記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《8.苦 渋》

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帰国してからの2年間、セイラル王子は自室以外の場では従者として行動して来た。
執務室でもマジミール以外の者を通常入れず、政務自体はセイラルが熟していたが、他者の訪れが有れば直ぐに位置を交代していた。
ノックもせずに無粋に入って来る者も居ないので、今だかつてこの行動において危機感を感じた事は無い。
もしもの時の為に、筆跡も似せて書けるようにマジミールは訓練しており、全ての事において作り上げたセイラルに疑念が掛からないように最善の注意を払い行動していた。
この国でセイラルが本当の姿を明かせるのは、一緒に母の実家から戻って来た乳母とこの従者マジミール、そして母である王妃と隠居生活を送る前王の4人だけ。
他の者は従者マジミールが王子セイラルである事を誰一人として知らないし疑わない。
それ故本来ならば妃を娶るなどと言う事はまだ考えられなかったのだが、事は急変した。
何と出会ってしまったのだ。愛しの姫に・・・・。
それも妾腹の弟の目の前で!!

街でアーリアに声をかけたならず者は、17歳になる第二王子サニエルだった。
サニエルは父が即位して間もなくの頃より、自分の地位を鼻にかけ、気の合う同じ年頃の貴族連中とお忍びで街へ繰り出すようになったらしい。 
最初は夜会で見つけた遊び好きな令嬢らと一夜の逢瀬に身を任せていただけだったらしいのだがそれでは飽き足らず、やがて町中に出歩くようになったそうだ。
金で女が買える事を知り、その手の店で女を買い漁ったり、酒を飲み歩いたりと言う物珍しい遊びに最初の内は夢中になっていたらしいが、年不相応だと責め立てられればやがてそれはあらぬ方向へと目が向けられた。
今度は町娘に手を出す様になったのだ。
初心そうな娘を引っ掛けては別邸に連れ込み、言葉巧みに夢中にさせ初めてを散らさせる。それがこの所の一番の楽しみらしく、自分が飽きるまで奉仕させ、思い道理に操る事が出来るようになれば興味が無くなるらしい。何という鬼畜な所行だ!
飽きた後がもっと最悪で、泣き縋られてどうにも出来ずに手を持て余す様になると父に頼み込む。
父は王命として下級貴族の許へ娘に多額の持参金を持たせて無理矢理引き取らせる始末だ。おそらくその金は国庫から排出されており、この事が民に知れれば一大事件になる事は疑う余地が無いだろう。
その中には婚姻後数か月で出産に至った娘も居るらしく、おそらくそれは、第二王子の落し子の可能性が高い。
半分とは言え同じ血が流れていると思うだけで悪質すぎて虫唾が走る。
その鬼畜な弟が世慣れた貴族の令嬢や、町娘では飽き足らず、ついに初めて初心そうな貴族の令嬢に興味を示したのだ。
それが何の因果か、自分がずっと探し求めていたリアだったとは・・・・。
見初めた以上、弟はおそらく異常な程にしつこい。獲物に対する執着はかなりのものらしいと聞いていた為、弟より早く自分のモノにしておく必要があった。
間違ってもあの鬼畜な弟に等アーリアの初めてを渡す訳にはいかないのだ!!

すぐさま素性を調べ上げ、父に告げ求婚を申し込んだ。
サニエルがどれだけアーリアを気に入った所で第一王子の妃となれば、流石の奴もそう簡単には手が出せないだろうと踏んでの行動だった。
出せば大事になる事は奴とて分かっている筈だ。
唯ですら弟の所行は既に多くの貴族が内々に知る所だ。貴族の中にもあの年で既に愛人と思しき者が幾人か存在すると言う。その状況で更に兄王子の妃となる者に手を出したとなればおそらくこの先表の道は歩めない。勿論そのような事をさせる気は無いが、何時何が起こるか分らない。
父王も弟の乱行には頭を悩ませている。そのような所行がなされれば、流石に今度は庇いだては難しいだろう。
絶対にリアをあいつには触れさせない!!
その事だけは堅く誓った。


出来れば今度こそアーリアの身を清いまま花嫁にしてあげたいと思っていたセイラルだったが状況はそれを許さないかもしれない。

「どうされるのですか? 今日この場で正式に発表すればアーリア様があの時の娘である事をサニエル様に知らせる事になります」

「それは致し方ない」

「しかし、このままではアーリア様の身を更に危険に曝す事になります。ここはきちんとお話しした方が良いのでは!?」

「いや。それはまだ出来ない。今の状況では更に彼女を怖がらせてしまう」

自分は王子として毒殺されようとしていて、この関係によってそれは貴女にも降りかかるかもしれないと言う事と、更には鬼畜な弟に襲われるかもしれないとの懸念までも話さなければならないかと思うとゾッとした。
このような二つの事情をアーリアが瞬時に理解し、受け入れられるとは到底思えなかった。

「では、どのように?」

「アーリアには悪いが、今夜、私が彼女の初めてを奪う。正式に婚約した上だ。実質上は何の問題も無いだろう」

アーリアの一つの身の安全は、アーリアが純潔を失うことで解決される筈だ。
鬼畜な話だが、弟の一番の狙いはソレなのだから。

その選択はセイラルの下したギリギリの苦渋の決断だった。

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NoTitle 

うわ~~~~//////
いいね(^m^)
早く続きが読みたいです~v-238
どうなるのかな~
どきどきです~♪
奪っちゃえ~~~!^^b

はのん様 

テハッ/////^^;
何か書いててたら・・・・・勝手にラルが暴走しました!!(笑)
と、言ってもまだこれからお披露目の舞踏会もあるし、弟にもバレルと予定道理に行くでしょうか・・・・^^;
後日、鬼畜な義弟に感謝!? それとも恨む!?(爆)
お楽しみに♪

いつも有り難うございます^^
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