記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《14.略 奪》

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大広間を出た途端アーリアは力が抜け、大きな溜息をつくと胸を撫ぜ下ろした。
そんなアーリアの姿を、侍女は余程緊張をしていたのだと思い労いの言葉をかけた。
侍女の話では用意された部屋は、王子が通常成人して与えられる部屋と続間になっている一室だと言う。

「調度品は全てとても豪華なもので、重厚な上、とても落ち着いたデザインできっとアーリア様もお気に召されると思いますわ」

「そう、それは楽しみだわね」

目を輝かせて夢見心地な様子のターニアの話の腰を折るのも申し訳が無くて、ついそう言ってしまったが、本当は憂鬱で仕方なかった。
まだ見ぬ王太子妃の部屋となる一室をこの状況で使わせて頂くのはとても気が引けたが、ターニアがこれ程喜んでくれるならばそれでも良いかと思い始めた。
ターニアは舞踏会にも出席せずにアーリアの荷を解き、色々と荷物の整理をしてくれていた。
部屋へ戻る途中、侍女はとても素敵なんですよと楽しそうに話をしてくれたが、話を聞けば聞く程アーリアは気分が滅入って来るのを感じずにはいられなかった。

と、そこへ更に追い討ちを掛けるように先程難癖をつけて来たマーシャル侯爵令嬢が突然姿を現した。

「あら、もうお下がりですの? 王子様を一人残して早々と引き上げになるとは良い御身分です事」

最初から既に嫌味な態度だった。

「お優しいセイラル殿下のお心遣いです」

「私ならば何と言われましてもお傍に居て差し上げますわ。分をわきまえない婚約者だなんて何て可哀想な王子様」

よよよっと泣き崩れる振りをしたかと思うと、大げさにハンカチを取り出して出てもいない涙を拭くかのごとく目元に宛がっている。
その態度に頭を抱えたくなり、深いため息をついた。

「王子様を蔑になさるなんてあんまりですわ!!」

今度は大声を張り上げて、アーリアがまるで何か悪い事でもしているような公言振りに自尊心を傷つけられ頭に血が上って来るのを感じた。
王子の許しを得て下ると言う正式な手順を取っているにも関わらず、理不尽極まりない悪者のような言われ様に既に我慢は限界だった。

「私は貴女ではありませんから! それに私は好奇の目で曝される事を嬉々としません。その点においては貴方のような方が相応しいのかもしれませんわね!」

先程から何なのだろう、この女は!
何かにつけて自分に絡んで来て、嫌味のつもりでそう告げたのだったが、それが間違いだったのだと気付いたのは吐き捨てるように言葉を投げつけた後だった。
侯爵令嬢がニヤリと笑ったのだ。

「聞きまして!? どうやらアーリア嬢とセイラル王子の仲は大したものでは無いようですわ。私の方が相応しいと認めて下さいましたわ」

誰もそのような事等一言も口にしてはいないのに、呆気に取られた。
・・・・どうやらこの令嬢は物事を自分の都合の良い様に置き換える典型的な自己中心的な令嬢の部類だと気が付き、これ以上は関わるだけ無駄だと悟った。
無視をする事を決め、それでも礼儀を弁えて一応一礼し、侍女と共に横を通り過ぎようとした時だった。
今度は思わぬ所から思いもよらぬ人影が現れた。

「・・・・サニエル・・・・王子・・・・」

まさかの出来事に、アーリアはその場で固まった。

「へぇ、では、貴女は私が貰ってあげるよ。私はあの堅物王子より経験豊かだから君を始めから十分楽しませてあげられると思うよ」

舌を出し、ペロリと舐めて物欲しそうな目つきでこちらを見据えた。
背中にツーッと冷たい汗が流れ落ちた。

「お、おおおおお嬢様に指一本触れて見なさい! 容赦しませんから!」

牽制をかけて見せる侍女だったが、見せかけだと言う事が直ぐにバレる。
こんな事になると分かっていたならあの後直ぐにでも護身術の一つ位習っておくべきだったと思ったが後の祭りだった。

自分はどれだけ身を捩ってもサニエル王子に手を取られ、ぐいぐいと引っ張られる。

「いやっ!はっ、離して!!」

「お嬢様を離しなさい!!」

必死に食い下がろうとする侍女を第二王子は足蹴にし、飛ばされた侍女は床の上に転がるとイタッっと声を上げ蹲った。

「ターニア!!」

咄嗟に侍女の名を叫んだ。

「ふん!良い気味」

鼻先で笑うとマーシャル侯爵令嬢は素知らぬ顔で背を向けて大広間へと消えて行った。

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~ Comment ~

NoTitle 

キャー!あっという間に急展開~~~(><)
王子(従者? 笑)何してるの~

でもこの子けっこう言うのね(^m^)
そういう子も好き~^^
ぼけぼけちゃんも可愛いけどね~
こういう子の方が話は進みやすいんだよね(笑)
ちゃんと自分で気付くから~
天然子ちゃんだと分からせるまで大変だもんね^^;

はのん様 

はい。最初の急展開がやってきました。
鬼畜王子の性格上、少し甘く見てた?(苦笑)
勿論直ぐに気付いて助けに行きますよ♪
どの場面で助けられるかが問題ですが^^;

はい。アーリアは結構きっちりした性格なので、抑える所は抑えつつも自分が見て非常識だと思える事にはある程度口を挟んでしまうタイプです。
ですが気を許してしまうと流されたり抜けたりしてしまうタイプです。
なので少し天然かかってるかも^^;
分からせるのに時間がかからない分、前作よりは展開がかなり早いです♪

いつも有り難うございます。

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