パウリンの娘

パウリンの娘《第33章3 -終章-》

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やっと笑いが収まった頃、恐る恐る声を掛けてみた。

「・・・・大丈夫か!? ・・・・正気か!?」

「大丈夫だ。正気も何も、全く問題ない!」

想像とは全く違う反応に、ルシオンは何処か間が抜けたような顔をしている。
それとは反対にしっかりとした口調で次の瞬間、年上の義弟は急に真顔になった。

「一つだけ聞く。ローレライが私を好きになったからパウリンに私が映し出されたと言う事で、本当に間違いはないんだな? 私があいつから拒まれる理由は、それ以外何一つ存在しないのだな?」

その表情は真剣で、射抜かれるかと思える程だった。

「間違いない。レライがお前への想いに悩んで、パウリンに映し出されるかもしれない見えない婚約者の姿の影に毎日怯えるようになっていたのを俺は知っている。本当に悩みに悩んで見ていられなかった。でも、運命には逆らえないからと受け入れる覚悟を決め、決死の想いで覘き見た。そこにお前が映し出されて、あいつは本当に喜んでいたんだ。でも、お前を運命に巻き込んでしまう事に凄く悩みもしていた。そんな中でやがて、お前との距離が少しずつ近づいて俺もやっとあいつは幸せになれるんだと確信していたんだ。そこにあの手紙だ。お前には不本意かもしれないが俺はそれでもレライにお前と幸せになって貰いたいと今でも願っている。こんな都合の良い話はないかもしれないが、その事を全て踏まえて新しい気持ちであいつとこれから向き合ってやれないだろううか?」

「それは無理だ!」

即答だった。

「・・・・なら仕方ないな。それなら早急に離縁してやってくれ。このままじゃあまりにお互いが不憫だ。お前からしてみれば騙されたようなものだものな・・・・」

ルシオンは微笑を浮かべると静かに呟く。

「だから、無理だ!!」

“何言ってるんだ? コイツ・・・・”

「・・・・何が、無理なんだ?」

ルシオンは話が見えない義弟に首を傾げた。

「お前の話、全てが無理だ! 元々好きだった相手に告白されたも同然のこの状況の私に、離縁など受け入れられる筈が無いだろう!?」

「・・・・元々好き・・・・だった!?」

「悪いが・・・・、もぅお前の話に付き合ってやれる程の余裕は無い!!」

そう告げるとアイスラントはやりかけの書類をそのままに走り出した。

ルシオンは呆気に取られ呆然と立ち尽くし、年上の義弟を見送った。


「・・・・何だよ。悩むより先に、やっぱりあいつに話せば良かったんじゃないか・・・・」

やがて正気を取り戻しボソリとそう呟くと、大きなため息をつき肩を竦めた。


「あれ!? 王は?」

席を外していたシザーレが、王と入れ違いで執務室へと戻って来た。

「愛しの奥方の所」

「上手く行ったのか?」

「異常な位にね」

実は今回ルシオンを登城させたのは宰相であるシザーレだった。
式を挙げてからと言うもの、我を忘れた様に政務の鬼と化したアイスラントは手が付けられなかった。
休息も殆ど取らないまま日夜取り組むその姿に、きっと奥方との間に何かがあったのだと言う事は明らかだった。
やっと想い人と結婚でき、幸せの真っ只中であるはずのこの時期に、政務が疎かになる事も多少致し方ないと思っていたシザーレにとって、ここで寝食を過ごすと言う事は異常以外の何物でもなかった。

「お前に頼んで正解だったな。何か礼をしたい。何が良い?」

「サンドラに会わせて」

即効だったその答えに、シザーレは苦笑いを浮かべると簡単に何かを書き留め、それをルシオンに手渡した。

「今私の家に居る。今日は王の代行で政務が忙しく帰れんからそう伝えてくれ。それを見せれば茶ぐらい御馳走してくれるだろう」

満面の笑みで受け取ると、ルシオンは楽しそうに執務室を後にした。
勿論、妹の幸せを願って。

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