記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《26.診 察》

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部屋まで送り届けて貰うとそこには侍医が待機していた。
助手の女性に細かな状況を聞かれ、恥ずかしかったが起こった内容を包み隠さず全て話した。
勿論誰から受けた傷であるかは告げてはいない。

「お辛かったですわね。でも、もぅ大丈夫ですから。先生に傷の診察をして頂きましょうね」

そう言ってくれ、少し侍医と話した後具合を診て貰った。
大した怪我では無いと思っていたが、腹部の内出血が思ったよりも深刻に受け取られた。
胸部外傷と言う病名まで付けられ、当初痛みも酷く呼吸も難しい状況で一時的に意識を失ったと言う経過から事から、現在痛みも温和されているようだが一歩間違っていれば大事になっていたかもしれないと脅された。
幸い現在は痛みも温和されている事から、おそらくは大きな問題は無いであろうとの言葉を頂いたが、くれぐれも無理はしないようにと念を押された。
ターニアは侍医から告げられたその他の注意点などもしっかりと書き止めている。
 
腹部の内出血痕は自分で目するのも悍ましい。その周囲も腫れ上がっている。
手首の縛られた痕による血の滲んだ傷と唇の横の怪我はきちんと消毒してくれ、胸部の治療の為の当て布に薬を塗られ包帯を巻かれようとした所で、湯に浸かっても良いかと尋ねたら怪訝な表情をされた。
あのような事があり、このままの状況で居る事が耐えられないのだろうと示唆してくれた助手にターニアも加わり侍医と相談の結果事情を留意してくれ、湯には浸からず軽く流すだけならばと了承してくれた。
頃合いを見て再び治療に来てくれると言う。
至れり尽くせりでとても有難かった。
今は傷口を見る事も辛いが、現実は受け止めなくてはならない。
起きてしまった事を無かった事には出来ないが、少しでも早く傷を癒して全てを忘れ去りたい気持ちでいっぱいだった。

部屋の外で待機していたセイラル王子と従者は侍医に呼ばれ、診断結果が告げられた。
大きな問題はおそらく無いだろうと告げられ安堵しているようだった。 

「侍女殿も暫く無理は出来ないようですし、お世話の出来る信用のおける者をこちらに寄こしましょう」

従者がそう言ってくれたがアーリアはその申し出を断った。

「申し訳ございませんが、今はとてもこの城の者を誰一人信用できません。自分たちで何とかしますから、暫くそっとしておいてくださいませんか」

「・・・・そうですよね。信頼、出来ませんよね・・・・」

すると従者は少し寂しげな表情を覗かせた。

「あっ、あの、ですが、貴方様は信頼しております。以前にも助けて頂きましたし、今回も窮地を救って頂き、とても感謝しております!」

「そうですか?」

表情がパッと明るくなり、微笑を浮かべたその眼差しに胸がドキンと高鳴るのを感じた。

「は、はい・・・・」

あのような事があった後だと言うのに心は正直だ。
どうしよう。動悸が止まらない・・・・。
アーリアの胸の鼓動は忙しく打ち震えていた。

「それは光栄でございます。では、私はこれから王子と所用がございますので、後程また様子を伺いに参ります」

「あっ、はい。お待ちしております」

閉じられた扉の内で、アーリアはホッと胸を撫ぜ下ろした。

とにかくこの部屋は安全だ。
部屋の直ぐ前には警備の者が2名付いており、今は万全の体制が備えられている。
それに加え、二つ隣りの部屋には普段から常設している王太子私室専属の警備の者。

王子の部屋と繋ぎになっている一室の為、横並びの5部屋を守るのに4名の警備とは少しやり過ぎのようにも思えるのだが。

「これで貴女の安心がかえるのであれば安いものです」

王子にそう告げられ、了承してしまった。
確か安心は出来るが・・・・。

流石にここまでして頂くのは心苦しいので、暫くは様子を見るにしても、早々に撤退して頂こうと今は思っている。

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