記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《23.退 王》

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振り向き、皆がその者に目を向けると、更なる言葉を男は発した。

「お前はそのようにしてあれからもサニエルを庇護して来たのか? ナント情けない! 私は申した筈だな。これ以上サニエルが堕落すれば介入すると!!」

「父上!」

「退王様!!」

「前王様・・・・」

そこには3年前に病気療養の為に隠居した、前王マゼロードがいた。

(「来て下さった!!」)

今日の祝事に際し王妃は義父である前王に知らせを送っていた。
前王からは舞踏会には遠慮させて貰うが、体調が良ければ祝いに参ろうとのお返事を頂いていた。
だが姿を見せなかった為、今日はもう来ないのかと思っていたのだが、何処で聞いたのか? まさかこの場に姿を見せて貰えるとは夢々思っていなかったのだ。

「コヤツの所行は今までにも目に余るものがあった。だのにお前は正すのではなく庇護に走った。あれ程言っておいたのにも関わらずだ。サニエルを次の王にと押す者も幾人か居るようだが、この現状では利己的な私欲に溺れる者以外、サニエルに付く者は居ないだろう。まして良識ある第一王子を前にすれば、正道を歩む者にとってサニエルはクズ同然だ!」

「・・・・それではあまりの言いようです・・・・」

「だが、事実じゃ」

側妃は前王を睨み返す。
だが前王は子供でもあしらう様な目つきで、余裕の微笑みを漏らした。

「側妃、お前の気持ちも分らんでも無い。しかし、この国において王位継承権第一位は正妃腹の王子だ。これは3世紀に及ぶガブリエラント王家のしきたりだ。加えてこの知性と行動力。王になるべく資質は我より備えた逸材だと私は思っておる。何を企もうとお前が如何こう出来るものではない!」

「・・・・・」

側妃ナジリルは退王から目を背けた。

「そこでだ。来月でサニエルも18になる。成人を迎えるに当たり、臣に下らせてはどうか?」

「そっ、それは!!」

その言葉に側妃の焦りは隠せない。

「何ら問題は無いであろう。本来は婚姻を期にと言う者も多いが、前例が無い訳では無い。文武両道、英知に優れた第一王子は花嫁となる娘を見つけて王家も安泰じゃ。第二王子の肩書などもはや必要ないであろう。それよりもこれから先は私の下で修業し、公家を開くべく本腰を入れて勉学に励ませた方がこやつの為では無いのか? まぁ、これもセイラルの許しあらばの話だが。セイラルとこの娘御がどうしてもサニエルを許せぬと言うのであれば私とてこの者を庇護出来ぬがな」

目を向けられた王子姿のマジミールはセイラルに目配せし意思を汲み取ると、アーリアに声を掛けた。

「如何なさりたいですか? この件に関しては貴女に決断する権利があると思います。私はそれに従います」

「・・・・今後、公式の場以外の席で二度と私の前に姿を見せないで下さい。それで私は結構です。ですが、次あらば私はこの方を許しません。臣下に下る事も認めません。訴訟を起こし正当な裁きを要求します!」

「異存はないな」

「し、しかし・・・・」

「ないな!」

鋭い眼光で見つめられ、側妃はその場で一歩後退した。
息子のしでかした行いに、全ての歯車が狂い始めた。
側妃はそっと王の方に目を向けた。
王は前王の意を汲みとると小さく頷いた。

「・・・・で、殿下!?」

「ナジリルよ。退王様の言う通りだ。擁護するだけではいけなかったのだ。今のサニエルは誰が見ても目に余る行動が多く見受けられる。今回の所行は正しくそれだ。これが表沙汰になればサニエルは臣に下る事すら許されなくなるだろう。そうなれば今後娘らの良縁も望めなくなるぞ。お前はそれでも良いのか?」

「そっ、それは・・・・」

「それを今回に限り、その胸に収めてくれると言うのだ。私は有難い仰せに従おうと思う。お前は如何だ?」

「・・・・陛下の御采配に委ねます」

苦言を呈され側妃はそう告げた。

側妃の如何にも口惜しそうなその表情に、セイラルはこれだけでは済ませないと言う強い意志が宿っている事を感じ取った。

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