなくなって来た。
自分は既に過去となるローレライの結婚話の相手がフリードルであったと分かっただけでもこれ程落ち着かない気持ちでいると言うのに、もし、ローレライが自分に対し同じ気持ちで居てくれていたとするのならば、その衝撃は計り知れないだろう・・・・。

「・・・・私はどうすれば良い?」

直ぐ側に駆け付け、抱きしめ、自分の本心をありったけぶつける事が出来たならば、事はこれ程までに複雑にはならなかっただろう。
しかし、今はそれが許されないのだ。
アイスラントは頭を抱えて大きく項垂れた。
勿論話の発端となったジグニードと孫娘への制裁は言うに及ばず、だがタリアラスの家具職人に関しては自国の王女を誇らしく思ったと言うだけで罪に問われる筈も無い。
それ以外で流れる噂話も似たような出所となれば犯人として捕らえられるべき者は明らかに風潮を促した2名以外は何者も存在しないのだ。
おまけにこの2名は恐らく今回の王女寵愛疑惑には加担していない。

「正直に、調査の詳細をありのまま話すしか無いだろう。それをどのように捉えるかはあの侍女とローレライの問題だ。だが、少なくともあの侍女にはお前のローレライに対する熱意は伝わっていると思うぞ」

「そう願いたい・・・・」

アイスラントは、困惑の表情を浮かべながらも、侍女に全てを任せるしかなかった。

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