記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに《27.私 室》

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従者を見送り部屋に戻るとアーリアは西隣に用意された私室に身を置いていた。
部屋を見渡せば重厚な作りの調度品に、確かにターニアの言う通り目を奪われた。
だが、フッと気が付く。隅々まで壁なども押してみて調べてみたが何処にもベッドが見当たらなかったのだ。
寝室は先程の部屋を挟んで対隣となる東側の扉の奥になるのだろうか?
チェストの上に用意してあると言う入浴時の着替えを一式持って隣の部屋に居る侍女へ声を掛ける。

「では、少し入って来るわね。何かあったら大声で呼ぶのよ。ここの扉は開けておくから」

湯殿はアーリアの私室の奥にある。

「申し訳ございません。お嬢様」

「良いわよ」

「いえ、しかし・・・・これではあべこべではありませんか・・・・」

足を負傷した侍女はアーリアの命令でソファーに横たえられ、寛がされている。
侍女と言う立場上、かなり居心地悪い状況だ。

「きちんと湯も用意してくれているではないの。身体位自分でも洗えるから気にしないで」

「・・・・でも、この様な大切な日に、お世話も出来ないだなんて・・・・。私、この日をとても楽しみにしておりましたのに・・・・」

「そのように大げさな・・・・」

「大げさではございません! 正式にご婚約されて、初めて主寝室で夜を迎えると言うのに、このような有様ではお世話も出来ません。それを思うと自分が情けなくて、情けなくて・・・・」

侍女は瞳に涙を浮かべて本当に悔しそうだった。
だが、それよりもアーリアの胸に突き刺さった言葉があった。

「・・・・主寝室で、迎える!?」

「あっ、はい。こちらを挟みましてアーリア様の私室の対側が主寝室になっているのですわ。その隣には王子様の私室と寝室が続間になっているのです。つまりお嬢様の寝室はあちらのみ。今日にでも御渡りがあるやもしれませんのに、このような大切な日に私は何と言う失態を・・・・。お嬢様を綺麗に洗いあげて身づくろいしてお見せして差し上げたかったのに・・・・」

何も考えられなくなり、呆然と立ち竦んだ。
だが、その時ある言葉が思い出された。

『お父上のお許しも頂きましたし何があっても許される身ですから、その御覚悟はしておいて下さいね』

あの言葉を要約すると、今日王子は私室の寝室では無く、あの主寝室を訪れる気があると言う事だ。

(「ど、どうしよう・・・・」)

アーリアの顔は真っ青だ。

「アーリア様、御気分でも?」

「いっ、いえ。気にしないで」

「ですが、本当に具合が悪いのでしたら、しっかり侍医に見て頂かなくては。直ぐにお呼びして!」

「ち、違うのよ。ただ‥‥」

「ただ?」

「心の準備が・・・・」

ああ!と、ターニアは手をポンと叩くと満面の笑顔でこう告げた。

「お嬢様ったら、何を心配なさっているのかと思えばその様な・・・・。大丈夫です。正式にご婚約をされた身です。何があろうと咎める者は居ませんから何のご心配もいりませんよ」

アーリアの心配事とはかなりかけ離れた答えだったが、とてもそのような事は今更口には出来ない。

「そ、そうね」

とは、言ってみたものの・・・・。

実際は先程の恐怖も冷めない内に・・・・いや、それより何より心に秘めた方の居る状況で、他の殿方と枕を並べるかもしれない現実に眩暈がしそうだった。
アーリアはよろける様に壁伝いに手で身体を時折支えながら、とにかく気持ちを落ちつけようと湯殿へと足を踏み入れた。

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~ Comment ~

NoTitle 

とりあえず一安心ですね~^^
でもでもさて…どうするのかな?(^m^)
まぁ本日は怪我もしてるしナイかな~
とはいっても早々にどうにかせんとイカンですね~
おバカ弟王子がね~(><)
ハラハラはまだ続きそうですね…^^;

はのん様 

返信遅くなりました。夕方帰宅しました。

とりあえず外的状況としては一安心ですね^^
そうですね^^本日は怪我もしているしね~♪
そうそう、でも早々に手を打たないといけないのよね~♪
さあ馬鹿弟王子の謹慎中にセイラルは何とかできるのか!?
段々目が離せない展開になって行くかも♪
内的にはドキドキ、その後は外的にハラハラでしょうか?

いつも有り難うございます^^
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