パウリンの娘

パウリンの娘《第32章13》

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式の後、二人は急ぎ城へと戻る。
知らせを受けて、正門が開けられると門前で待っていた市民が一斉に城の中庭へと雪崩れ込んできた。

城の各所には建物の中へは絶対に入れぬ様に幾重にも兵が置かれている。
王と王妃の二人の周辺は常に近衛騎士にしっかり守られていた。

控えの間でしばしの休息をするアイスラントとローレライの二人の前には早朝ローレライが温室で新芽を摘んだハーブティーが注がれていた。

「これをお前が?」

「もぅ、こう言う機会は無くなると思うから、最後に少しでも自分でやりたかったの」

“アイスラントの世話を・・・・”

その言葉をローレライは飲み込んだ。

「もぅ、出来なくなるのか?」

「色々自ら作ったりするのは、王妃のする事ではないのだそうです。だから、私が手に掛けるのはこれが最後です」

「寂しいな・・・・」

「前例が無いのだそうです。王妃が厨房に入るなど」

「では、そこも改革しよう」

「えっ!?」

「お前がもぅ作りたくないと言うのであれば、口を出す事では無いが、やりたいならやればいい。前例が無いと言うのは理由にならん」

「良いの!?」

「王が変われば王室も変わる。王妃のあり方もまた変わればいい」

「アイスラント!」

「どうしても周りが許さなければ、私達の部屋を少し改装しよう。私はお前の菓子がこれからも食べたい」

「有難う」

アイスラントの言葉は、城暮らしの慣れないローレライにとってかなりの救いとなった。
この先何があったとしても、好きなお菓子作りだけは続けられると言う事はこれから先においいての一つの救いになるであろう事を思わせた。

「陛下、そろそろお時間です」

宰相シザーレの言葉に促されて席を立つ二人。

満員に埋まった中庭を一望し、ローレライは身が竦んだ。

「大丈夫か!?」

ローレライの腰に手を回し、親密に寄り添う新王アイスラント。
ニッコリ微笑みかける優しい眼差しに思わず涙が零れそうになった。

“今だけは幸せに酔いしれて良い!?”

自分にそう問い掛け、ローレライはその腕に身を預けた。

二人は息を飲むと、気を引き締めてバルコニーに向かう扉を開いた。

微笑ましい新王と王妃の姿を目にした民衆からは歓喜の声が広がる。
笑顔で手を振る二人の姿が、民衆には永遠に繋がるものに感じ取れた。

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