記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《13.自 責》

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舞踏会の終了時刻はとっくに過ぎていたが、パーティはまだ終わらない。
ここぞとばかりに話しの輪が広がり、酒も入っている事からかなり盛り上がっている連中も居る。
自分がこの場を外す事は、非常識である事も承知だ。だがアーリアはどうしてもこれ以上この場に留まる事が精神的に無理だった。
このような常に緊張を強いられる状況に囲まれ、苦痛ともいえる内容を見知らぬ者から探られ続けては流石に限界だ。
嘘に嘘を重ね、誰一人として自分の本当の気持ちを話せる者も無く、理解してくれる者もいない。
全てを己で抱え込むしかない状況に、このままでは自分に未来は無いと感じた。
嘘で塗り固められた作られた未来しか・・・・。
この様な事を考えるべきでは無いと、考えてはいけないと頭では分かっているのに、無意識に考えてしまう自分にほとほと嫌気がさして来る。
このまま一人で居ると更に自分を追いつめてしまいそうで、衝動的にこの場から逃げ出したい気持ちに駆られた。
例え一時的でもこの場を離れ気分を変えられれば、少しは気持ちの整理が出来るかもしれない。
この自暴的な考えを何とかその場しのぎでも回避したくて漠然とそのような事を考え始めていた。
とにかくこのままでは本当に不味いのだ。
何か言われた一言で、咄嗟に泣き崩れてしまうかもしれない不安定さが今の自分の中に存在している事に気付いてしまったから。
これ以上精神の均衡が崩れれば、おそらく後でどの様に取り繕われようとも、もぅ平素でいられる自信は無い。
一度崩れ、溢れ出した感情は恐らく静止がきかない。
今はこれが最善の策なのだと信じ、申し訳ないと思いながらも意を決して気分が優れないから少しだけでも良いので休ませて貰えないだろうかと王子に尋ねてみれば、その答えは意外にも呆気ないものだった。

「ああ、良いですよ。皆もぅ勝手に盛り上がっているだけですから、今日はもぅ休まれて下さい。私も折を見て切り上げて部屋に戻りますから」

(「・・・・あれだけ思い悩んだのは一体何だったのか?」)

「有難うございます。・・・・それではお言葉に甘えてお先に下がらせて頂きます」

王子があっさりと言ってくれた一言で、アーリアは緊張に強いられていた自身の肩の力が一気に抜けて行くのを感じた。


少し表情が柔らかくなったアーリアに、王子に扮するマジミールは安堵した。
自身ですら容易に処理できない大きな出来事に、今現在翻弄されていた。
何も無くても極度の緊張を強いられるこの様な場では、現状に即座に対応できる人間は少ないだろう。本来それを容易に熟せるのは王族位なのだ。
その様な場に、突然放り込まれる事になったアーリア嬢の事を、昨夜から王子はとても心配していたのだ。
自分が傍で助けてやれない分、お前が十分気配りして補佐してやってくれと言われていたのだが、これだけ多くの取り巻きに囲まれては、とても上手く対処が出来なかったのが事実だった。

「身体が辛い時は何も無理する事はないのですよ。最初から気負っていては先が続きませんから」

王子ならばどのような言葉を掛けるか考え、言葉を選んでそう告げた。

にっこり微笑み掛けられた優しい言葉に、アーリアはちょっぴり胸が痛んだ。

程なく呼びに行かせた者がアーリアの侍女を連れて戻って来た。

「アーリア様、大丈夫ですか?」

気分が優れないと呼びに行った者から聞いたのだろう。
姿を見るなり心配そうに侍女が駆け寄って来た。

「大丈夫だから。慣れない緊張で、少し疲れただけだから」

「そうですか?」

侍女はその言葉に安堵した様だった。
最後に王子にもう一度挨拶をすると、アーリアと侍女は共に会場を後にした。

不埒な輩が見つめていた鋭い視線に気付きもせずに・・・・。

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~ Comment ~

NoTitle 

いや、20:40ってのは、「この印籠が目に入らぬか~!」というセリフが飛び出したり、「余の顔を見忘れたか!」とか「この桜吹雪が全部お見通しでえっ!」というセリフが飛び出すところであります。

わかりにくくてスマソ(^^;)

ポール・ブリッツ様 

返コメ遅くなってすみません。
そうだったんですね^^
そこまで大詰めはまだまだ先ですね。3章の後半なので、どれくらいになるでしょうか?
今日UPで本編ラストなのですが、パウリン程は無いですが全157話なので100話以上先です^^;
先は長いですが、お楽しみにして頂ければ幸いです。
いつも、有り難うございます。
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