記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《1.求 婚》

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ナチュリア国のマーチェリー伯爵家の娘アーリアは、先月第一王子であるセイラルより求婚された。
王子とは直接面識は無い。
年に一度招かれる王室主催の晩餐会の席で、末席から垣間見ることはあったが、勿論話をした事すら一度も無い。
なのに、何故!?
アーリアはこの話を聞いた時、絵空事に過ぎないと最初は信じなかった。

誰もが羨む第一王子からの求婚。
その話は瞬く間に貴族社会の話題となり、アーリアは一夜にして時の人となった。
普段、誘われても舞踏会や若い貴族が招かれる交流広場と名する茶会にすら滅多に顔を出さない自分をどうやって見知ったのか?
伯爵も登城する度に毎日同僚に同じような事を問われるようだが、全く持って分らなかった。

両親はと言えば、降って湧いたまさかの出来事に歓喜する始末。
とても直ぐに断ってくれそうにない。
元よりアーリアもお断りしますとはとても言い出せなかった。
とにかく今は突然すぎて考えが纏まらないから暫くそっとしておいて欲しいと両親には告げていた。
だが、本当の理由は全く異なる。どうしても両親には口に出来ず戸惑い、以来ずっと憂鬱で仕方ない。
実はアーリアには秘かに想いを寄せる者が居るのだ。

それは街へ侍女と買い物に出かけていたひと月程前。
馴染の店で買い物を済ませ、馬車に戻ろうと少し先の停め場まで歩いている時だった。
見知らぬ者に絡まれたのだ。
昼間であると過信して侍女と二人で出かけたのはやはり不味かった。
幾ら断ってもお茶をしようと強引に迫り一向に引かない男達。
その嫌らしい目つきに恐怖を覚え、尻込みしながらも応戦し啖呵を切り自分を守ろうと必死に捲し立てる侍女の姿に、何とか勇気を振り絞り『助けて! 』と叫んだその時だった。
颯爽とその者は自分の前に現れた。

『お酒を飲まれていますね。現行犯です! 今回は流石に言い逃れはできませんよ!!』

見知った者だったのか? 青年の年齢を知って居るような素振りと気丈な態度。
この国での飲酒は18歳以上と決まっている。恐らくこの者は未成年だ。
手を掛けようとしていた腕を取ると捩じ上げ、その者が膝から崩れ落ちると、向かって来る供の二人に対しても急所を蹴り上げ見事瞬時に片づけてしまった。
どう見ても唯の者では無い。武術の心得のある者だ。
蹲る男らを放置したまま

『今の内に!』

と、手を引かれ、侍女と一緒に停め場まで走った。

馬車まで送られるとお礼を述べ、侍女が後程正式にお礼に伺いたいと申し出て、何処のお屋敷の者か尋ねたのだが名のる程の者では無いと教えては貰えなかった。
服装から恐らく何処かの貴族の従者である事は間違いないだろう。
その後探し出そうと、率先して多くの舞踏会へも参加したのだが近寄って来るのは王子からの求婚話を聞きつけた多くのうわさ好きな者達ばかり。何の行動も起こしていないアーリアに対してまでも罵倒する者まで現れる始末。
直ぐに居づらくなり帰ろうとすればお高く留まってと罵られた。
結局何処でも同じ状況で、途中で回避を余儀なくされるのだが、あの従者が付き添う殿方の姿すら見つけ出す事が出来なかった。

自暴自棄になり、従者なんて好きになっても仕方ないと自らに言い聞かせた。
早く忘れなければと言う思いが夢にさせたのか?
諦めるしかないと思ったある日、その従者が突然夢の中に現れたのだ。
今度はラルと名乗る敵国の王子として。
風貌は幾分違っては見えるが何処かでそれはあの従者なのだと自分の中の何かがそう叫んでいた。
そして縋る様な目で見つめるのだ。
まるで自分を忘れないでくれと言っているかのように・・・・。

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