記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《6.従 者》

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従者マジミールは母方の遠縁に当たる男爵家の次男坊でセイラルとは同い年。
髪の色は違うが容姿の特徴が王子と良く似ていた事から13の時より城に召し上げられ王子の従者として仕えている。
当時選定の場には、母国より母である王太子妃も面談に立ち会った。
王太子妃の最も注目すべき点は過去幾つかの暗殺未遂事件の話を聞いた時に動ぜぬ者。
話を聞くと大抵の者は即座に狼狽えるのだがマジミールだけは違っていた。
果敢にも目を輝かせ、意気揚々とこの誘いを受けたいと申し出たのだ。
この話が無ければ近い内に近衛騎士に志願し、王のお傍でお守りする心積もりがあったと告げだ。信愛する王の孫に当たる王子を守る事ができるのならば、それが天命だとも言ってくれたのだ。
王妃はこの者に全てを任せようと決断した。

『まだ先の話ですが、帰還して後は黒幕が分かるまでセイラルには王子としての素性を隠させ、表向きは貴方に王子と偽り城で過ごして頂きます』

信用してゆくゆくの計画まで全てを話した。
話を聞くとマジミールはその言葉に臆される事も無くこう告げた。

『王子はこの身に変えましても私がお守り致します』

それが王妃と自国の王を前に、マジミールが初めて王子に誓った言葉だった。

マジミールは従者として雇われた後、予てからの希望もあって王子と二人で騎士見習いとして身を置き、称号を得てからは共に騎士隊へと入隊した。
7年間、共に学び、共に助けあい過ごして来た。

こうして2年前、王子はこの母国へと親友である従者と共に帰還した。
王は15年ぶりに再会する偽の息子であるマジミールを王子セイラルと信じて疑わなかった。

帰還して2年の間にも、騎士の称号も得て勇ましく育った王子は武闘大会以降剣で襲われる事は無くなったが、毒は何度となく盛られた。
だが、これも修行の成果で世にはびこる多くの毒薬を微量で嗅ぎ分け判別できる程に成長していた。
飲用に関しても、日々微量の毒を摂取し続け、従者と共に抗体を植え付ける事に成功していた。
簡単には死ねない。いつか巡りあう愛しい者の為にも。
セイラルもそれなりの覚悟を持って帰還した。

セイラルが自分の記憶に気付いたのは幼少期に乳母が読み聞かせてくれた読み物がきっかけだった。
初めての話なのに何故か知っていると思った。
そして、何処か違うと感じた。それが何なのか当時は分らなかったのだが・・・・。
その事を乳母に告げると、この国では有名な話だからきっと何処からか耳にしたのだろうと言われた。
その時はそうなのかと漠然と思っていたのだが、母の母国であるナジス国へ行ってからも時折その話を夢に見る事があった。
『きっと故郷が懐かしいのですね』と乳母に言われ、当時はそうなのかとあまり深く考える事も無かったのだが、成長するにつれそれは何処か違うと思い始めた。
だが、それが何なのか現実のものとして捉えられずにいたある日、母が従者として雇い入れたマジミールに会って覚醒した。
その時に感じたデジャブーは雷に打たれたようなものだったのだ。

(「私はこの者を知っている!!」)

共に過ごす中で、マジミールも漠然とだがセイラルに何かを感じている事を知った。
それは何なのだと訪ねれば、初めて知らされる新事実が返って来た。
マジミールの一族には稀に前世の記憶を語る者が存在すると言うのだ。
奇しくも自分はその者の一人で、かつて自分は失われたザイルと言う国の王子ラルフグレード付近衛騎士であった事。王子の母国との戦いで敗れ双子の妹が王子を逃がす為に命を落とした事を語り始めた。
妹は王子に恋をしていた。報われぬ恋と知りながらも・・・・。

「私はあの時、妹と約束したのです。何があっても王子をお守りし逃がすと。しかし、その願いは叶わず、私は王子を守り切れなかった・・・・とても無念でした」

マジミールは、妹との約束である王子を守り切れなかった事に自責の念を抱きつつ命を落としたそうだ。
セイラルは話の途中で漠然とだがある事を思い出す。
自分には幼馴染にして宰相の子息である親友がずっと傍に居た事を。
そしてその者の名はミード・・・・確か自分はその者をそう呼んでいた。

「もしかして、お前はミードなのか?」

何となく、おぼろげに思い出した人の名を口にした。
その瞬間、記憶の糸が解けた。

二人は奇しくも共に同じ時に前世の記憶を持つ旧友だった。
前世の記憶に囚われる者は、過去に余程の未練がある者だと言う。
自分の場合は幾度も夢に出て来るリアと言う娘で間違いないとこの時確信した。

この事実を知った時、セイラルは自分が母の母国ナジルへ来ることは必然だったのだと理解した。
このマジミールと出会う為だったのだと。
マジミールもセイラルと出会い、関わるようになった経緯と知らされた事実から、セイラルへの忠誠心は一掃強くなって行った。

同じ境遇に遭い、同じ思いを残して敵国で死に、一方は敵国の王子として生まれ変わり、もぅ一方は母の母国で記憶を持ち、縁者として再び生を受けた。
互いの記憶の断片をつなぎ合わせ、戻る頃には二人の想いは固まっていた。
セイラルはどんな事をしても愛しい者達を探し出す、マジミールは今度こそ妹との約束を果たしてみせるのだと。
不思議だがセイラルはこの時、マジミールが居れば絶対に愛しの姫に巡り合えるのだと信じて疑わなかった
それは二人を結ぶ絆かもしれない。

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~ Comment ~

NoTitle 

こんにちは。お邪魔します。ヽ(*´∀`)ノ
昨日は私のブログに訪れてくださってありがとうございました!

ここまで一気に読ませていただきました!
(もっと読みたいのですが、今日は外出するので時間があまりなくて)

夢の中の敵国の王子様、前世の記憶…。
これからの展開が楽しみです。
ファンタジーの世界がとても色濃く出ていて、魅力的な作品だと思いました。

パウリンの娘もずっと気になっていたので、
ちょっとずつ読ませていただきたいと思います。

私はケータイ小説も書いています。

http://ip.tosp.co.jp/BK/TosBS100.asp?I=sha_la_1

http://ip.tosp.co.jp/BK/TosBS100.asp?I=sha_la_2

女子中学生・高校生受けするために、ちょっと(かなり?)Hなものも多いです(汗)
上のリンクの「死神の婚約者」シリーズなどはファンタジーです。
下のリンクの「有名進学校の彼氏と3流高校の私」は、
トーナメントで準優勝取った作品を元にした作品です。
短い作品もありますので(一部Fantasiaブログとかぶっているものもありますが)
もし、ご興味を持たれたら、読んでみてください♪

また、お邪魔させていただきますね~♪

Sha-La様 

今日は。いらっしゃいませ^^
一気に読んでいただけたようで有り難うございます。
魅力的な作品と言って頂けて作り手冥利に尽きます。何だか恐縮です^^;
これからの展開が楽しみと言って頂けると書く意欲が増々湧いてきます♪
パウリンの娘はかなり長い作品になってますので何れきちんと見直し改稿もしたいと思いつつ長すぎて中々手が出せません^^;
時間がある時にでもゆっくりお読み頂ければと思います。

私も昔は投稿用にファンタジー以外の物に手を出した事もあるのですが、好きなものを書いてる時の満足感が全然違い、今は書く方はファンタジーしか手が出せなくなってしまいました^^;
読む方はファンタジー要素が無くてもホラー以外全く問題ないのですが^^;
好み的には恋愛ハッピーエンドストーリィが入っている事は外せません。(SFも実は好き)
時間を見つけてまた携帯小説の方も覗かせて頂きますね^^

私もまた伺わせて頂きます。
心温まるコメント有り難うございました^^

NoTitle 

ここまで読みました。

お家騒動プラス貴種流離譚(^^) 面白くならないはずがないですね。

また読みに来ます~(^^)

ポール・ブリッツ様 

早速沢山お読み頂き、有り難うございます^^
ご期待に添えるようになっているか分かりませんが、好きなジャンルなので頭を捻りつつ自分なりに頑張っています。
初めて挑戦する内容も出て来るので、もぅ大変なんですが、これも修行の一環と思いとりあえず頑張ってみました^^;
引き続き楽しんで頂けると嬉しいです♪

いつも有り難うございます^^
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